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僕らの日常を取り戻せ!~元転生者たちは世界を救う~  作者: 赤葉忍
第三章:『忍』の心、ここにあり
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病室にて、エトセトラ

台風、皆さん被害はありませんでしたか? 私は何とか乗り切ることが出来ました。

「あんた、治療を終えたばかりで何そんな傷だらけになってるのさ! 魔力もごっそり抜けてるし⋯⋯しばらくは絶対安静だからね!!」


「はい、すいません⋯⋯」


 ラビに抱えられてアジトへと戻って来たボクは、組織における治療担当のラブにがっつり怒られてしまった。結果的にイライザにトドメを刺すことが出来たから良かったとはいえ、無茶をしてしまったことはかわりない。甘んじて叱責を受け入れることにしよう。


「はあ⋯⋯。とはいえ、イライザにちゃんとトドメを刺したのはお手柄だったよ。それに、顔から迷いが消えている。きっと、この無茶はあんたにとって必要なことだったんだろう?」


 叱られる覚悟を決めたところで優しくそう言われたので、ちょっと面食らってしまった。改めて仲間に恵まれているなぁと思い、ちょっぴり感動したところで、「でもしばらくは病室から一歩も出さないよ!」と釘を刺されてしまった。成程、これがアメとムチか。


 ラブが病室から出た直後、早速ボクの元へやって来たのはザキだった。余程急いで来たのか、肩で息をしている。そして、ボクの姿を確認するなり、勢いよく飛びついて来た。


「ゆ、ユウ⋯⋯! ぶ、無事で良かったです。イライザの魔力反応があったという話を聞いて

私、もしユウに何かあったらと思うと気が気でなくて⋯⋯。もし何かあったら魔族皆殺して私も死ぬつもりでした⋯⋯」


 何だか物騒なことを呟いているが、ボクのことを心配してくれている気持ちは本物だ。ぽろぽろと涙を流すザキを安心させるためにも、優しく抱きしめることにした。


「え、えへへ⋯⋯。ユウの胸、柔らかくてとても気持ちいいです。すー、はー。えへへ⋯⋯」


 ⋯⋯喜んでくれるのは嬉しいが、匂いまで嗅がれるのはちょっぴり複雑だ。いや、ザキが幸せそうなら文句は言わないけれども。


 ひとしきりボクの胸の中で匂いを嗅いだザキは、満足した様子で病室を去って行った。そんなザキと入れ替わりで病室にやって来たのは、共に戦った忍者、ヨルとアサだった。


「同士ユウよ、無事か? 憤怒魔将と戦ったと聞き、我ら2人心配して駆けつけた」


「ヨルさん、心配してくださり感謝します。ボクはこの通り、魔力切れは起こしましたが平気です」


「そうか! それは良かったなぁ、ヨル」


「ああ、本当に良かった。ユウは俺たち甲賀忍者の同士だからな。⋯⋯そしてユウよ。そんな同士に、今日は別れを告げに来たのだ」


 別れを切り出したのは突然のことだったが、あまり驚きはなかった。ヨルたち忍者は元々、このアジトではなく里に住んでいた。里には戦えない忍者が残っていて戦士達の帰りを待っているらしいので、いつかは里に帰るだろうとは思っていたのだ。


「そうですか⋯⋯。お別れは寂しいですけれど、仕方ないですね。ところで、忍者の里はこれからどうなるのですか?」


「俺たちは、2人の偉大な長を同時に失いました。正直、すぐに元通りという訳にはいかないでしょう。そこで⋯⋯」 


「そこで、伊賀と甲賀は1つの里で共に生きることにしたんだ! 長2人が力を合わせてルクスリアに立ち向かった姿は、甲賀の技術で記録され、皆の記憶に残っている。互いを尊敬する気持ちこそあれど、もう争うことはないさ。ヨルと2人で、前よりももっと大きな里を作り上げてみせるよ!」


「それは⋯⋯凄く楽しみですね!」


 ボクは、心の底からそう思った。オサとリーダーの死闘は、ボクも記録映像を通してしっかり見ている。あの2人の忍の魂を継ぎ、伊賀と甲賀の忍者はより強く成長することだろう。


「我ら忍者一同、何かあれば再び駆けつけて共に戦うと誓おう」


「勿論、何もなくても気軽に里に来てくれてもいいからね! あたし達は仲間なんだからさ!」


「はい、分かりました!」


 ヨルとアサの2人は手を繋いで互いに見つめ合うと、ボクの目の前で煙に包まれてその姿を消した。流石忍者。別れの時も一瞬だ。ただ、病室で煙をたくのは止めて欲しかった。


 換気のためにベッドから立ち上がり、病室のドアを開けようとすると、ちょうどそのタイミングで病室を訪れようとしていた人物とばったり鉢合わせた。


「あ。君は⋯⋯」


「え、えっと⋯⋯お見舞いに来ました。今、お時間大丈夫ですか?」


 そこに立っていたのは、ボク達が闘技場で助けた少女、エミだった。ボクの妹と同じ名前の彼女とは、結局今日までちゃんと話す機会がなかった。


エミは、その実力をボスに買われて、『リターナー』の一員として共に戦うことを決めたと聞く。兎耳の少女、エミ。これから共に戦うことになる彼女が本当にボクの妹かどうか、今確かめておくべきだろう。


「うん、大丈夫です。ボクも、君とはちゃんと話したいと思っていましたから」


 緊張で若干口調が固くなる。そして、緊張しているのはどうやらあちらも同じようで、兎耳がぴーんと真っ直ぐ立っていた。


 お互いに緊張で若干気まずい空気の中、最初に口を開いたのはエミだった。


「ええっと、あの⋯⋯いきなりで失礼かもしれませんが、私たち、どこかで会ったことありますか?」


「会ったことは⋯⋯ないと思う、たぶん。ただ、もしかしたら君はボクの妹なんじゃないかなって思っているんだ。記憶喪失のせいで顔ははっきり覚えていないけれど、ボクにもエミという名前の妹が居たんだ」


 先程よりも緊張がほぐれたおかげで、しっかりと言いたいことを伝えることが出来た。そして、ボクの妹かもしれないと告げられたエミは、かなり動揺した様子だった。ボクの顔を見て、そして自分の手を見て、今度はボクの胸を見て⋯⋯そして、申し訳なさそうに頭を下げた。


「⋯⋯ごめんなさい。たぶん、人違いだと思います。私には兄はいるけれど、姉は居ませんから」


「⋯⋯そっか。まあ、同じ名前の人って結構居るしね。こちらこそごめん。勝手に妹だと勘違いしちゃって」


 もしかしたら、本当に妹かもしれない。その期待があっただけに、否定されたのは思った以上にショックだった。しかし、性別が違うならば可能性はないだろう。思わず肩を落としたボクに、慌てた様子でエミがフォローを入れてくれた。


「え、えーっと⋯⋯でも、私も不思議と貴女のことは他人と思えなくて。もし良かったら、お姉ちゃんって呼んでもいいですか?」


「え!? も、勿論いいよ。あ、そうだ。そういえば、まだ名前を言ってなかったよね。ボクの名前はユウ。これからよろしくね、エミ」


「ユウ⋯⋯?」


「ボクの名前がどうかしたの?」


「い、いえ。ただ、私のお兄ちゃんと名前が似てたので、驚いちゃって。よろしくお願いします。⋯⋯ユウお姉ちゃん」


「ぐはっ!?」


 許可を出したのは自分だが、上目遣いでこちらを見ながらお姉ちゃんと呼ばれる破壊力は、想像以上のものだった。本当の妹じゃないなんて関係ない。ボクはこの瞬間、エミを死ぬほど可愛がることを心に決めたのであった。


次回、第三章最終話。『大罪七将定例会議』にて、締めとなります。お楽しみに!

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