表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
僕らの日常を取り戻せ!~元転生者たちは世界を救う~  作者: 赤葉忍
第三章:『忍』の心、ここにあり
42/84

宝石令嬢は華麗に舞う


「お前達⋯⋯さっきのアレは、魔術だろ。それに、今も身体から魔力の匂いがプンプンする。魔術師か。なぁ?」


「ええ、その通りですわ。あら、魔術師はお嫌いでした?」


 イライザは、歯を剥き出しにしてボク達を威嚇しながら、そう尋ねてくる。それに対し、普段通りの口調で答えるリズ。その美しい立ち姿からは、『大罪七将』を前にした緊張や恐れは全く感じられない。


 ボクは、エミを闘技場の隅の方に横たわらせてから、そんなリズの隣に並んだ。なるべく平常心でいようとは心がけているが、額から流れる汗が止まらない。それほど、イライザから放たれるオーラは圧倒的だった。


「魔術師が嫌いかぁ? ハハハ、巫山戯たことを抜かす奴だ。むしろ、大好きさ! 魔術師ほど痛めつけがいのある奴はいねぇ。特に、自分の力を信じて疑わねぇ魔術師に絶望をつきつけてやる時の快感はたまらねぇよ!!」


 イライザは、すっと両手を前に突き出す。その両腕を覆うように生えた黄金色の体毛は、太陽の光を受けてキラキラと輝いていた。


「あたいの体毛は、魔術を弾く。あたいにダメージを与えられる魔術師なんて、知り合いじゃアケディアの奴くらいさ。あいつの魔術は反則だからなぁ。まあ、戦ったらお互いろくなダメージが入らねぇから大抵最後は引き分けるんだけれどよぉ」


「⋯⋯あなた、もしかしてアケディアがどうなったか知らないのですか?」


「あぁん? あいつがどうにかなるわけねぇだろ。魔王様の攻撃すら耐えるような奴だぜ? お前らなんか手も足も出ねぇうちにやられちまうよ。てか、あたいの親友を気安く呼び捨てすんなボケぇ!!」


 どうやら、イライザはアケディアが敗北したことをまだ知らないようだ。実際、ザキが居なければアケディアに触れることすら出来なかったのだから、イライザの評価は正しい。


 もし、ここでイライザにその事実を告げたら、彼女は確実に激昂するだろう。『憤怒魔将』などと呼ばれる彼女を無駄に怒らせるのは得策ではない。ボクとリズは顔を見合わせ、アケディアのことは胸に秘めておくことに決めた。


「⋯⋯そうですか。それでは、わたくしが貴女に傷を付ける2人目の魔術師になりますわね。喰らいなさい、『オパール・レイン』!」


 最初に攻撃をしかけたのは、リズだ。先程のイライザの言葉が真実かどうかを確かめるためにも、ほぼ最大火力をいきなりぶつける。


 リズが空中へと放り投げたのは、拳大の大きさをした虹色の宝石。その宝石は空中ではじけ、虹の雨となってイライザに降り注いだ。


「しゃらくせぇ!」


 しかし、イライザはなんとその虹の雨を一粒残らず拳ではじき飛ばした。恐るべきスピードである。その上、先程の言葉通り体毛が魔術を弾いているのか、その腕には傷1つついていない。


「えいやぁ!」


 ならば、と気合い一声、ボクは1番得意な火の魔術をイライザ目掛け放つ。成長したボクの魔力から放たれた火球は、かなりの大きさである。イライザの身体で体毛に覆われている部分は、手足と胸元、股間とかなり限られている。それ以外の場所に当たればダメージが入るのではないかと、サイズを大きくしたのだ。


「お? 火の魔術か。火はいいよなぁ。あたいも火は好きだぜぇ? なんたって、味が最高だからなぁ!!」


「え、えええ!?」


 火球がイライザに着弾する瞬間、驚くべきことが起きた。なんと、大きく口を開けたかと思うとボクの放ったそれを丸呑みしてしまったのだ。満足そうにお腹をさするイライザを見て、思わず驚きの声が漏れてしまう。

 

 そして、予想外の事態はまだ続く。火球を丸呑みしたイライザの体毛が、炎を纏い始めたのだ。まさか、火の魔術を吸収して自分の力に変換したとでも言うのか。ボクはダメージを与えるどころか、敵に塩を送ってしまったらしい。


「さあ、お前の炎をそっくりそのまま返してやる! 喰らいな、『炎獅子の一撃(クリムゾン・レオ)』!」


 イライザはその場を動くことなく、拳だけを前に突き出す。すると、拳に纏っていた炎が獅子を形取り、ボクら目掛けて襲いかかってきた。


 相手の攻撃を利用し、反撃の手段に使うとは、相当戦闘慣れしているみたいだ。慌てて水魔術による結界を貼ろうとしたボクを守るかのように、すっと前に飛び出したのはリズだった。


「⋯⋯成程。通常の魔術では効き目が薄いみたいですね。それでは、わたくしもそろそろ本気を出すとしましょう」


 そう言うと、突然カッカカッと床を踏みならし、ステップを刻み始めるリズ。炎の獅子が迫っているというのに、全く動じる様子もなく、その姿はまるで踊っているようであった。


「さあ、華麗に舞いましょう⋯⋯! 『黒曜石のパ・ド・ドゥ』!!」


 ふわり、と目の前で舞うスカート。大きく振り上げられた足は炎の獅子を切り裂き、そして同時にスカートで隠されたリズの足がくっきりと視界に映る。


 しかし⋯⋯そこにあったのは、女性特有の柔らかそうな肌ではなく、黒々と輝く宝石で出来た足であった。そして、リズは先程の回し蹴りの回転を利用してその場で高速で回転、黒い宝石が熱で真っ赤に染め上げられていく。


 その回転のスピードが目で追えないくらいに上昇した時、リズは突然目の前から消えた。いや、消えたのではない。高速で移動したのだ。その証拠に、地面には焼け焦げた跡が線のようにくっきりと残っている。


 その線を目で辿ると、イライザの方へと真っ直ぐに伸びていた。真っ直ぐに伸びた線はイライザまで到達すると、脇腹をなぞり、右腕を切り落としてさらに後方へと伸びていた。


「あ⋯⋯? なんだ⋯⋯? どうしてあたいの腕が切られてるんだ。お前ら、一体何をしたぁ!?」


 イライザもボクと同じように、リズの動きを目で捉えることが出来なかったらしい。ようやく自分の腕が切り落とされたことに気付き、怒鳴り散らしている。


 それにしても、リズはどこに行ったのだろうか。黒々とした線は、闘技場の壁で途切れてしまっている。


 キョロキョロと辺りを見渡していると、ふいに視界が暗くなった。まるで、何かによって太陽の光を遮られたみたいだ。そう思い当たると同時に、上空を仰ぎ見ると、そこには真っ赤な宝石で出来た両腕をクロスさせ、太陽を背に落ちてくるリズが居た。


「炎が好きと言いましたわね。それでは、この太陽の火に焼かれて苦しみなさい⋯⋯! 『紅玉・火の鳥』!!」


 イライザが防御をする間もなく、上空から重力も利用して放たれた一撃。それは、その罪を身体に刻むかの如く、十字の傷跡をイライザの身体に付けたのであった。


果たしてイライザは倒れるのか⋯⋯? 次回に続きます。


あ、感想とポイント評価、お待ちしてますね~。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ