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今屋敷蜜の探究  作者: ブーランジェ
毒の色彩
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家庭訪問

翌日、指定された住所へ行くと、そこには石塀に囲まれた広い敷地があって、『今屋敷』と彫られた一枚板の木彫りの表札が立てかけられていた。その横に黒い金属性の門扉があり、反対側にカメラ付きのインターホンが設置されていた。


「お待ちしておりました、どうぞお入りください」と穏やかな口ぶりの女性が応答して、門扉が自動で開いた。


今屋敷蜜の両親は、幸福な、同じ空間にいる者を安心させる不思議な魅力を持つ人達だった。初対面の私を歓迎してくれて、夫婦間のとりとめのない会話を聞かされたが、家庭内に問題を抱えているとはとても思えなかった。


「蜜さんは今日はいないんですか?」と尋ねたところ、「あの子はめったに帰って来ないの」と母親が答えた。


心配ではないのかと聞くと、今屋敷蜜は必要なことは全て自分でできるし、助けが必要な時は頼ってくるとのことだった。ただ、自分で稼ぐようになってから頼られたことはないそうだ。


私は本題に入って、昨日彼女から依頼された内容を話した。話を聞き終えると、二人は迷うことなく、娘をよろしくお願いしますと私の手を握った。


両親からは、今屋敷蜜が中学生の時に解決した事件のことを聞かされた。


同じ学校に通う一年生の女子生徒が行方不明になって、警察が捜索をしても見つからなかったのを、都内のマンションで監禁されている現場を今屋敷蜜が発見した。犯人は大学生の男で、長年計画した上での誘拐だった。


私はあとでその事件のことを調べて、当時ニュースになっていたことを思い出した。しかし、当然かも知れないが、今屋敷蜜の名前はどこにも出ていなかった。


「中学校で退屈をもてあましていたあの子には、その事件が刺激になったのね。監禁現場で犯人の大学生に襲われて、運よく同じマンションの住人が騒ぎを聞きつけて助かったのに、あの子は懲りるどころか、犯罪捜査に夢中になったわ」


私はこの面談の結果、今屋敷蜜は周囲が止めたとしても一人で危険なことに首を突っ込む人物だと判断した。両親は彼女を信頼しているが、同時に、好奇心が彼女に危険をもたらすことを危惧きぐしているように受け取れた。


私は考えた末、娘さんのことは責任を持ってお預かりします、と伝えて今屋敷邸をあとにした。


こうして親権者の同意を得て、私と今屋敷蜜は委任契約を締結した。契約を交わしたのはようやく寒さがやわらいだ三月中旬、機内でのことだった。

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