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僕らの日常を取り戻せ!~元転生者たちは世界を救う~  作者: 赤葉忍
第三章:『忍』の心、ここにあり
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第2ラウンド、開始

ギリギリセーフ! ⋯⋯いや、アウトですねすいません。思ったより時間かかっちゃった上に日付変わっちゃいましたが、本日2話目です。どうぞ!!

 

「あ、オサ! わざわざご足労頂き感謝します!」


「そんなにかしこまる必要はない。君の頼みだから来たまでのことだ」


 時は、エミがイライザと戦うこととなった前日まで遡る。伊賀忍者の協力を無事得ることに成功したボク達は、どのようにして囚われた人間を救出するかについて具体的な作戦を練るため、甲賀の忍者に伊賀の里まで来て貰うことにした。


 ただ、不安なのが伊賀と甲賀の忍者がちゃんと話し合いが出来るかということである。オサが来てくれたのはいいけれど、伊賀の里のリーダーとは全然性格が合いそうにない。


 そして、その不安はオサとリーダー、2人が顔を合わせた瞬間現実のものになるのだった。


「あぁん? おいおい、なんで甲賀のところの辛気くさい野郎がうちに来てんだ? 魔族と戦う前に俺様がここで派手にぶち殺してやろうかぁ!?」


「⋯⋯相変わらず貴様は騒がしいな。そもそも何故忍者なのに派手さを求める。個を殺し、静かに仕事をこなしてこその忍者。貴様はそもそも忍者ですらない。ただの馬鹿だ」


 出会い頭にいきなりけんか腰で話しかけるリーダーに対し、嫌みで返すオサ。ある程度は予想していたとはいえ、想像以上の仲の悪さだ。


「ちょっとアンタ達、いい加減にしなさいよ。それでもプロなわけ?」


 こういう時に頼りになるのは、やはりドクである。その呼び名に恥じぬ毒々しい物言いで、すぱっと仲裁してみせた。


「⋯⋯確かに、面妖な女児の言うとおりだ。任務に感情を持ち出すのは好ましくないこと。我はこれ以上何も言うまい」


「⋯⋯チッ。こいつに同意するようで癪だが、俺様たちもこれ以上はもう表だっては争わねぇよ。1度協力すると約束した以上は、死んでもその約束は守る。それが俺様たち伊賀忍者のモットーだからな」


 何とか無事話し合いが出来る雰囲気になったところでほっと息をつくと、同じタイミングではぁ⋯⋯とため息が聞こえてきた。反射的にそちらを向くと、そこに立っていたのは甲賀の里からボク達と一緒にやって来た忍者、ヨルだった。


「ヨルさん、どうかしましたか? ⋯⋯あっ、やっぱりオサと会うのが気まずい感じですかね?」


「⋯⋯恥ずかしながら、その通りです。甲賀の里を出たのは覚悟した上でのことでしたが、まさかこんなに早くオサと再会するとは⋯⋯」


 途中で思い立って聞いてみたら、まさにその通りだったようだ。確かに、これは言うなれば家出した直後駆け込んだ恋人の家に親が尋ねてくるようなもの。誰だって気まずいだろう。


 色んな感情が飛び交い、表面上は穏やかだが裏では混沌とした様子を秘めてきた伊賀の里。しかし、それでも作戦会議は始められた。


 会議の司会を務めるのは、リズだ。眼鏡をかけ、先生スタイルとなって皆の前に立つ。会議の場に居るのは、ボクとラビ、ドクの『リターナー』のメンバーに、伊賀の里からはリーダーとその娘、アサ。そして甲賀の里からはオサとヨル。合計8名である。


「それでは、関係者が集まったところで、改めて今回の作戦について説明致しますわ。今回の目的は、『色欲魔将』ルクスリアと『憤怒魔将』イライザの支配する施設、『ヒューマン・ズー』に囚われた人間を全員救出すること。しかし、ここで問題になってくるのが、目標の施設の巨大さですわ。『ヒューマン・ズー』は町1つ分ほどの大きさを誇り、その内部には100万人ほどの人間が囚われ、見世物とされています」


「ひゃ、100万人ですか!?」


 予想以上の多さに、思わず声を上げてしまった。それほどの数の人間を、一体どのようにして全員救助するというのだろうか。


「ユウが驚くのも無理はありませんわ。わたくしも、初めて聞いた時は耳を疑いましたもの。⋯⋯そして、通常の方法では、魔族も大勢居る中でそんな膨大な数の人間を全員救い出すなどほぼ不可能。そこで、活躍するのがそちらに居るわたくし達の頼れる仲間、ラビですわ」


「うむ! 吾輩の能力、『迷宮作成(メイズクリエイト)』によって『ヒューマン・ズー』全体を仮想ダンジョンに変えてしまうのだ。その後、指定した物体⋯⋯今回は人間だけを吾輩

達のアジトへ転送してしまえば、戦わずして人間を皆救助することが可能なのだ~!!」


 『迷宮作成』とは、甲賀の里から伊賀の里へ転移する時に使ったアレのことだろう。それを、今度は『ヒューマン・ズー』全域に使用するということだ。まさに、ラビにしか出来ない離れ業である。


「ただ、問題もいくつか存在するのだ⋯⋯。1つ目は、『ヒューマン・ズー』の中央部にある闘技場。あそこは頻繁に『大罪魔将』が訪れるせいか、魔力が複雑に絡まってて上手く迷宮化してくれないのだ。そして、もう1つは、巨大な施設を全部迷宮にするにはそれなりに時間がかかるということなのだ」


「わたくし達が忍者の方々にお願いしたいのは、迷宮化までの時間稼ぎと、ラビの護衛ですわ。闘技場の方はおそらく『大罪七将』が居ると思われますので、わたくし達で対処致しますわ」


「⋯⋯成程。だいたいは承知した。1つ尋ねたいのだが、その迷宮化とやらには、どれ程の時間がかかる?」


「やってみないと詳しいことは分からないけれど、たぶん2、3時間はかかるのだ」


 ラビから作戦完了までにかかる時間を聞かされた忍者の首領2人は、余裕の笑みを浮かべ、同時にこう答えた。


「「承知」」


 そして、お互いに台詞が被ってしまったことが気にくわないのか、きっと睨み合い、これまたほぼ同時に顔を背けた。⋯⋯何だかこの2人、ホントはかなり似た者同士なのではないだろうか。



「その言葉、大変心強いですわ。作戦決行は、明日の正午頃。その時間帯は、ほぼ必ずと言っていい程、ルクスリアとイライザの2人が闘技場内に居ます。この作戦の要は、いかにその2人に気付かれず、人間達を回収できるかどうか。迷宮化が完了するまでは、何事もないよう静かに作戦を遂行すること⋯⋯それが、重要となります」



――そう、この作戦の目的は、魔族と直接戦うことではない。あくまでも、囚われた人間の救助が最優先だ。


 ドクのメイク術を用いてリズとドクとの3人でいち早く潜入し、闘技場内に入ったのも、忍者達へ通信機で『大罪魔将』2人の動向を伝えるため。もし闘技場から出て他の場所へ向かうようならば、真っ先に知らせる役目を担っていた。


 しかしながら⋯⋯目の前のこの光景は、あまりにも酷い。今、闘技場では今日勝てば自由の身になるという『エミ』という名の剣闘士が、『憤怒魔将』イライザの手によって一方的に痛めつけられていた。


「⋯⋯リズ、ボクはもうこれ以上、黙って見ていることは出来ません」


 ただでさえ妹と同じ名前だから、もしかして⋯⋯などと思っていたのに、この有様である。もしあそこに居る剣闘士エミがボクの妹でなくても、もうこれ以上黙って見ていることは出来なかった。


「アンタ、馬鹿じゃないの!? 昨日何事もないよう静かにって言われたの覚えてないの? あの子は可愛そうだけれど、もしここでドクちゃん達が出て行ったら作戦が気付かれて、他の人間の救助も出来なくなるかもしれないのよ!?」


 ⋯⋯ドクの反論は、正論だ。確かに、ここで出て行くことはすなわち、ボク達侵入者の存在を伝えることになる。そうなれば、作戦の成功は厳しくなってくるだろう。


 ボクは、まだ何も答えないリズの方をちらりと見た。そして、そのリズは、真っ直ぐに闘技場のエミの姿を見つめていた。


「確かに、わたくしは昨日そのように言いました。しかし、多くの命を助けるために1つの命を犠牲にして、それで作戦が成功したと言えるでしょうか⋯⋯? わたくしは、そうは思いませんわ」


「リズ、それじゃあ⋯⋯!」


 リズは、既に懐から宝石を取り出していた。そんなリズを見て、大きくため息をつきながらも、ドクも既に戦闘準備を終えている。なんだかんだ言っても、いざとなれば一緒に付いてきてくれるドクが、ボクは凄く好きだ。


「ええ。わたくしたちで、あの可愛い兎ちゃんを助けてあげましょう⋯⋯!」


 そして、こちらへと吹き飛ばされてきたエミをリズが風の魔術で優しく包み、落ちてきたエミをボクがしっかりと受け止める。闘技場に降り立った突然の乱入者に、会場は騒然としていた。


 ちなみに、ドクはまだ観客席だ。戦闘があまり得意ではないドクは、隠れてボク達を援護してくれる。しかし、その援護以上に心強いものはないだろう。


「⋯⋯誰だぁ、お前ら。魔族じゃねぇな。人間だ。人間が、いつどこから、何のためにここへやって来た。答えろ、あぁ!?」


「理不尽な暴力から、同士を救うために。今はただそれだけ、答えておきますわ」


 そして、ボクとリズは『憤怒魔将』イライザと対峙する。決闘は、思わぬ形で第2ラウンドを迎えるのであった。


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