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怠惰魔将アケディア その2

タイトルこれでいいのか正直迷いました。対アケディア戦、終盤です!

「⋯⋯わぁ。これは驚いた。まさか、あれを防げる人間がいるなんてね。でも、これならどうかな?」


 アケディアがパチンと指を鳴らすと、3匹の猿が空中に現れる。その猿はそれぞれ、耳、目、口を押さえていた。


「これは『猿夢』⋯⋯。それぞれ聴覚、視覚、声を奪うぼくの操る夢の使い魔たちだよ。感覚や声を奪われてもなお、ぼくに立ち向かうことは出来るかな?」


 3匹の猿のうち、耳を押さえていた猿が「うっきー!」と大声で鳴き叫ぶ。すると、次の瞬間周りの音が一切聞こえなくなった。どうやら、アケディアが先程言った通り、この猿たちには感覚を奪う力があるらしい。


 『サーチ』を使ってあの猿たちの力を調べてみると、アケディアに対して使った時よりはすぐに情報を得ることが出来た。あの猿は3匹のうちいずれか1匹だけしかその力を使うことは出来ないみたいだ。


 すぐにそのことを皆に伝えようと口を開いたが、聴覚が奪われているということはボクの声は皆に伝わらない。皆もボクが何かを伝えようとしていることは察したみたいだが、頭に?マークを浮かべていた。


「⋯⋯なるほど。それじゃあ、あの猿を殺してしまえばいいんですね?」


 そんな中、何故か1人だけ納得した様子で動き出すザキ。しかも、聴覚を奪われているはずなのにザキの声だけははっきりと聞こえた。


 そして、その声が聞こえた時には既に、ザキは猿目掛け発砲していた。パンパンパン、と乾いた銃声も声と同様問題なく聞こえてくる。


 聴覚を奪ったことですぐには行動できないと思っていたのだろう。猿目掛け銃弾が飛んでくる様子を見たアケディアは驚いて目を丸くしていたが、人差し指を曲げて対処しようとする。おそらくラブを天井に打ちつけた時と同じ力を使ったのであろう。ザキの銃弾はあの時と同様指を曲げた方向に誘導されてしまう⋯⋯ボクはそう思ったし、きっとアケディアもそう思っていたはずだ。


 しかし、ザキの銃弾は全く軌道を変えることなく、真っ直ぐに幻の猿たちを貫き、存在ごと霧散させた。しかも銃弾はその勢いを弱めることなく、真っ直ぐにアケディアの方へと迫る。


「え、ちょ、待っ⋯⋯」


 慌てた様子で壁を産み出したり、必死に指を動かして銃弾を逸らそうとするアケディアだったが、ザキの銃弾が止まることはない。そして、3発放たれた銃弾のうち1つが、アケディアの肩に命中し、アケディアは乗っていたクッションから床へと落とされた。


 戦闘が始まってから1度も動かなかったアケディア。その不動が、たった3発の銃弾によって崩された瞬間であった。


「いったい、何がどうなって⋯⋯あ、普通に声が聞こえる!」


 猿が消えたせいか、ザキ以外の声も聞こえるようになっていた。そのことに喜んでいると、隣に立っていたラブが安心した様子でほっと息を吐いた。


「いや~、一時はどうなるかと思ったが、ザキが来たならもう安心だな。アケディアにとっては⋯⋯いや、魔族にとってザキは『天敵』とも呼べる存在だからな」


「ザキさんが魔族にとっての『天敵』⋯⋯? それっていったいどういうこと何ですか?」


 そうやってラブと2人で話している間も、ザキは一切視線を背けることなく真っ直ぐアケディアの方を見据え、一歩ずつ着実に近づいていた。その少し後方では、ご隠居も掌を広げていつでも援護出来る体勢を整えている。


「な、なんなのさお前。どうしてぼくの魔術が全く効かないの!?」


「⋯⋯私をこうしたのは、あなたたちじゃないですか。なんでそんなこと言うんですあり得ません許せない⋯⋯早く死んでくださいよぉーー!!!」


 突然興奮し叫び出すザキに、「ひぃっ!」と怯えた声を上げるアケディア。その様子は、先程まで余裕でこちらを追い詰めていた魔族と同じとはとても思えなかった。


「ザキは、2ヶ月ほど前にあたしたちが魔族の実験施設から助け出したんだ。その施設を管理していた魔族がかなりヤバい奴で⋯⋯人間同士殺し合いをさせ、その様子をゲーム感覚で眺めて楽しむような奴だったらしい。そして、その殺し合いゲームから唯一生き残ったのが、あいつだ」


「⋯⋯なるほど」


 その事実を聞いて、ボクは何となくザキがあんな性格になってしまった経緯を理解したような気がした。しかし、ラブの語るザキの凄まじい過去は、まだこれで終わりではなかった。


「あたしたちが施設に到着した時⋯⋯既に魔族は皆殺しにされていたよ。そこには、ザキだけがただ1人、怯えた様子で銃を構えてこっちを睨み付けていた。⋯⋯たぶん、行ったのがあたしじゃなかったら、皆殺されてたなぁ。実際、何発か撃たれて死にかけたし」


「た、たった1人で魔族を皆殺しって⋯⋯どうやったんですか?」


「正直、未だによく分からない。ただ、分かっているのは⋯⋯あいつは、異世界に行って特別な力を身につけたわけでもなく、自分の置かれた環境の中で進化して特殊な力を身につけたということだ。魔族の罪が産みだした罰。地球にやって来た魔族という病原菌を殺すために産み出された特効薬。それがあいつ⋯⋯『ザキ』だ」


 そう言って、アケディアに拳銃を突きつけるザキを見つめるラブの瞳には、少し恐れが混じっているようにも感じられた。


 パァン! という乾いた銃声と、アケディアの悲鳴が部屋の中に木霊する。その悲鳴が途切れた頃、ラブは噛みしめるようにその事実を告げた。


「ザキは⋯⋯魔術に対する完全な耐性がある。どんな恐ろしい魔術も、ザキの前にかかれば無力化されてしまうんだ。そして、たぶんまだそれ以外にも力を秘めている。全く⋯⋯味方ながら、恐ろしい奴だよ。覚えときな。あいつこそ、『リターナー』の最高戦力だ」


 こうして、あんなに圧倒的な力でボク達を翻弄していたアケディアは⋯⋯より理不尽で恐ろしい力を前にして、呆気なく敗れ去ってしまったのであった。


次回、無事アケディアを打ち倒したかに思えたユウ達であったが⋯⋯?

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