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怠惰魔将アケディア その3


「や、やった⋯⋯! やりましたね、ザキさん!」


 予想していた形とは随分違うが、それでも勝利は勝利だ。折角なので喜びを分かち合いたいとザキの傍まで駆け寄ったが、ザキは険しい表情でアケディアの死体を見つめていた。


「⋯⋯おかしい。これ、たぶん本体じゃありません。死臭がしませんから」


「え!? そ、それってどういう⋯⋯」


「ユウさんは、なんか相手の情報が分かるような力があるんじゃないですか? それでちょっとこの死体を見てみてください⋯⋯。私の勘が正しければ、アケディアはまだ死んでいません」


 ザキに言われた通り、アケディアの死体に『サーチ』をかけてみる。すると、そこに表示されたのは、『偽装死体:爆弾付き』の文字だった。


「ザキさん、下がって!」


 咄嗟にザキを突き飛ばすが、その直後起こった爆発は予想以上に大きく、視界の端でザキが気を失っているのが見えた。


 そして、ボクはもっと重傷だ。爆発をかなり至近距離で受けてしまったせいでまた服は弾け飛び、右手もどこかへと飛んで行ってしまった。


 これは痛い。凄く痛い。泣きそうだけれど、死ぬよりはマシだ。幸い、あまりに痛すぎて意識を失う余裕すらなかったのでラブに治療を求めることは出来た。


「おいユウ、あんた大丈夫かい!?」


「だ、大丈夫です。右腕が吹っ飛んで目がちょっと見えないですが、まだ生きています。ボクより先にザキさんの治療を⋯⋯」


「それは普通重傷って言うんだよ馬鹿! あと⋯⋯ザキの奴の治療は後だ。あいつは魔術に耐性があるせいであたしの治癒魔術も効かねぇんだよ。幸い軽い火傷くらいだから、トムおじの薬草で治るだろうさ。ただ、問題があるとするならば⋯⋯」


 ちらりと、ラブはアケディアの死体があった場所を見る。そう、先程の死体が偽物ならば、どこかに本体が居るはずなのだ。


『⋯⋯お、驚いたよ。まさかボクの分身体をああも簡単に破壊してくれるなんてね。でも、厄介な黒服女は気絶してくれた。ここから先は⋯⋯もう容赦しないよ!』


 その声が聞こえてきたのは、ちょうどラブの治療を受け右腕が再生した時だった。そして、まるで重力が反転したかのように身体が天井の方へ引き寄せられる。


 上、右、左、下⋯⋯縦横無尽に身体が引っ張られ、その度に床や天井、壁に打ちつけられる。その間も、アケディアらしき声はどこからか聞こえてくる。


『このままお前達をシェイクして、バターにしてやる! そしてあま~いホットケーキを作るんだ。もうすぐおやつの時間⋯⋯その前に終わらせる!』


 この重力攻撃を止めさせるには、本体の居場所を早く突き止めて倒すしかない。しかし、こうも振り回されると『サーチ』をしようにもディスプレイの文字を読むことすら出来ない。


「おい、皆こっちに集まるんだ! ザキの身体に掴まればあの攻撃の影響は受けない!」


 その声は、薬草でザキを治療していたトムのものだった。確かに、トムだけは床から動くことなく治療を続けられている。どうやら、ザキの魔術耐性は気絶していても健在らしい。


 しかし⋯⋯ザキの方へと近づこうにも、身体が言うことを聞いてくれない。その上連続して襲い来る重力変化に段々吐き気も感じてきた。


「う、うっぷ⋯⋯」


 このままでは、部屋全体に吐瀉物を撒き散らしてしまう。そうなってしまえば、精神的におしまいだ。先程腕を飛ばされた時以上の絶望感を感じる。


「おいユウ、しっかりしろ! アンタ、何か分からないけれど敵の情報が分かるんだろ? その力で本体の場所を探り出してくれ!」


 肩を強く叩かれると同時に、吐き気がすうっと収まる。吹き飛ばされながらも傍に来ていたラブが、治療を施してくれたのだ。


「うちの風で、ザキっちの方に送るよ! ユウっち、後は頼んだ!」


 そして、アベの陰陽術が起こした風が、ボクをザキの元まで運んでくれる。勢いよく飛び込んできたボクを、しっかりと受け止めてくれたのはトムだ。


「トムさん、ありがとう!」


「これくらいどうってことないさ。さあ、奴の場所を突き止めてくれ!」


 ザキの傍に居れば、重力攻撃の影響は受けない。ボクは『サーチ』を発動させ、そしてアケディアの本体が居る場所を突き止めた。


「アケディアの本体が居る場所は⋯⋯あっちです!」


 アケディアの本体が居る場所、それはこの部屋のさらに奥だ。しかし、この部屋にはもうどこにも扉はない。ボクも咄嗟に指を指したはいいが、その方向に扉がないもので困惑してしまった。


「うう、確かにあっちに居るはずなのに、これじゃあどうやって行けばいいか⋯⋯」


「ふむ。扉がないならば、作ればいいのではないか?」


 そう言って、ボクが指さした方向へと掌を向けるのは、飛行能力があるおかげで重力攻撃の影響をそこまで受けていなかったご隠居だ。ご隠居の掌から放たれた謎の光線は壁に穴を空け、その先の空間が露わになる。


「ありがとうございます、ご隠居さん! あそこに、アケディアの本体が居る⋯⋯トムさん、行きますよ!」


「おう!」


 トムと2人でザキを抱え、駆け足で壁に空いた穴へと向かう。隣でふわふわと浮くご隠居も一緒に、ボク達は本当の最終決戦の場所へと乗り込んだのであった。


次回でアケディア戦、決着です!

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