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僕らの日常を取り戻せ!~元転生者たちは世界を救う~  作者: 赤葉忍
第三章:『忍』の心、ここにあり
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受け継ぐ魂、永久に輝け

今回は第三章の中で1番書きたかったところ。やっぱりこういう展開っていいですよね。

「が、ガガガ⋯⋯。ガルルゥ⋯⋯」


 リズの記憶と意志を胸に刻み、立ち直ることが出来たボクの耳が捉えたのは、今にも消えそうな小さなうなり声だった。しかし、この声を忘れるはずはない。すぐさま魔力を巡らせて声が聞こえてきた方向を特定すると、そこにあったのは石炭のように真っ黒焦げの物体だった。


 その物体は、ボクの目の前でボロボロと崩れそうになりながらも、徐々に形を作っていく。そして、腕のような部位が生成されたところで、地面に落ちていた口を拾い上げ、顔のような部位に貼り付けた。


「そ、そんな⋯⋯!? お前は既に死んだはず。なんでここに⋯⋯イライザが!?」


「が、ガルルルゥ⋯⋯。お前らが見つけた死体は、あたいが造った分身体だよ。最も、本体もかなりダメージを受けていたから、こんなみっともない姿になってしまったけれどね。しかしそれも、お前を殺して魔力を奪ってしまえば問題ない⋯⋯!! 厄介な宝石は死んだみたいだし、お前程度ならこの身体でも充分に戦えるぞぉっ!」


 現れたのは、死んだと思われたイライザだった。ダメージは残っているようで、依然として石炭のように真っ黒焦げになった身体が元に戻る様子はないが、パーツは徐々に再生されてきており、今ははっきりと顔を確認することが出来る。


 ここで戦闘になるのは想定外だ。外で待っているラビを呼ぶべきだろうか。⋯⋯いや、ここは自分で決着を付けたい。リズの死は既に受け入れたが、彼女を殺した本人が折角こうして蘇ってくれたのならば、仇を討ちたいと思う気持ちはおかしいだろうか。


「見守っていてください、リズ⋯⋯! 貴女がいなくても大丈夫だということを、証明してみせます!」


 気合いを入れるために、リズが遺したエメラルドをもう一度ギュッと握りしめる。すると、先程リズの記憶を見た時と同様に宝石が輝きだし、さらにあの聞き覚えのある声が脳内に響いてきた。


《――『受け継がれた魂』。条件一部達成。一定条件を満たしたことにより、勇者の力と失われた記憶を一部開放します》


 その瞬間、ぶわっと洪水のように記憶が蘇ってくる。思い出したのは、とある世界に居た時の記憶。この世界とは違うどこかで、仲間と共に戦った時の記憶だ。


「そうだ⋯⋯! 思い出した。ボクも、リズと同じで異世界にいたんだ!!」


 そして、その時の記憶を思い出すと同時に、ある力の使い方も思い出した。これは、ボクが異世界で何度も使った力。この力でボクは何度もピンチを乗り越えてきた。


「⋯⋯イライザ。あなたはもう、ボクに勝つことは出来ない!」


「ああん!? 弱虫が、寝言吐いてんじゃねぇぞボケぇ!!」


 崩れそうな身体を無理矢理動かして、こちらへと殴りかかってくるイライザ。しかしその動きはとても鋭く、以前のボクならば防御するので手一杯だったであろう。


「だから、真似させてもらいます⋯⋯! 『模倣(コピー)』!!」


 ボクは、新しく身につけたコピーの能力でイライザの動きを模倣し、イライザの拳と正面から打ち合った。この能力を使えば、自分ではとても出来ないような格闘術も容易く行うことが出来る。


 さらに、この能力に出来ることはそれだけではない。


「まだまだいきますよ⋯⋯! 『検索(サーチ)』からの『模倣(コピー)』! 過去のボクの記憶からイライザの動きをサーチして、その動きをコピーする!」


 ボクがコピーするのは、リズと戦っていた、全力のイライザの動きだ。その動きならば、今の弱ったイライザとは比べものにならないほど鋭く、強い。実際に、イライザはボクの動きに付いていけず攻撃を喰らってしまっていた。


「な、なんでお前があたいの動きを⋯⋯!? いや、でも弱ぇ! お前の筋力じゃ、あたいの動きを再現出来ても破壊力は真似出来ないみてぇだなぁ。そんなんじゃ、あたいの再生力には追いつけねぇぞ!!」


 ⋯⋯イライザの言うとおり、この能力にも真似出来ないものはある。コピーで模倣出来るのは、あくまでも身体の動きや魔術構築だけで、その威力までは模倣出来ないのだ。


 しかし、ボクが新たに身につけた力は、コピーだけではない。むしろ、もう1つの力の方が本命。ボクが、イライザを確実に倒すことが出来ると確信した能力である。


「はい、その通りです。なので、少し力を借りたいと思います。⋯⋯リズ、ボクに力を分けてください! 『貼り付け(ペースト)』!!」


 能力を発動した直後、握り締めていたエメラルドが一際強い輝きを放ち、ボクの身体を包んでいく。光に包まれたのは、時間にしてほんの一瞬。しかし、その一瞬でボクの見た目は大きく変わっていた。


 腰まで伸びた金色の髪に、エメラルド色のドレス。後ろ姿だけなら、きっと皆リズと見間違うだろう。いつの間にか足に履いていた靴は、バレエ選手が履いていたという爪先の先端が平たいトゥーシューズに変化している。そのトゥーシューズも、エメラルド色にキラキラと輝き、存在感を放っている。


 これが、『貼り付け(ペースト)』の力だ。物体に秘められた魔力を自らの身に纏い、強化する力。まさに、リズがボクのために遺してくれたような力だ。


『いきますわよ、ユウ!』


「はい! やりましょう、リズ!」


 心の中のリズの呼びかけに答え、ボクはくるくると回転を始める。動きは、コピーの能力で模倣済みだ。叩き込むのは、リズが使ったあの渾身の一撃!


「ガルルルぅ! 見た目だけ変わったところで、弱者に何が出来るっていうんだぁ!!」


 イライザが吠えながら振るった爪を、回転蹴りで弾き、ボクは高速で懐に詰める。そして、そのがら空きの胴体に向かって次々と蹴りを放つ。


「はぁぁぁ! アン・ドゥ・トロワ!!」


「がぁ、ぐふぅ、げはぁ!?」


「まだまだぁ⋯⋯! カトル・サーンク・スィス! セットゥ・ュイットゥ・ヌフ・ディヌ!!」


「ガルルル⋯⋯!? ガルァ!?」


「いい加減大人しく、死んでください! リズの力とボクの力、2人の力が合わさった協奏曲(コンチェルト)。『エメラルド・ボレロ』!!」


「ば、馬鹿なぁぁぁぁぁ!!!?」


 緑色に輝く一閃は、イライザの身体を切り裂き、今度こそ跡形もなくその肉体を消失させた。それと同時に、ボクはがくっと膝から崩れ落ちる。


「ぜえ、ぜえ⋯⋯。こ、これ、思った以上に魔力の消費が激しいですね。あんまり長時間は使えないかも⋯⋯」


 ちょっぴり締まらない終わり方になったが、これで完全に決着はついた。音で異変に気付いたのか、慌てた様子でこちらに駆けてくるラビに手を振ったところで、ボクは意識を失って眠りについたのであった。


第三章もあと数話で終わります! 次は残った忍者たちにスポットを当てた話。

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