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『リョウメンスクナ』 その4

お待たせしました! 思ったより時間が取れず更新が遅れていますが、なるべく早く投稿できるよう頑張りますよ!!

「ご隠居とスクナんも加わったことだし、女子会第二弾、始めちゃおっか☆」


「スクナん⋯⋯それはもしかして、わっちのことでありんすか? いい呼び名でありんすなぁ。是非他の皆もそう呼んでおくんなまし」


「おいおいキャラ被りはよしてくれないか。スク水を着たサトリのことかと勘違いしてしまうじゃないか。ここは間を取ってメトロノームにしよう。テンポは60。刻むぜ心臓のビート。ニガウリぃ~」


 折角自由になったのだから外に出たいというリョウメンスクナの要望を聞き、場所を本堂から移し、再び女子会が開かれることとなった。この面子でビーフシチューを囲む図は端から見たら何とも奇妙なことだろう。


 古代より生きる大妖怪が2人に、陰陽師が一人。そして、サトリとボク。この場に居ると、ボクが1番異端なのではないかという気もしてくるから随分と不思議だ。


「心配するなよへいガール。乾杯するだろシャイガール。サトリのお里でささっとSATが殺戮三昧すしざんまい。サトリは1日2粒までだ。過剰な摂取は身体に毒だぞ気をつけろ」


「もしお主の言葉が真実ならば既に儂らは毒を盛られているというわけじゃな? いい加減無視するのも面倒じゃからしばらく黙っていては貰えぬか?」


「成程。お口チャックがお望みというわけか。しかし本当にいいのか? サトリの損失は世界の損失。つまりは地球温暖化の加速により北極の氷は溶け、途方に暮れるペンギン達がデモ行進。でもでも安心。サトリ保険に入っておけば。今なら無料で加入可能。ドリンクバーもついてくるぞ」


 ビーフシチューの時と同様に、サトリは謎の力でドリンクを皆に提供した。ご隠居には緑茶、アベにはタピオカドリンク、ボクにはオレンジジュース。そしてスクナには、謎の赤い液体が目の前に置かれている。


「スクナさん、その液体ってもしかして⋯⋯」


「ふふふ、人間の生き血でありんす」


 まさかと思い尋ねると、返ってきたのはそのまさかの答えだった。何とも言えない微妙な空気が漂う中、スクナが口元を手で覆ってふふふ⋯⋯と怪しげに微笑んだ。


「⋯⋯なーんて、冗談でありんす。驚きんした?」


「なーんだ、ビックリした~! もー、驚かさないでよ、スクナん~!!」


「いや、こいつ嘘をついては⋯⋯ああ、お口チャックだったな。サトリは黙っておこう」


 黙ったら黙ったで場を混沌とさせるのがサトリらしい。スクナが飲んでいる液体が人間の血である疑惑がかなり確証に近くなってしまった。


 これ以上この話題を続けるのはあまりよろしくないだろう。ボクは場の空気を変えるためにも、ずっと気になっていることをスクナに尋ねることにした。


「そ、そういえば、スクナさんって顔が2つあるって聞いていたんですけれど、普通に顔1つしか見えませんよね? もう1つの顔ってどこにあるんですか?」


「普段は隠してるんでありんす。もしわっちのもうひとつの顔を見たいというなら⋯⋯おゆかり様になってくれたら、いつか見せてあげるでありんす」


「おゆかり様⋯⋯花魁の使う廓詞(くるわことば)でいうところの、『なじみの客』という意味じゃな。スクナよ、お主何故廓詞を使うのじゃ。時代が違うじゃろうに」


「昔わっちへと生贄に捧げられた女子が、花魁だったんでありんす。ただ、その時にはわっちもだいぶ丸くなって、生贄を差し出されても喰らう気などありんせんしたから、その子が寿命で死ぬまでお喋り相手になって貰いんした。それで、わっちもいつの間にかこの口調が染みついてしまったというわけでござりんす」


「えー、何それ! ちょーロマンチックじゃん! その花魁さんともお話したかったなぁ」


「ふふふ。そう言ってくれたらきっとあの子も喜んでくれると思いんす。なあ?」


 スクナは、自分の腹部に向かって呼びかけるようにして声をかける。⋯⋯もしかしたら、その花魁は死んだ後スクナの腹の中に収まったのかもしれない。ただ、生贄として捧げられるくらいなのだから、最期の時をスクナと話して過ごせたのは幸せだったのかもしれない。そう思ってしまうのは、ボクの感覚が麻痺しているのだろうか。


「おいスクナよ。もしまた人間を喰らうようなことをすれば、その時は容赦なく殺すからな?」


「わっちはもう好んで人間を喰らおうとは致しんせん。それに、人間よりびーふしちゅーとかの方が美味でござりんした。また作ってくれなんし」


「そうかそうか。君はそういう奴だったんだな。それじゃあサトリはここに残って専属シェフにでもなろうじゃないか。話し相手がいなくて退屈していたところだ。腕と友人は多い方がいい。そしてスクナなら少なくともこの条件を1つは満たしているというわけだ」


 さっきのビーフシチューを思いの外気に入ったらしいスクナは、サトリの提案を喜んで受け入れた。こうして、リョウメンスクナがずっと一人で過ごしていた寺には、新たにサトリという住人が加わることになったのであった。


 スクナとサトリに別れを告げる頃には、辺りはすっかり暗くなっていた。食らい夜道はどこか不気味だが、山頂にあんな癖の強い妖怪二人がいるのだ。それ以上に怖いモノなどないだろう。


「お、あんなところにはぐれ魔族がおるぞ」


「え、こんな山奥にですか!?」


 ご隠居が指さす方向を見ると、そこには確かに魔族らしき人影が立っていた。しかし、その様子がどこかおかしい。目の焦点は合ってないし、こちらとの距離が近くなっても全く襲ってくる気配がないのだ。


 その魔族がフラフラと向かう先は、ボク達が先程去ったばかりのあの寺の方角だ。耳を澄ますと、あの独特な言い回しが妙なリズムを刻みながら聞こえてくるような気がした。


「へいYO! ちょっと寄ってけ魔族。酔ってけ酔ってけ酔いどれ気分。ワインに浸してぐつぐつ煮込めばここは天国夢心地。シチューにしちゃえば魔族も裸族。真っ裸にして今日のディナー!」


「ああ、楽しみでありんす。人間は食べずとも、魔族の味は癖になるから止められないでありんすからなぁ」


次回は舞台を九州に移します。そして、恐らく初めてになるのではないかと思われるユウ以外の1人称です。誰の視点になるかはお楽しみください。

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