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怠惰魔将アケディア その4

今回で対アケディアは終了です。まあ、ほとんど戦闘シーンはありませんが⋯⋯。

「それで、ユウよ。穴を空けたはよいが、アケディアはどこにいるのじゃ。一見それらしき姿は見えぬぞ」


「ちょ、ちょっと待ってくださいね。どうやらこちらに気付かれないよう動き回っているらしく、情報が上書きされまくっていて⋯⋯あ、いた。あそこです!」


 アケディアの動きが止まったのは、天井のあたりだった。その方向を人差し指で指すと同時に、牽制にと火の魔術を放つ。すると、「ぴぃっ!?」という悲鳴のような声と共に何か小さいのが天井から落ちてきた。


「おいおい、まさかこれがアケディアの本体か!? こりゃあまた随分と⋯⋯ちっこいな」


 トムがそう驚くのも無理はないだろう。ボク達の目の前に現れたアケディアの本体は、手の中にすっぽりと収まってしまうほど小さかった。


その小ささに対し服装はかなり過激で、大事なところしか覆われていないような露出の激しいものだ。肌の色も分身体とは異なり桃色で、眼球は真っ黒に染まっている。大きさを無視すれば、アケディアがサキュバスだということも納得の出で立ちである。


「おおっと、逃がすわけにはいかねぇなぁ」


 逃走しようとしたアケディアを、トムが生やした植物で拘束する。本体を見つけられて動揺しているせいか、それともザキの魔術耐性がきいているのか、アケディアは目に涙を浮かべるだけで拘束から抜け出す様子はなかった。


 それにしても⋯⋯いくら敵とはいえ、アケディアのこの際どい衣装に植物が巻き付いているのは、何だかいけないものを見ている気分になる。⋯⋯まさか、トムが趣味でこんなことをやっているわけじゃないよね?


「⋯⋯ユウ、そのじとっとした目を止めてくれよ。おじさんもちょっと絵面がヤバいかなぁとは思っていたんだ」


「ホントかのう。男は狼じゃからな。お主も気をつけろよ、ユウ」


「ご隠居まで変なことを言わないでくれよい!」


 ⋯⋯さて。無事アケディアの本体を捕まえることが出来たわけだが、問題はこの後である。アケディアは何やらぎゃあぎゃあと騒いでいるが、口をツタで塞がれているので何を言っているか分からない。


 今後の対処を決めるためにも、ひとまず口の拘束だけでも解いて貰うことにした。


「ぷはぁ! お前ら、こんなことしてただで済むと思うなよ! ぼくが本気出せばお前らなんてメッタメタのぎちょぎっちょんだからなぁ!」


「ふむ、その本気とやらはいつ見せてくれるのかのう」


「ぐぬぬ⋯⋯。くそう、こんな拘束簡単に解けるはずなのに、力が入らない。何をしたんだ、お前!」


 涙目でトムを睨み付けるアケディア。そんなアケディアに、トムは気絶しているザキをひょいと持ち上げて見せた。


「ぴぃっ!? そ、そいつはやめろぉ。ほ、ホント真面目に止めてくださいお願いしますぅ⋯⋯」


「こりゃあだいぶトラウマを植え付けられたみたいだな。ま、分身体とはいえあんなにボコスカ撃たれたら当然か。実は今お前を縛り付けている植物はザキの髪の毛を養分として生長させた特別製だ。効果があるかは眉唾だったが、その様子じゃばっちりみたいだな」


「な、なんだよそれぇ⋯⋯。そいつ、ホント反則だろぉ。ぼくは魔術特化の魔族なんだぞ? そんな奴がいるなんて聞いてないよぉ⋯⋯」


 がっくりとうなだれるアケディアからは、既に戦意は感じられない。その様子を見ていると何だか少し可愛そうになってくるほどだ。


「トムさん、これどうしましょう。なんか、もう戦意もないみたいですしこのまま捕まえて持って帰りますか?」


「うーん、そうだなぁ。⋯⋯剥製にするとか、どう?」


「え、なんですかその提案。どん引きですよ」


「ははは、冗談だよ、冗談」


 トムの笑えないジョークは置いておいて、アケディアの対処は考えなければならない。選択肢は大まかに分けて2つだ。今ここで殺すか、捕虜としてアジトへ連れ帰るか。


「⋯⋯言っておくけれど、ぼくを殺すのはたぶんそこの黒ずくめのヤバい奴じゃないと無理だよ。ぼくの身体、凄い固いから」


「じゃあザキを起こすかぁ」


「だからそいつは本当に止めて! ぼくはもう戦う意志はないし、魔王の情報でもなんでも喋るからさぁ!!」


 『魔王の情報』。確かにそれはとても魅力的だ。ザキを起こすため頬を叩こうとしていたトムの手も止まった。


 しかし、相手は魔族である。その言葉をすぐに信用することはできない。ご隠居は鋭い視線でアケディアを睨み付け、その本心を問い詰める。


「その言葉⋯⋯儂らが素直に信じると思うか? よりによって魔王直属の配下であるお主が、本気で魔王の情報を売ると?」


「本気だよ! ボクはただ、ぐうたら眠って平和な暮らしをしたいだけなんだ。魔王に仕えていたのも、そっちの方が楽な暮らしが出来ると思っただけ! 別に忠義とかはそんなに感じていないんだよ。だからお願い、殺すのだけは勘弁して⋯⋯」


 必死にそう懇願するアケディアは、嘘をついているようには見えなかった。もし、アケディアが本当に魔王について何か情報をくれるなら、それは『リターナー』にとってはかなり大きな収穫になる。


「とりあえず、本当に殺せないかだけは確かめておきましょう」


「え」


 土の魔術で剣を作り、アケディアの首目掛け振り下ろすも、全くアケディアに傷をつけることは出来なかった。それどころか、剣の方がボロボロに砕けてしまう始末である。


「どうやら、アケディアを殺すのが難しいって話は本当のようですね⋯⋯」


「⋯⋯この中だと1番まともだと思っていた人間がいきなり斬りかかってきた。こいつら、皆頭どうかしているの?」


 アケディアがぼそっとそう呟いたのが聞こえて思わず眉をひそめる。何とも失礼な話だ。そもそも魔族に頭がどうかしているとか言われたくない。


「うーん、こいつは皆の意見を聞くためにも一旦このままで持ち帰った方がいいかもなぁ」


「儂もそれに賛成じゃ。この状態だとろくに抵抗もできぬじゃろうしな」


 そんなわけで、捕獲したアケディアはひとまずアジトへと持ち帰って皆の意見も聞くこととなった。そして、この瞬間アケディアとの長いようで短い、終わってみればかなり呆気ない戦いは、本当に幕を閉じたのであった。


次回、戦いの後といえばやっぱり⋯⋯?

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