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百鬼夜行は宴で終わる

戦いの後は宴。有名海賊漫画もそう言ってる。


「⋯⋯これがアケディアの本体ねぇ。にわかには信じられないね」


「超ちっちゃ! それに桃色肌とかハデハデじゃん! マジウケる☆」


 捕獲したアケディアを見たラブとアベはそれぞれ異なる反応を示した。疑わしげにじっとアケディアを見つめるラブに、何がそんなにおかしいのか大声で笑うアベ。そんな2人の反応が不服なのか、アケディアはツタで作られたゲージの中で頬を膨らませていた。


 アケディアの処理はアジトに戻ってから決めることについて話すと、2人とも納得してくれた。あとこの場に居る人物で確認が取れていないのはザキだけだが⋯⋯まだ目覚める気配はない。ただ、ラブの見立てでは1時間後には目覚めるだろうとのことだった。


 アジトへ帰るためには、ラビに通信を入れるだけでいい。ただ、帰る前に妖怪たちへの報告はしなければならないだろう。彼らがいなければ、アケディアがここに居ることは分からなかったし、屋敷に入るための時間稼ぎもしてくれた。彼らが居なければきっと、この結果は得られなかったに違いない。


「おお、待っていたぞお前達! 無事帰ってきたと言うことは⋯⋯アケディアは倒せたのか?」


 屋敷から出ると、待ち構えていたらしきぬらりひょんが早速話しかけてきた。アケディアは倒せたわけじゃないけれど、無力化には成功したので実質倒せたようなものだろう。今この場に居るなどと言って変に混乱させるのも申し訳ないので、皆で目配せした後、黙って頷き、肯定の意を示した。


「おお、では、ようやくこの地から脅威が去ったのか! 皆のモノ、喜べ! 今夜は宴だぁ!!」


 ぬらりひょんの声に続き、後方から大きな歓声が沸き上がる。跳び上がる唐傘、舞い踊る火の玉。ぬりかべは互いの身体をぬりぬりと塗り合い喜びを表し、がしゃどくろはカタカタと全身の骨を喜びで震わせる。


「今夜は一晩中宴で盛り上がるつもりだ! ちょうどいい場所に広い屋敷もあるからな。お前達も一緒にどうだ? 一晩くらいなら浮かれても問題ないだろう。勿論、酒も料理もたらふく用意するぞ!」


 『酒』という単語を聞いた瞬間、隣に立つラブの目がキラキラと輝き出したのが分かった。そしてそのキラキラとした目のまま、ボクとトムの方をチラチラと見ている。


 本当はアケディアのこともあるしすぐ帰還した方がいいのだが⋯⋯実のところボクも、妖怪たちの宴には凄く興味がある。


 そこで、ラブと一緒にキラキラ作戦に出ることにした。ボクとラブの視線を受けたトムは、やれやれ⋯⋯と肩をすくめる。ボク達は勝利を確信し、「いえーい!」と思いっきりハイタッチした。


「あはは~、2人とも可愛い~☆」


「勿論、儂らも参加するぞ。ぬらりひょんよ、儂の腹を満足させる量を出してくれること、期待しておるぞ」


 アベとご隠居も宴に参加する意志を示したことで、今回東北の地で戦った仲間たちによる、一夜限りの宴を楽しむことに決まったのであった。


〇〇〇


「⋯⋯あー、あー。盛り上がっているか、お前らぁぁぁ!!」


『いえーい!!』


 DJ小豆洗いのかけ声に合わせ、全員が声を上げる。火の玉がミラーボールの代わりに七色に輝き、屋敷内に急ピッチで作った会場を照らす。和風な屋敷と、和風な妖怪たちには合わない、何ともハデハデしい宴である。正直、予想していた宴とはかなり違うが、盛り上がっているのは事実なので細かいことは気にしない。今はただ、会場の空気に任せて一緒に盛り上がるだけだ!


――聞いてくれ、みちのくラップ! 

東北みちのく百鬼夜行、誰もがおののく百鬼夜行! 

異界から魔族が襲来、痛いから魔術は辛い⋯⋯。

助けてくれと何度も叫んだ、すると任せてくれとアンタら来たんだ! 

怠惰の化身のねぐら向かうと、戦いだ仮面の奴や部下と! 

そして掴んだ勝利の美酒、やっと叶ったぜ俺らのwish!!


『『『いえーーーい!!』』』


 会場のボルテージは最高潮だ。妖怪達のテンションもMAXだが、それはボクらも同じである。ラブは現地の妖怪、なまはげたちと飲み比べをしているし、トムものっぺらぼうのお姉さんにお酌をしてもらって嬉しそうだ。アベは1つ目小僧と一緒にスマホで写真を撮っているし、ご隠居はその小さな身体のどこにそんなに入るのかと驚くぐらい大量の料理を平らげて満足そうにお腹をさすっている。


 皆の楽しそうな様子を見ながら会場をふらふらと歩いていると、端の方でひっそりと佇んでいるザキを見つけた。目が覚めた彼女もこの宴に参加しているのだが、どうも周りに比べイマイチ盛り上がっていないように感じる。


「ザキさ~ん、そんなところに居ないで、こっち来て一緒に盛り上がりましょうよ~!」


「ひぅ!? あ、ユウさんでしたか⋯⋯。いや、私はいいです⋯⋯。私はちょっと妖怪に怖がられているみたいですし、こういう空気はあんまり得意じゃないので⋯⋯」


「そんな辛気くさいこと言わないで、ぱぁ~ってはじけちゃいましょ。ぱぁーって!」


「ユウさん何か少し変⋯⋯って、お酒臭!? あ、あなた酔ってますよね!?」


「酔ってないれすよ~だ!」


 ザキは何を言っているのだろうか⋯⋯? ボクは記憶がないから分からないけれどたぶん未成年だし、お酒が飲めるわけがない。確かにさっき、ラブに無理矢理何か飲まされた気もするけれど、水だって言ってたし。


頭もちょっ~っとぼーっとするけれど、これは会場の空気に当てられているだけだから何も問題ない。


「いや、絶対酔ってますよね? 足下覚束ないじゃないですか⋯⋯ってひゃう!?」


「むにむに。うわ~、ザキさん意外におっぱい大きい~」


「きゅ、急に胸を揉むとか変態ですか死にたいんですか殺します死んでくださいごめんなさ⋯⋯むぐぅ!?」


「うるさい」


 ザキが急にぶつぶつ言いだして五月蠅いので、口で塞ぐことにした。ついでに、口の中に含んでいたお水も流し込む。


 そのまま10秒ほどそうしていただろうか。顔を真っ赤にしたザキはふらふら~っと床に倒れてしまった。どうやら、まだ体調が戻っていなかったようだ。悪いことをした⋯⋯。


「トムさんのところに、運ばないと~」


 倒れてしまったザキを横抱きに抱え、ふらつく足取りでトムの元へと運ぶ。そして、そんな2人の様子を会場の隅に置かれたゲージの中で見ていたアケディアは、ユウには2度と抵抗しないようにしようと心に誓ったのであった。


このキスへの躊躇いのなさ、やはり勇者か⋯⋯。

次回、温泉回。

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