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僕らの日常を取り戻せ!~元転生者たちは世界を救う~  作者: 赤葉忍
第一章:元勇者と個性的な仲間たち
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元転生令嬢との魔術特訓(2~3日目)

ちょっと修正入れてたら投稿遅れました! 明日はたぶん8時投稿になると思います!

「魔術には5つの基本属性と、その他の特殊属性が存在します。基本属性は、『火、水、土、風、雷』です。魔術を使える者は、必ずこの基本属性のどれかに適正を持っておりますわ。特殊属性に適性を持つ者はかなり少ないため、その全貌はまだ明らかになっていないのが現状です。まずは、ユウがどの魔術に適性があるかを調べましょう」


 2日目は、朝からリズとの魔術特訓だ。流石に1日経つとそこまで意識することもなくなったので、今日はしっかり集中していこうと思う。


 リズがボクに渡してきたのは、透明な水晶のようなもので出来た玉だった。それに触れてみると、水晶が赤く光を放った。


「その光の色、どうやらユウは火の魔術に適性があるようです。ふふ、わたくしと同じですわね」


「そ、そうなんですね」


「昨日は魔力を感じるところまでいけたので、今日は実際に魔術を使う特訓をしましょうか」


「はい!」


 まずは、適性があるという火の魔術から始めることになった。


「魔術を使う際、特別な呪文などは必要ありません。重要なのはイメージです。掌から炎を出すイメージで、魔力を放出してみてください」


「ぐぬぬ⋯⋯なかなか難しいですね」


 掌から炎を出すイメージと言われても、実際に炎を出したことなんてないからイメージが湧いてこない。なかなか上手くいかず唸っていると、いつの間にかリズが背中にぴったりと貼り付いて腕に触れていた。


「うひゃっ!? りり、リズさん、近くないですか?」


「ふふ、照れていますの? でも、我慢してくださいませ。こうやってわたくしの魔力を流すことで魔術の発動を手助けしていますの。あと、イメージが難しいなら、『ファイア』くらいは言った方がやりやすいかもですね」


 どうやら急に接近してきたのは親切心からだったみたいだ。もしかして⋯⋯と邪な妄想をしてしまった自分を殴りたくなる。


 この自分への怒りを炎に変えて、叫んでやる!!


「『ファイア』!」


 すると、リズのサポートもあったおかげか、無事掌から炎を出すことができた。


「やった! リズ、やりましたよ!!」


 魔術をちゃんと発動出来たことが嬉しくて、リズの手を取って跳びはねる。リズも、嬉しそうにニッコリ微笑んでくれた。


「ふふ、良かったですね。それでは、次は適正以外の魔術も試してみましょうか」


「はい! 今ならどんな魔術でも出来そうな気がします!」


 しかし、それから数時間経っても他の魔術は発動しなかった。


「うう⋯⋯なんで発動しないんでしょう。もしかして、ボクって魔術の才能がないんでしょうか」


「適正魔術以外の魔術を発動させるのはかなり難易度が高いことですわ。わたくしも自力で発動出来るようになるまでは数年かかりましたもの」


 そう言って、リズはなぜかドレスの裾をたくし上げる。とっさに目を逸らしたけれど、いつかと同じように生足がちらりと見えてしまった。


「りり、リズさん、急にそんなことしちゃ、はしたないですよ!」


「あら、ごめんなさい。でも、わたくし見られて困るようなものは何もありませんわ。それに、今のはこれを取り出すためですもの」


 リズが手に持っているのは、キラキラと輝く石だった。そういえば以前もあそこから宝石を取り出していた気がする。⋯⋯内部の構造がどうなっているのか少し気になったのは内緒だ。


「リズさん、それは一体なんですか? 宝石みたいに見えますけれど⋯⋯」


「仰るとおり、宝石ですわ。ただ、魔力が込められた特別な宝石ですけれど。この宝石を割ることで、魔術の発動を助けることが出来るのです。ルビーは火の魔力を、サファイアは水の魔力を⋯⋯というように、宝石によって込められる魔力の種類は違います。わたくしはいつも宝石を持ち歩いていざという時に使えるようにしておりますのよ」


 その後は、リズから宝石を使った魔術の使い方も教えて貰った。すると、あれだけ頑張っても出来なかった他の属性の魔術の発動も簡単にできた。


 ⋯⋯でも、魔術を使う度に宝石を割るのは心臓にあまり良くないから、なるべく自力で魔術が使えるように頑張りたいと思う。


「さあ、一旦休憩といたしましょうか。トムがお菓子を作ってくれましたの。一緒に食べましょう?」


 ちょうど疲れてきたタイミングで、リズが休憩の提案をしてくれた。魔術でさらっと机と椅子を作り出したリズの技量に感嘆しつつ、トムさんの作ったお菓子に舌鼓を打つ。


(もしかしてこれ、あのことが真実か聞くのにちょうど良いタイミングなのでは!?)


 さっきまでは特訓に集中していたから忘れていたけれど、こうやって顔を合わせているとつい思い出してしまう、ラブから言われたあの言葉。確かめるには、今は充分な時間がある。


「あの、リズさん!」


「ふふ、リズでいいですわよ。さっき魔術が成功して喜んでいた時、そう呼んで手を取ってくださったでしょう? わたくし、結構嬉しかったんですの」


「えっと⋯⋯じゃあ、リズ」


「はい、なんでしょうか?」


「⋯⋯リズは、どうしてこの組織に入ることを決めたんですか?」


 口に出していたのは、本当に聞きたかったことは別のことだった。だって、しょうがないじゃない。あんな綺麗な目で、呼び捨てが嬉しかったなんて言われて、貴女は同性愛者なんですかなんて聞けるわけがない⋯⋯。


「そうですわね⋯⋯。わたくしがこの組織に入ったのは、わたくしが元転生者だからですわ」


「『転生者』って、どういうことですか?」


 『転生者』という言葉には、なんだか懐かしい響きがある気がする。もしかして、ボクの失われた記憶にも何か関係があるのだろうか?


「わたくしは、1度この世界で死に、そして別の世界で再び生を受けました。わたくしが魔術を学んだのは、その第2の人生でのことですわ。その世界は⋯⋯わたくしがこの世界でゲームとして遊んでいた世界そのものでした。わたくしはそこで、ゲームの登場キャラの貴族令嬢として日々を過ごし、結婚し子供を授かり⋯⋯最期は病気で死にました。大往生でしたわ」


「え⋯⋯? ま、また死んだんですか?」


「はい。そして、気が付いたらこの世界に、貴族令嬢『リズリット=アメジスタ』として戻って来ていましたの。しかも、若いときの姿で。訳も分からず混乱していたところをボスに助けられ、この世界の状況を聞かされ⋯⋯わたくしは、これはわたくしの運命なのだと思い、組織に入ることを決めたのです」


「運命、ですか」


「ええ、きっと、わたくしの力が必要だったから、わたくしは呼ばれたのでしょう。ならば、この力を役立たせることこそわたくしの運命。そうは思いません?」


 そう言って優雅に紅茶を飲むリズの姿は、とても美しく見えた。


〇〇〇〇



 リズとの魔術特訓も、一応今日で最終日だ。明日からは別の人の元で他のことを習うことになる。


 この日は、まず昨日までやったことのおさらいから始めた。体内へ魔力を循環させ、掌から炎を放つ。適正魔術となる火の魔術だけは、この3日間で随分スムーズに発動できるようになったと思う。


「ユウはなかなか筋がいいですわね。わたくしが直接教えるのは今日で最後ですが、もし何かあればいつでも歓迎しますわよ」


「ありがとうございます!」


 この3日間、リズには本当にお世話になった。その分心残りなのは、ラブに言われたことを気にして変な態度を取ってしまった初日のことだ。


 昨日は結局聞けなかったけれど、このまま聞けずにいたらいつまでも心にしこりが残る。ボクは、リズとの間には変な隠し事はなしにしたかった。


「あの、リズ、実は⋯⋯」


 ボクは、ラブにリズが同性愛者だと言われ、そのことで変に意識してしまったことを伝え、謝罪することにした。


「本当にごめんなさい!」


「初日に妙によそよそしかったのはそういうことでしたのね。全く、こんな純粋なユウを騙すなんて、ラブも悪い人ですわ」


「そ、それじゃあ、やっぱりあれは嘘だったんですね」


 思わずほっと息が漏れる。昨日結婚して子供を授かったとかいう話を聞いていた時点で、嘘じゃないかとは分かっていた。ただ、ちょっぴり残念とか思ったりして⋯⋯いやいやいや、何を考えているんだボクは。


「ええ、わたくしは別に、同性愛者というわけではありません。男性も女性も等しく愛しているだけですわ」


「なるほど、男性も女性も等しく愛して⋯⋯うん?」


 それはつまりどういうことなんだろうか。えっと⋯⋯同性愛者ってのは嘘だけれど、リズはどっちもいける人だったってこと? じゃあ、女性が恋愛対象だっていうことは別に間違っていないわけで⋯⋯。


「ちなみに、ユウはわたくしのタイプですわ」


「ふぇ!?」


「ふふ、これからも末永くよろしくお願いしますね♡」


 語尾にハートマークが付いていそうな甘い声でそう囁かれ、ボクは顔が真っ赤になったのを感じたのだった。


次回、ラビとのお仕事開始です。

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