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『リョウメンスクナ』 その3

ギリギリセーフで土曜日投稿ということで。短いですが投稿します!

「「それじゃあ、死んでくれ」」


 本堂内を蝶のように飛び回るご隠居に、唯一自由に動かせる髪の毛を操り、四方八方から蜂のように刺突を繰り返すリョウメンスクナ。最初の目的はどこへやら、がっつり戦闘を始めてしまった二人を止める手段はない。


「これ、放っておいて平気なんでしょうか? ボクもご隠居の助太刀に入ったほうが⋯⋯」


「だいじょうぶっしょ! ご隠居、何だか凄く楽しそーだし! 久々に本気出せる相手と会えて嬉しいんだろねー、きっと。しばらく暇になるだろーし、うちらは仲良く女子会してよーよ」


「女子会。それは魅惑の響きだ。甘いスイーツを貪り、甘い会話に花を咲かせる。血糖値大丈夫か? 糖尿病には気をつけろ。サトリとの約束だぞ」


 ご隠居と1番付き合いの長いアベが大丈夫と言うならば、きっと大丈夫なのだろう。楽しそう⋯⋯かどうかはよく分からないが、確かにご隠居は戦いながら笑みを浮かべていた。


「女子会ですか。この状況で楽しくお喋りはかなりハードル高い気もしますが⋯⋯」


「そう? ご隠居の戦い方って綺麗だから映画見てるみたいな感じで楽しめると思うよ~? そしてお喋りのテーマは⋯⋯ジャカジャカジャン! 恋バナ☆ ユウっちは、今気になっている人とか居ないの?」


「なあおい、サトリには聞かないのか? ちなみにサトリが今気になっているのは80デニールの全身タイツだ。きっと息苦しい。胸も苦しい。これが⋯⋯恋?」


 アベにキラキラとした目で詰め寄られ、ボクは返答に困ってしまった。恋バナと言っても、ボクには異性の知り合いはトムおじさんくらいしかいないし、トムおじさんのことは好きだが、恋人とかじゃなくてお父さんって感じだ。


 次に思い浮かんだのは、ザキのことだ。ザキは、最近隠すことなくボクに好意をぶつけてくる。そして、ボクもザキのことは好きなので好意を向けられるのは凄く嬉しいことだとは思っている。ただ、それが恋愛感情かと聞かれると、ちょっと違うような気もするのだ。


「ボクは⋯⋯よく分かりません。恋というものを、まだ経験したことがないんだと思います」


「へー、そうなんだ! じゃあじゃあ、ユウっちがもしときめく相手を見つけられたら、それが初恋ってことだ! ユウっちの初恋を貰えるなんて羨ましいな~。うちも欲しい!」


「初恋の味は甘酸っぱいとはよく聞く。そこでサトリ3分クッキングのお時間です。用意するのは鶏肉にゴボウ、そしてちりめんじゃこ。この具材を鍋に入れて3日煮込んだ後、隠し味に初恋を少々。完成したものがこちら、ビーフシチューです」


 ギュギュッと身体をひっつけてくるアベは、さっきから距離が近い。至近距離でにぱっと咲くような笑みを向けられると、ついどぎまぎしてしまう。


 ⋯⋯そして、そんなアベ以上に気になって仕方ないのがサトリだ。意図的にスルーしてきたが、さっきからところどころ会話に混じってきては変なことばかり言ってくるのでそっちに意識が持って行かれる。


 今も、どこからかとりだした鍋を大きなスプーンでかき混ぜ、良い匂いを本堂全体に撒き散らしていた。そして、その匂いにつられてご隠居とリョウメンスクナが戦いを止めてやって来る。


「お、美味しそうな匂いがすると思ったら、サトリが料理をしておったのか。運動して腹が減っておったところじゃ。儂にも食わせろ」


「これは⋯⋯なんざんす? 嗅いだことない匂いでありんすなぁ。わっちにも分けてくれなんし」


「サトリ特製ビーフシチュー。ヴィーガンでも大丈夫な肉抜き仕様だ。一杯100円。もう一杯食べるとその100円を返そう」


 いつの間にか戦闘が終わっていたことも驚きだが、もっと驚いたのは壁に拘束されていたはずのリョウメンスクナの手足が解放されて自由になっていることだ。4本の腕で器用に椀を持ち、美味しそうにビーフシチューを食べている。


「ご、ご隠居。リョウメンスクナ、さんの腕の拘束は?」


「ああ、邪魔そうじゃったから壊してやったわ。その方が本気で戦えると思ってのう。実際、拘束を解除した後の奴の動きは見違える程で、流石の儂も殺されるのではないかとヒヤヒヤしたわ。⋯⋯あ、サトリよ。もう一杯頼む」


「わっちも久々に動けて満足でありんす。拘束も解いてくれたし、また何かあったら呼んでくんなまし。あ、わっちにももう一杯」


「雨降って地固まる。そして固まった地面にビーフシチューを撒けば、再び地面はぐちょぐちょになる。ぬかるみに足を取られ、転倒した少年が味わう土の味は、ビーフシチューに浸食されている。もう甲子園の土じゃ満足出来ない身体にされてしまうわけだ。やれやれ。困ったものだぜ」


 ⋯⋯何はともあれ、無事リョウメンスクナの協力を得ることが出来たのはよいことだ。ボク達はお祝いに、ご隠居とリョウメンスクナをメンバーに追加し、再び女子会を開くことになったのであった。


次回でリョウメンスクナ回は終了です。

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