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僕らの日常を取り戻せ!~元転生者たちは世界を救う~  作者: 赤葉忍
第三章:『忍』の心、ここにあり
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交渉はこうしよう!

今回は思ったより長くなりました。

「私がこの里の長だ。そこに居る面妖な格好をした女⋯⋯女? まあ、細かいことはいい。そこの者がこの里の場所を突き止めた時は大層たまげたものだ。しかしまさか、さらに仲間がやってくるとはな。これはもう驚きを通り越して呆れてしまう」


 ドクに連れてこられ、この里の長の家に入った瞬間、長らしき人物に言われた第一声がこれである。その口ぶりは、とてもこちらを歓迎しているようには思えなかった。


 そして、『長』というくらいだからもう少し高齢な人物を想定していたが、思ったよりも若い。20代後半か、30代といったところだろう。服装も、忍者らしく黒装束かと思いきや、無地のシンプルな和装⋯⋯確か甚平という名前だったはずだ。それを着ているせいで忍者っぽさはあまり感じられない。


 しかも不思議なのは、ここに来るまで一切他の忍者の姿を見なかったことである。しかし、視線は常にどこからか感じていたので、ボクの『サーチ』を使えば隠れている忍者たちの姿が見えたのかもしれない。


 兎にも角にも、ここまで来たからには交渉あるのみである。雰囲気に呑まれてはいけない。皆の期待に応えるためにも、何とかして長を説得してみせるのだ!


「ボクの名前はユウ。そして後ろで座っているのがラビです。突然の訪問、失礼します。しかし、どうしても急ぎでこちらへ来なければならなかったのです」


「話は既に聞いて居る。魔族に囚われた人間を救い出すために、我ら忍びの力を借りたいのだろう? しかし、協力するつもりはない。我らは外の世界には干渉しないと決めたのだ」


 まずは自己紹介からと軽く入ったが、いきなり拒絶されてしまった。これは、ドクの言った通りなかなか頑固そうだ。きっと、長い間この忍びの里という閉鎖空間に居るせいで考えが凝り固まってしまっているんだ。


 こういう人はたぶん、こちらが何を言っても首を縦に振ることはない。ならばどうするかだけれど⋯⋯うん、分からない!


そもそもボクは高等な交渉術など持っていないのだ。なので、とりあえずお喋りを続けて、もうひとつの目標を早めに達成することに決めた。


「なるほど⋯⋯! 流石忍者。魔族の侵略などには一切動じないその姿勢、かっこいいです。あの⋯⋯話は変わりますが、ボク、忍者って凄いかっこいいなぁって思うんです。よろしければ、サインを貰えませんか?」


「さ、さいん? いきなり何を言い出すかと思えば⋯⋯。さいんというのは確か、名前などを紙に書いて渡すことであったな? しかし、私には名前はない。『長』という立場になった時から、この『長』が私の役目であり、名となったのだ」


「それなら、『オサ』でいいんでお願いします! あ、名前ないと呼ぶのが大変なんで、これから『オサ』と呼びますね?」


「あ、ああ⋯⋯」



――交渉開始から2分経過。ラビとドクが見守る中、ユウは無事『オサ』からサインを貰うことに成功。ラビは目を輝かせ、ドクはため息をついた。


「うわあ、凄い。本当に忍者からサイン貰っちゃいました。これ、宝物にしますね」


「⋯⋯それくらいで喜ぶとは、お前は何とも変わった奴だな」


「そうですかね? 自分では普通だと思ってますけれど⋯⋯。あ、そうだ。ボスから聞いたんですけれど、忍者ってホントにアニメや漫画みたいな術を使うんですよね? 実際に見せて貰うことって出来ますか?」


「⋯⋯恐らく、お前が想像しているものと、実際の忍術は違う。我らの術は、魔族が使う面妖なものとは異なり、科学の力の結晶だ。古来より忍者は、技術と知恵、そして体術を用いて任務をこなしてきた。例えば、五色米と呼ばれる色を付けた米は、仲間との連絡の暗号に

用いられた。その五色米は現代では、超小型の連絡機へと進化を遂げている」


 オサ曰く、現代の忍者は別に魔術のような特殊な力を用いるのではなく、最先端技術を駆使した超ハイテク集団なのだそうだ。どうやら、ボスの知っていた情報は誤ったものだったらしい。


「火遁の術と呼ばれる術は、超小型の火炎放射器によって火を起こす術のこと。水遁の術や木遁の術も同様だ」


「え、じゃあ分身の術とか隠れ身の術とかもそういうハイテクな感じなんですか!?」


「ああ、そうだ。分身の術は絡繰を用いたモノ。隠れ身の術は光学迷彩を利用して姿を隠す術のことだ。そして、この里もその全域を光学迷彩による結界で隠蔽している。以前魔族を捕縛した際、魔術の仕組みを解析、一部分析した結果も取り入れたため、魔術による探知も完全に不可能になっている。だからこそ、お前達がどうやって里に侵入したのかが気になっているのだが⋯⋯」


「す、凄いですね! 確かに想像していたのとは少し違いましたけれど、滅茶苦茶格好いいじゃないですか!!」


「⋯⋯その感じだと、君に聞いても分からなさそうだな。そこの面妖な格好の女子。どうやってこの里を見つけたか、改めて聞いても?」


「やだ~、ドクちゃんの可愛い服を面妖って言うとか、視力悪いんじゃないの~♡ ⋯⋯まあそれは置いといて、アンタらの里を見つけたのはホントただの偶然よ。ボスが甲賀の地図目掛けてダーツ投げて、刺さった場所に行ったら偶然着いたんだもの。うちのボス、前から思ってたけれど運だけは無駄にいいのよね⋯⋯」



――交渉開始から5分経過。忍術の秘密を知ると同時に、里を見つけた驚くべき経緯について知った。ちなみにこの時、ラビは眠くなってきたみたいでこくりこくりと船を漕いでいた。


「ふむ⋯⋯。心拍数、瞳孔の開き具合から判断するに、嘘はついていないらしい。俄には信じられないが、偶然この里を見つけたというならば確かに光学迷彩が意味を成さないはずだ」


「嘘をついているかどうかも判断出来るんですね⋯⋯! それは機械とかじゃなくて、自分たちで身につけた力なんですか?」


「ああ、こういった技術は古来より受け継いできたものだ」


 東北の地で出会ったご隠居も嘘をついているかどうか判断できたが、同じような感じで判断していたのだろうか。こういう経験からもたらされる技術には、素直に感嘆させられる。


「伝統と最先端の技術、それらを融合した存在こそ忍者というわけですね。勉強になります⋯⋯! でも、それだけに少し残念ですね⋯⋯」


「⋯⋯君は、心から我ら忍びの技術を尊敬しているように思える。その君が、何に対し残念と感じているか、聞かせて欲しいな」


 オサも話して欲しいと言ってくれたので、ボクは自分が思ったことを素直に伝えることにした。


「だって、このままずっと里の外と干渉せず中に閉じこもったままだと、この技術を伝え残すことが出来ないじゃないですか。もし魔族が他の人間を全て支配下に置いてしまったら、待つのはゆったりとした滅びです」


「いや、我ら忍びは魔族などには決して屈さない」


「でも、現にこうしてボク達が偶然里に入れてしまっているように、魔族もいつかこの里を見つけて攻めてきます。そうなれば、いくら忍者が強くても数の暴力には勝てませんよね? 1人ずつ1人ずつ、確実に殺されていくんじゃないかと思います。ボクでも思いつくくらいなので、オサもボク達がここに来た時からその可能性は思いついていたんじゃないですか?」


「⋯⋯⋯⋯」


 ボクの問いかけに、オサは無言で答えた。反論しないということはつまり、オサもそう思っていたのだろう。


「ボクは、忍者の技術と知恵はとても素晴らしいものだと思います。だからこそ、この素晴らしい『宝』をなくさないためにも、ボク達に協力して魔族と戦ってくれませんか? ボク達が力を合わせればきっと、成し遂げることが出来ると思います」


「たった数分前に会ったばかりの小娘に何が分かるか⋯⋯そう言いたいところだが、何故だろう。君の言葉は我々の心を揺さぶる何かがある。それは恐らく、君の言葉が真っ直ぐで嘘偽りがないからだ。私は、君を信じたいとそう思ったよ」


「そ、それじゃあ⋯⋯!」


「ああ、我ら甲賀の里の忍び一同、君達に協力することを誓おう」



――交渉開始から10分経過。ユウはついに忍者の協力を得ることに成功した。ちなみに、ラビはもう完全に居眠りタイムに入り、ドクは暇なので爪の手入れをしていた。この2人、仲間の交渉に全く興味無しである。いや、ある意味信頼している証明と言えるかもしれないが⋯⋯。


「ありがとうございますオサ! ボク、凄く嬉しいです。あ、オサだけじゃなくて他の忍者の方にも挨拶しておかないとですよね」


「いや、その必要はない。我ら忍者は個にして全、全にして個。私が見聞きしたことは既に小型通信機によって皆に伝えられ、皆の同意を得た上で先程の返事をした。私の言葉は、里の総意と思って貰って過言ではない。故に、挨拶の必要はないだろう」


「そうなんですか⋯⋯。それでも、きちんと挨拶はしておきたいです!」


「⋯⋯待て」


 きっと、『サーチ』を使えば全員に挨拶が出来るはずだ。そう思って立ち上がろうとしたところを、オサが服の裾を掴んで止めてきた。


「お、オサ? 急に服掴んだりして、どうしたんです?」


「⋯⋯君は忍術に憧れているのだろう? 折角だから私が少し教えようではないか。他の者への挨拶は、別に必要ないことだ」


「それは嬉しいご提案ですけれど⋯⋯いいんですか? 忍術とかって、簡単に教えて良いものじゃないのでは? あ、里の皆に確認していいよって言ってくださったんですかね?」


「いや、これは私個人の意志だ。⋯⋯ところで、君の名前をまだ聞いていなかったな。今更だが、名前を聞いてもよいか?」


 オサが何のつもりでボクにこんなことを提案してくれたかは正直よく分からない。でも、折角忍術を教えてくれるというのなら拒否をする理由もない。そこで、ボクは改めて元気よく名乗りを上げることにした。


「それでは、改めまして⋯⋯ボクの名前はユウです。これからよろしくお願いしますね、オサ」


「ユウか。よい名だ。⋯⋯我が妻となるには相応しい」


「え、オサ何か言いましたか?」


「いや、何でも無い。こちらこそよろしく頼むぞ、ユウ」


 オサが後半ぼそっと呟いた言葉は、小さくて聞き取ることが出来なかった。後ろでドクが「ええ⋯⋯。何こいつ、記憶をなくす前キャバ嬢でもやってたの? 堕とすの早くない?」とか言ってるのが気になるけれど、あんまり人聞きの悪いことを言わないで欲しい。


――そして、交渉開始から5時間後。みっちりと忍術指導を受けたボクは、簡単な忍術を使うための道具と、何に使うかよく分からない指輪、そして忍者間で連絡する際使われる小型通信機を渡され、大変満足したのであった。


ユウちゃんくんは今まで書いた中で1番書きやすい主人公。書いててかなり楽しいです。

次回は伊賀の地へれっつらごー!

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