胸に刻むは『忍』の一文字
お待たせしました! 1日間開いちゃいましたが投稿です!!
「ほらほらほらぁ! どんどん攻めていっちゃうわよぉ!!」
ルクスリアの鞭の動きはまるでそれ自体が意志を持っているかのように変幻自在だ。動きの予測が難しく、常人ならよけることはまず不可能である。
「はっ! 俺様を舐めるんじゃねぇぞ!」
しかし、ここに居るのは1つの道を極めた達人のみ。伊賀のリーダーは爆風を使い空中を自由自在に動くことで鞭の嵐をかわし、甲賀のオサは手袋に忍ばせていたワイヤーを用いて華麗な立体起動を魅せる。
さらに、オサは頭に取り付けていた装置を作動、レーザー光線をルクスリア目掛け放つ。しかし、その光線はルクスリアが片手で掲げた魔力の盾によって防がれてしまった。
「やはり防ぐか。ただ、それは想定済みだ」
盾によって弾かれた光線に、オサはプリズムと呼ばれる、光を分散させる作用を持つ透明体の三角柱を投げつけた。すると、レーザー光線はプリズムによって分散され、より細い光線となり空間のあちこちにばらまかれた。
ルクスリアは向かってきた光線を拳でたたき落とし対処するも、数本の光線は防ぎきれず履いていたブーメランパンツを焼き切った。はらり、と布きれと化したパンツが床に落ち、全裸となるルクスリア。しかし、この場にそんな些細なことを気にする者は居ない。たとえ全裸になろうと、死ななければノーダメージなのだ。
「あらやだ、そんなに私の裸を見たかったのかしら。別に見られても恥ずかしくないからいいけれど、すうすうするからあなた達のどちらかから殺して服を奪うことにするわ」
「誰がてめぇの汚い裸なんて見てぇと思うかよ! 見苦しいからさっさと死ね、変態オカマ!!」
リーダーは、靴に仕込んだ小型爆弾を起爆させ、その勢いを利用して回し蹴りを放つ。それに対し、ルクスリアもまた華麗な回し蹴りで応じた。
互いの攻撃がぶつかり合った衝撃で空気が揺れ、ルクスリアの股間のイチモツも揺れる。競り負けたのは、リーダーだった。ボッキィッ! という骨の折れる音が響き、苦悶の表情を浮かべる。
ただ、ルクスリアは回し蹴りをしたことで生物として最も曝してはならない急所を思いっきり曝す形になってしまっていた。オサは、その急所をみすみす見逃すことなどしなかった。
疾風迅雷。文字通り微量の電気を身体に流すことで身体能力を向上、一気に速度を上げたオサは、すれ違いざま忍刀でルクスリアのイチモツを切り落とした。
「はぁぁぁん!? あ、あんた男ならそこだけは攻撃しちゃダメって知ってるでしょぉぉ!?」
「⋯⋯敵に容赦など必要なし。しかし我とてこんな汚いものなど切りたくなかった。お互い損をした同士条件は同じだろう」
「何が条件は同じよこらぁ! ふざけんじゃねぇわよこのイカレ野郎!!」
ルクスリアは怒りと痛みに涙目になりながらも、先程よりもさらに激しく鞭を振るい始めた。その速度たるや、あまりに速すぎて忍び2人ですら回避が出来ずに数発喰らってしまうほどだ。
そして、鞭を喰らった2人は同時に相手の策略にはまったことを悟った。本来ならば痛いはずの鞭の一撃が、何故かとても心地よいものに感じるのだ。
「ふふふ⋯⋯。どうかしら、私の『愛の鞭』は。人間は、苦痛にはある程度耐えることが出来るけれど、快楽を耐えることは難しいものよ。私の愛で、あなたたちを堕としてみせるわぁ!!」
いつの間にか、真っ赤なレオタード衣装に着替えたルクスリアは、ノリノリで鞭を振るう。しかも、切り落としたはずの股間のブツも衣装と同時に再生したのか、レオタードの股間部分はもっこりとその存在を強調していた。
「はあ、はあ⋯⋯。思ったより厄介な相手らしいな。おい、甲賀の。もしかしてもう堕ちちまったか?」
「ふ、まさか。我には既に心に決めた女人がいる。彼女のささやかながら主張する胸の膨らみと笑顔を思い浮かべれば、これしきの快楽に耐えるのは容易い」
「うわ、きも⋯⋯。童貞こじらせた奴の妄想力は怖いな」
「妾が10人も居る軟派者には言われたくない!」
「何楽しくお喋りしてるのかしら~? 私も入れてよ!!」
2人の会話に割って入るように、再び繰り出される鞭の嵐。ダメージと快楽は着実に2人の身体を浸食していく。
最早近づくことすら困難な状況下で、最初に動いたのはリーダーだ。爪の根元に爆薬を詰め、歯で火打ち石を噛み砕いて火を起こし、爆発させる。爆発によって飛んでいった爪は、鞭の嵐をくぐり抜け、ルクスリアの目に突き刺さった。
「いったぁい!! ⋯⋯でも、こんなんで私の攻撃を止められると思ったら、大間違いよぉぉ!!」
ルクスリアは、痛みに狼狽えることなく、鋭く鞭を振るう。そして、その一撃はリーダーの腕を切り落とし、大量の血が腕から噴き出した。
「おい、甲賀の。後は任せたぞ」
「⋯⋯ああ、任された」
最早助からない出血量に自らの死を悟ったリーダーは、長年のライバルであるオサに後を託すことを決めた。誰よりもオサのことを嫌っているリーダーは、その分誰よりも彼の強さを知っていたからだ。
オサは、腕を大きく振るい、切り口から吹き出す血をルクスリアに浴びせる。そして、懐に隠し持っていた最後の爆弾を飲み込み、自ら起爆スイッチを押した。
爆音と共に、飛び散る肉片。そして、リーダーの血をかけられたルクスリアの身体もまた、爆発のダメージを受けていた。
「はぁ!? 何よこれぇ。一体どうなってるのよぉ!?」
オサは知っていた。リーダーが毎日微量の火薬を摂取し続けることで、自らの身体そのものを1つの爆弾に変えていたことを。その血も、肉も、全てが爆弾と化している故に、自爆した時の余波は想像以上に大きい。
オサもまた爆発の余波を受けて鼓膜が破れていたが、直接血を浴び、爆発の威力をもろに受けたルクスリアのダメージは比べものにならないほど大きいはずだ。
「⋯⋯最期まで派手で忍らしくない男よ。しかし、その最期、無駄にはしない」
耳が聞こえずとも、まだ足は動き、目は見える。対するルクスリアは、片腕が吹き飛び、顔も右半分が欠損している。だが、その状態でもなお鞭を振るい続けるのは、『大罪七将』の意地というものか。
鞭の攻撃をかわす余裕は残されていない。オサはグローブから鉄線を伸ばし、ルクスリアを囲むように展開させた。この展開した鉄線を一気に巻き上げれば、今の弱ったルクスリアの身体を切断することなど容易いだろう。
そう、この鉄線を巻き上げれば、ルクスリアを殺すことが出来る。巻き上げることさえ出来れば、殺せる。⋯⋯殺してしまう。
生じた迷いは、愛の鞭の洗脳によるもの。即座に迷いを振り切って鉄線を巻き上げようと装置に指を置くが、鞭の一撃はその直前でオサの指を切り飛ばし、返す動きで首を跳ね上げた。
「装置を、作動⋯⋯すまない、伊賀の。そして、未来の妻よ⋯⋯」
キュルルルルと起動音を立てていた装置は、ルクスリアの皮膚を僅かに切り裂いたところでその動きを止めた。苛ついた様子で張り巡らされた鉄線を鞭で破壊したルクスリアは、既に動かなくなった忍者2人を一瞥し、ゆっくりと歩き出す。
「私にここまで傷を負わせたこと、あの世で誇りなさい。あなた達の勇姿を讃えて、記憶は読まないであげるわ。ただ、私の記憶には、あなた達『忍者』の生き様は、しっかりと刻まれた。⋯⋯どうやら、私の負けみたいね」
胸に刻むは、『忍』の一文字。彼らの尊き犠牲は、決して無駄になどならず。
ルクスリアが疲れた様子で座り込む床は、いつの間にかダンジョン特有の土肌に変化していたのであった。
次回は闘技場に戻ってイライザ戦の続きから。決着の時が迫る!!




