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『幻惑に囚われて』 その4

お待たせしました。これにて第四章終了です!

「ちゃお~☆ スクナっち、遊びに来ちゃったよ」


「おや、誰かと思えば陰陽師の小娘でありんすか。わっちのおゆかり様になる気になったでありんす?」


「そういうわけじゃないんだけれどね~。あ、お土産持ってきたよ!」


 リョウメンスクナの住まう寺へとやって来たアベは、ポケットに入れていた手を出し、親指と人差し指を交差させる。すると、何もない空間から一升瓶が突然出てきた。


「ポケットから、キュンです☆ ⋯⋯どよ、この新作の陰陽術。やばやばじゃない?」


「ほう、空間を操る術とは、なかなか高度な術でありんすなぁ。わっちにも今度教えてくんなまし」


 アベから渡された一升瓶を受け取り、上機嫌なスクナと、元々テンションの高いアベは、上機嫌に互いの術について語り合う。するとそこに、後ろ歩きでやって来たスク水姿の居候妖怪⋯⋯サトリが、妙な言葉を告げた。


「ぬぬぬーんと悟りタイムだガールズ共。奇跡が降る雪の里に、死神が鎌を持ってやって来るぞ。その時迷宮の主は目覚め、幸運の寵児は母乳を出す。メイジ美味しい牛乳⋯⋯サトリは風呂上がりの一杯の牛乳を貰おう。こんなのいくら貰っても嬉しいからな」


 サトリが妙なことを言うのは割といつものことなので、気にせずに話し続けるアベとスクナ。しかし、この時ばかりはサトリは割と真面目に、自分が視た未来を告げていたのであった。



〇〇〇〇〇



 ラブが祈り始めてから、どれくらいの時間が経っただろう。未だ、ラブの言う『奇跡』は訪れる気配がない。


 それでも、ラブは祈ることを止めない。先程から一言も発さず、両手を組みじっとしている。そんなラブにボクが出来ることと言えば、傍に居てその身体を温めてあげることくらいだ。


 ぎゅっとラブの細身な身体を抱きしめる。お互い服を着ていないせいで、肌と肌が直に触れあう感覚がなんともこそばゆい。しかし、雪山などで身体を温めるために最もよい方法は裸で抱き合うことだと聞いたことがあるし、恥ずかしくてもこうすることが命を繋ぐことになる⋯⋯そう信じたい。


 そうして、身体を寄せ合ってからまたしばらく時間が経った。そろそろ手足の感覚が覚束なくなってきた頃、どこからかボク達のかまくらへ近づいてくる音が聞こえてきた。一瞬、寒さのあまりついに幻聴が聞こえたかとも思ったが、雪を踏みしめるギュムギュムという音は確実に聞こえてくる。


 ラブの祈りが通じ、奇跡が起きたことで助けが来たのか。凍える身体に希望の光が熱を取り戻す。しかし、少し気になることがあるとすれば、その音が尋常ではない速度で近づいてくることだ。一体、誰がやって来たというのだろうか。


 ⋯⋯ふと、足音が止んだ。そして同時に、かまくらの外に何者かの気配を感じる。その何者かに助けを求めようと口を開きかけた瞬間、ボコッと音を立ててかまくらの壁が突き破られた。


 壁を突き破ったソレは、見覚えのある黒々とした拳銃だ。そして、その穴にがぽっと顔を嵌めてこちらを見つめるザキは⋯⋯明らかにぶち切れていた。


「⋯⋯は? 何ユウと裸で抱き合っているんですか? 死んでください」


「ちょ、ちょっと待ってザキ。それは誤解⋯⋯」


 問答無用とばかりに引き金を引くザキ。しかし、その銃弾がラブに撃ち込まれることはなかった。


『いや~、皆待たせたのだ。まさか、お昼寝している間にアジトがこんなことになっているとはビックリしたのだ。あ、ザキの銃弾はダンジョンマスター権限で安全な場所に転移させたから、ユウは安心して欲しいのだ~』


 脳内に響くのは、緊急事態が起こったばかりとは思えぬ、寝起きのふにゃふにゃとした声。しかし、その声の主であるラビは、見事にその力を発揮してくれたようで、アジトの景色は元の岩肌に戻りつつあった。


「ふぅ、どうやら、何とか祈りが通じたようだね。良かった良かった」


「えっと⋯⋯これってつまり、奇跡の力でラビを起こしたってことですか?」


「まあ、たぶんそういうことだね。あたしも奇跡がどんな方法で起こるかは分からないんだ。でも、この力はいざという時には役に立つ。⋯⋯ところで、ザキはいつからここにいるんだい?」


 ラビは祈りを捧げている間ずっと目を閉じていたためか、ザキが来たことにやっと気付いたようだ。さっき完全に脳天に銃弾を撃ち込まれそうになっていたことは⋯⋯黙っていた方がいいだろう。


 未だ荒ぶるザキを抱きしめて何とか落ち着かせたところで、服を着て3人で移動することにする。


『とりあえず皆の無事は確認出来たのだぁ~。ただ、ボスの姿が見えないから、今から吾輩が案内する場所に向かって欲しいのだ』


 脳内にラビの声が聞こえると同時に、壁にボスがいる場所を示す地図が表示される。ラビの能力はアジト内なら割となんでもありだ。


「あれ、ドクさんにエミじゃないですか。無事で良かったです」


「ドクちゃんがこれくらいでくたばるはずないでしょ? それより、あんた達もボスのところに?」


「はい。ラビから通信があって⋯⋯ボス、大丈夫でしょうか?」


「大丈夫でしょ。あの人、運だけはいいし」


 途中でドク達とも合流し、一緒にボスの居ると言われた場所に向かうことにする。そして、その場所へと到着すると、そこには地面にあぐらをかいて座るトムさんが居た。


「トムさん! ラビからボスがここにいるって聞いたんですけれど⋯⋯どこに居るか知っていますか?」


「あー、うん。無事で良かったよ皆。それで、ボスだったよな。えー、ちょっと言いにくいんだが⋯⋯あの変な箱の中だ」


 トムさんが指し示す方向を見ると、そこには人1人が入れるくらいの黒く大きな箱のようなものがあった。


「あの箱の中でボスは何をしているんですか?」


「えっと、それは⋯⋯」


 何故か、言いにくそうに顔を背けるトムさん。まさか、何か危険な目にあっているとでもいうのだろうか。もしそうだとしたら、早く助けなければいけない。


 そう思って箱に再び視線を向けたその時、パカッと音を立てて箱の中からボスが出てきた。


「良かった。無事だったんですね、ボス⋯⋯」


 咄嗟に声をかけたが、続く言葉はすぐには出てこなかった。たぶん、周りの皆も絶句していたと思う。


 箱の中から出てきたボスは、片方の乳房をアケディアに差し出し、目から涙を流していた。


「皆⋯⋯私、やったぞ。奇跡が起きたんだ。母乳が出たぞぉぉぉ!!!」


 ⋯⋯ボクは、この瞬間、組織に入ったことを初めて後悔したのであった。



〇〇〇〇〇



「く、くしし! 反応あり。やったぞ。あ、あいつ魔力だけは多いからなぁ。同じ波長の魔力をぶつけて、位置を特定するのは容易いことだ」

 

 舌をチロチロ出し入れしながらそう呟くのは、『嫉妬魔将』インウィディア。その後ろでは、手持ちぶさたな様子の『色欲魔将』ルクスリアが机に肩肘を付いていた。


「楽しそうなところ悪いんだけれど、場所を特定したんなら早く行きましょうよ。私、もう待ちくたびれちゃったわぁん」


 そしてさらに、その横には無言で立つ『暴食魔将』グラルートがいる。グラルートはここには居ない誰かを思い、天をじっと見つめていた。


「く、くしし! 分かっているさ。位置は特定した。明日にでも⋯⋯奴らのアジトに突入するぞ」


第5章1話はなるべく早く投稿します

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