『防人、そしてアマビエ』 その2
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「はぁ!? あんたら今何言ったか分かってんの? もっかい同じこと言ってみなさいよ!」
「何回でも言ってやるばい! 俺らはあんたらと仲良しこよしするつもりなどなか! 俺たちの土地は俺たちで守る。外様がギャーギャーと口出しすんな、しゃーしぃったい!」
私の目の前でドクと言い争っているのは、九州を守る戦士たち、『防人』の代表である『ハカタ』だ。防人には他にも『サツマ』や『アソ』などそれぞれの出身地から取ったと思われる呼び名を持つ者達により構成されており、そのほとんどが体格も良く顔が濃い。まさに、ザ・九州男児と言った面子だった。
そんな彼らの中に居ると、こちらが外様と罵られてしまうのも仕方が無いことなのかと思ってしまう。そして、そんな彼ら相手にも臆することなく喧嘩腰でぶつかることの出来るドクは凄い。
「今はそれで良いかもしれないけれど、あんたらが居なくなったら誰がこの土地を守れるのよ! それに、土地を守るために自分たちが犠牲になっていいなんて精神、馬鹿げてるわ。命を軽々しく投げ捨ててるんじゃないわよ!!」
「お前ら女子に俺たちの覚悟が分かってたまるか! 知恵も命も捨ててぶつかることこそ、俺たちの生き様ったい。あんまりしつこいようだとしばくぞ、こら!!」
「やれるもんならやってみなさいよ。それに、あんた達のそれは覚悟とは呼ばないわ。別の手段も選べるのにその選択肢を投げ捨てて無意味な犠牲を増やすのはね、ただの馬鹿よ。⋯⋯あと、さっきから方言挟んでくるの止めてくれない? 意味分からないんだけれど!!」
ドクもハカタも、お互い一歩も譲らない。私的にはドクの意見に賛成だけれど、防人の人達は見るからに頑固そうだし、なかなか自分たちの意見を曲げようとはしないだろう。
そして、私が気になるのはこの二人が言い争っている中、奥の方でぐったりとしている人が何人も居ることだった。単なる疲労からぐったりしているのならばそこまで気にならないが、常人よりも耳が良い私は彼らの心音が弱っていることを感知していた。
「あの⋯⋯すいません。あそこに居る人達は、もしかして何かの病気にかかっているのですか?」
「あぁん!? 小娘が気安く話しかけるんじゃなか!」
ぴくっと自分の耳が動いたのが分かる。ハカタはドクとまだ言い争いの真っ最中だったため邪魔にならないよう近くに居た他のメンバーに話しかけたのだが、この言いぐさはあんまりじゃないだろうか。少なくとも、小娘というだけで話しかけてはいけない理由はない。
「⋯⋯私はただ、あの方々のことが心配になったから尋ねただけです。不快にさせる要素は何もないと思いますけれど」
「しぇからしか! アイツらは軟弱だから病気にかかったと。気合いがあればそんなもんかからん! 余計な心配せんでええから、お前らははよ本州に帰れ!!」
さらにピクピクッと耳が動く。ああ、ダメだ。こういう相手にいくら理性的に話したところで何も解決しない。
それならば⋯⋯力尽くでこちらの話を聞いて貰うしかないだろう。
「⋯⋯あなた達はどうやら、私のことを女だからと下に見ていますね? そちらがそういう態度ならば、いいでしょう。私と1度戦ってみませんか? それでもし私が勝ったら、そこに居る方々を詳しく診させてください」
「はぁん! 小娘が生意気なことを⋯⋯。ただ、その啖呵はよか!! その条件、飲んでやるばい。ただ、負けたら2度とこの地に足を踏み入れるな。分かったな!?」
「ええ、望むところです。⋯⋯あ、ドクさん。こっちで勝手に決闘の話進めちゃってますけれど、大丈夫ですか?」
「いい加減分かれよこの頑固野郎! お前の股間のイチモツもぎ取って頭にぶっさしてやろうか、あぁん!? ⋯⋯え? あ、ごめんごめん。聞いてなかったわ。それで、え? 決闘? うん、いいんじゃない? ドクちゃんもぉ⋯⋯今、すっごーっくムカついてるし♡」
⋯⋯何だか前半凄くドスのきいた声でかなりヤバいことを言っていた気もするけれど、聞かなかったことにしておこう。あと、音と匂いで薄々気付いていたけれど、この人の性別ってもしかして⋯⋯?
「決闘なら話は早か。場所は俺らがいつも使っとる会場でよかね?」
「ええ、構わないわ。ドクちゃんは本来こういう荒事は避けるんだけれど⋯⋯。今日は全力でいかせて貰うわよ!」
決闘と決まってからの防人たちの動きは早かった。見た目通り血気盛んな人が多いのだろう。会場にはいつの間にか『デジマ』で暮らす他の人間や魔族も集まってきており、観客席からワクワクした様子でこちらを眺める光景は、ますます『ヒューマン・ズー』での苦い記憶を思い起こさせる。
しかし⋯⋯私はもうあの時とは違う。牢獄から解き放たれ、より自由に、力強く跳びはねることが出来るのだ。
「やってやりなさい、エミ。ドクちゃんたちの力、こいつらに見せつけてやりましょう!」
そして、私を鼓舞するのは、あの気持ち悪いオカマエルフではなく、可愛らしい見た目をした頼れる先輩だ。若干口調が荒いのと性別詐称疑惑があるところだけが難点だが、彼女の
声援は私に勇気を与えてくれる。
「はい!『リターナー』所属のエミ、初陣を勝利で飾らせて頂きます!」
「さあこい、嬢ちゃん! 俺もやるからには全力で戦うばい!」
この組織に入っての初陣が人間相手というのは正直不思議な気分だが、負けるわけにはいかない。相手は、私より身体が数倍も大きい男性。しかも、その腕には大きな棍棒も構えている。
普通に戦えば、力負けすることは確実だろう。でも、私は闘技場に居た頃自分より何倍も大きいバケモノ達と何度も戦ってきた。そんなバケモノ達と比べれば、たいしたことはない。
私は、ウォーミングアップのためにぴょんぴょんとその場で軽く跳びはねる。その間も、意識はずっと目の前の相手に向けていた。
集中力を極限まで研ぎ澄まし、相手の心音、そして筋肉の動きまでもがはっきりと聞こえる状態に持っていく。もう、他の人の声は一切聞こえない。完全なるゾーンに入ったその時、試合開始の合図が鳴り響き、私は一気に地面を蹴り上げたのであった。




