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今屋敷蜜の探究  作者: ブーランジェ
毒の色彩
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ロンドンへ

私はここで、彼女についてわかっていることを整理してみた。

・十七歳

・容姿端麗

・一人で暮らしている

・家庭環境に問題なし

・親が資産家

・特許と著書による収入がある(?)

・観察と洞察が鋭い

・豪胆で行動力がある

・ロンドン警視庁とコネクションがある(?)

・ロンドンで発生した焼死事件を調査している


逆に気になる点も書き出した。

・高校には通っているのか?

・なぜ事件を調査するのか?


飛行機でロンドンへ移動中の約半日間、彼女は主にネットで調べものをしていたが、調べ終わると、イヤホンをして音楽を聴いたり、睡眠を取ったり、本を読んだりゲームをして時間を潰していた。


一緒に過ごして彼女について新しくわかったことは、音楽はクラシックを聞くということ、高校にはちゃんと通っていて(たまにさぼるが)、今は春休みということ、休日に趣味で犯罪捜査をしているということだ。


「どうして犯罪捜査なのか?」と尋ねたら、「こんなに刺激的で興味をそそるものは他にない」と答えた。


私はというと、彼女を観察する以外には、離婚調停の準備を進めていた。


私個人の話で恐縮だが、誤解無きようにここで言っておきたいのだが、離婚の非が私にあるわけではない。


愛し合って、生涯を誓い合い、結ばれたはずの二人が、公の法廷で互いの不実をなじり合う姿ほど悲しいものがあるだろうか?そのような醜態しゅうたいをさらすくらいなら、いっそのこと調停で相手の要求を丸ごとのんでしまった方がまだましかもしれない。


機内ではこのようにして過ごしていたが、時間はたっぷりあったので、さして興味があったわけでもないが、これから調査しようとしている事件について彼女の考えを聞いてみた。


「情報が揃っていない段階で推理しようとすると、先入観を生んでかえって捜査の妨げになる」と彼女は答えた。


「ただ、事故ではないのは確かだね」


あとになってわかったことなのだが、彼女は既にこの時点で、これから私が関わることになる事件について、おおよその見通しが出来ていたのである。


そして、その気になるまでは決してそれを語らないのが今屋敷蜜という人間なのだった。


「それと明日にはインドへ飛ぶことになるだろうから」と彼女は言った。ヒンディー語の通訳を頼まれていたので用意はしていたが、せわしない話である。


「インドでも気になる事件があるのかい?」


「一週間ほど前に、ゴアの金持ちの男の家に毒物が入った封筒が送られたという情報を偶然目にしてね」


それを聞いて私は、趣味とはいえ相当熱が入ってるなと感心した。


ヒースロー空港に到着したのは、現地時間で午後一時三十五分。十二時間五十分のフライトだった。

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