表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
23/84

邂逅、そして到着

「無駄に長い階段だったなぁ。あれ、あそこに居るのは⋯⋯」


 階段を登りきると、少し開けた場所に出た。そして、そこには既に見覚えのある金髪が居た。ボクが気付くと同時に向こうもこっちに気付いたようで、ブンブンと元気よく手を振ってくる。


「おんみょ~ん☆ ユウっちさっきぶり! なんかちょっとイメチェンした?」


「アベさん、無事で何よりです。実は、服は魔族との戦闘で破れてしまって⋯⋯仕方なく魔族が着てた服を貰ってきたんです」


「わ~お、大変だったね! うちもケントとかいう魔族と戦ったけれど、結局最初名乗った時くらいしか喋ってくれないつまらない系男子で萎え萎えだったよ~。顔は良かったんだけれど、やっぱ喋りが上手くないとだよね~」


 アベと2人でそんな会話をしていると、小さく足音が聞こえてきた。徐々にその音はこっちに近づいてくる。もしかして新たな敵がやって来たのかと、アベと2人で戦闘態勢を

取るが、突然現れた扉の中から姿を現したのは、トムだった。


「お!? おいおい、おじさんをあんま驚かせないでくれよ。心臓が飛び出すかと思ったじゃないか」


「それはこっちの台詞だよトムおじ~! 敵がきたかと思ってきんちょーしたんだからね!」


「それは悪かったなぁ。ところでユウ、お前服着替えたのか? 前の奴より全然センスいいじゃねぇか」


「なんだか皆この服について触れますよね。⋯⋯え、ちょっと待ってください前のよりセンスいいってどういうことですか?」


 このコスプレみたいな体操服とブルマの方がお気に入りの歌舞伎Tよりセンスがいいとはたとえ冗談だとしても聞き流せない。トムさんを問い詰めようとしたその時、またしても扉が現れ、今度はラブが姿を現した。


「おいおい、全員集合してるじゃないか。ところでユウはなんでそんな変な格好してるんだい?」


「ラブさん、やっぱりそう思いますよね! この服変ですよね!!」


「まあ、前の服よりはいいんじゃないかい? あれクソダサかったし」


「え⋯⋯?」


 ⋯⋯うん、たぶん皆はファッションに疎いんだ。そう思おう。実際ラブさんなんかいつもシスター服だし、トムさんはおじさんだ。ラビは「凄いかっこいいのだ!」って褒めてくれてたし。


 と、とにかく、こうして皆無事に合流できたのは素直に嬉しい。あとは、ここに居ないご隠居がどこにいるかだけれど⋯⋯。


「フフフ、どうやら皆サン揃ったみたいデスね」


 聞こえてきたのは、ご隠居の声ではなく、特徴的なカタコトの喋り口調。その声に、その場に居た全員が一斉に反応する。


 声が聞こえてきたのは、上の方からだった。天井を見ると、コウモリのように天井から逆さまでぶら下がっているメビウスが居た。


 メビウスは、ボク達の視線を受けても動じることはなく、むしろパチパチパチとこちらに対し拍手を送ってきた。


「いやー、皆サン予想以上に強いですね。まさかアイツらが全員倒されてしまうとは流石に予想外でした」


「ちょっと、カタコトさん! ご隠居はどうしたのさ!」


 我慢できないといった様子でそう問い詰めたのは、アベである。ボクも、メビウスと戦っていたはずのご隠居がこの場に居ないことは気になっていた。あの強いご隠居がまさかやられたとは思いにくいが、何が起こるか分からないのが魔族との戦いである。それは、ボクも先程のナナホシとの戦いで学んだ。


「あー、あの和服ロリさんデスか? ちょっと厄介そうだったので撒いてきましタ。まあ、本気で戦えばワタシが負けることはないと思いマスが、怪我はしたく無いデスからネ」


 ご隠居が倒されたわけではないと知り、ほっと息をつくアベ。しかし、あのご隠居から逃げたというだけでもこのメビウスの実力は相当なものではないだろうか。現に、トムとラブはますます警戒を強め臨戦態勢をとっていた。


「おー、そんなピリピリしないでくだサーイ! 流石に、アナタたち全員を相手にすればワタシやられてしまいマース。分身体を飛ばして戦いの様子を見てましたカラ、アナタたちの実力は把握しているつもりデス」


「⋯⋯じゃあなんだい。ご隠居から逃げたみたいに、あたしたちからも逃げる気かい? 悪いが、こっちはアンタを逃がすつもりはないよッ」


 ドンッ! と地面を蹴ったラブが、メビウスめがけ跳躍する。高速で撃ち出された拳を、メビウスはギリギリのところで回避していた。


「わーお、デンジャラスですね。やっぱりワタシでは無理です。逃げの一手デスね~」


「だから、逃がさないって⋯⋯」


「イヤ? アナタたちはワタシを逃がすしかありませんよ? なぜなら⋯⋯」


 逃げるメビウスを追撃しようとしたラブの腕が、突然空中ではじける。突然の事態に目を丸くするラブを尻目に、メビウスは空中に穴を空けて脱出の準備を終えていた。そして、その身体が完全に穴の中へと消える寸前、このような言葉を残していった。


「ワタシよりもヤバいワタシのマスターが、既に来てますから。それじゃ、後は任せまシタ⋯⋯アケディア様」


「⋯⋯上司を露払いに使うとか、相変わらず君は自由だよねぇ。まあ、1カ所に集めてくれたことは感謝するよ。手間が少なくて済む」


 その声は、背後から突然聞こえてきた。先程まで何も気配を感じていなかったはずの場所に、圧倒的な存在感を放ってそれはそこに居た。


 フワフワと宙に浮かぶ大きなクッションの上にだらりと寝そべり、ふわぁと眠たげに目をこする姿は、とてもじゃないが恐ろしい存在には見えない。それどころか、長い袖を余らせて着ているせいで完全に手が隠れている様子は、可愛らしさすら感じるくらいだ。


 しかし、メビウスが名前を言わずとも、そのオーラだけでボクは理解出来た。彼女こそがこの屋敷の主にして大罪七将の1人⋯⋯『怠惰魔将』アケディアであることを。


「ふわ~。それじゃあ、面倒くさいから君たち、なるべく早く死んでね? ぼくは早くお昼寝の続きがしたいんだよ」



〇〇〇〇〇



 時は、ユウたちがアケディアと遭遇する少し前に遡る。屋敷の外では、妖怪達が魔族相手に必死に戦っていたが、妖怪たちにはそもそも戦いが得手ではない者も多い上に、相手は鍛え上げられた護衛戦士たち。徐々に、戦況は悪い方へと傾いていた。


「くっ! このままじゃ皆がやられるのも時間の問題か。⋯⋯ん、あれは?」


 一反木綿に乗りながら上空で戦場を見守っていたぬらりひょんは、屋敷へと近づいてくる妙な乗り物に気が付いた。


 あれは確か、魔力を原動力とした車、『魔道車』と呼ばれる代物だったはずだ。つまり、あれに乗っているのは魔族に他ならない。この状況においてさらに魔族がやって来たことで、ぬらりひょんは絶望に似た感情を覚えた。


「最早、ここまでか⋯⋯。すまぬ、アベ、ご隠居。俺たちに出来るのはここまでみたいだ」


 敗北を悟り、目を閉じるぬらりひょん。しかし、そんな彼の耳に聞こえてきたのは、魔族の声ではなく、乾いた2つの銃声であった。


 魔術や妖術が行き交う戦場にて聞き覚えのない銃声に違和感を覚えたぬらりひょんが目を開けると、そこに映ったのは、魔道車から転がり落ちてくる二体の魔族の死体。しかも、そのどちらも脳天を撃ち抜かれて絶命していた。


 そして、続いて後部座席のドアが吹き飛ばされ、そこからぬらりと何かが姿を現す。黒色の衣服で全身を覆ったそれは、遠目で見ると人間のように見えた。


「おい、なんでこんなところに人間が!?」


「それよりもこいつ、銃を持ってやがるぞ。こいつがこの2人を殺したのか!?」


「どっちみち人間なら殺すだけだ。くたばりやがれぇ!!」


 戦場に現れた異質な存在に気付いたのはぬらりひょんだけではなく、魔族もまたその存在に気付き、一瞬で仕留めるべく魔術の集中砲火を浴びせる。


「わ、私を殺すんですか。それならば⋯⋯皆、死んでください」


 ぼそっと呟かれたその声は、小さすぎて誰にも聞かれることはなかった。それに、もし聞こえたとしても理解することは出来なかっただろう。


 魔術の集中砲火を浴びたにも関わらず、無傷でその中から飛び出したソレが、パン! と一発空に向け銃弾を放つ。その次の瞬間、周りに居た魔族は全員頭を吹き飛ばされて死んでいた。


「死にたくない、死にたくない⋯⋯! だから、私を殺そうとする人は皆殺すしかない。ごめんなさい。でも、あなたたちが先に殺そうとしたんですから、許してくださいね⋯⋯『死の報復(デス・リベンジ)』」


 ぬらりひょんは、一体何が起こったのか理解が出来なかった。しかし、確かなのはあれだけたくさん居た魔族が、今はほとんど残っていないということだ。


 ひとまず落ち着いて状況を整理しようと、一反木綿の上に置いた茶碗に手を伸ばそうとしたぬらりひょんは、こめかみに突きつけられる冷たい感触に冷や汗を流した。


 そこに居たのは、先程眼下で謎の蹂躙劇を行った謎の黒い人物であった。胸の膨らみから、女性であることは分かるが、顔はフードを被っているせいで良く見えない。


 その謎の人物は、ぬらりひょんに銃口を突きつけながら、こう尋ねた。


「あなたは⋯⋯私を殺しますか?」


「こ、殺さない! むしろ同胞を助けてくれて感謝しているくらいだ!」


 ぬらりひょんは半ば反射的にその問いかけに答えた。それと同時に、銃口がぬらりひょんから離れる。


「そうですか⋯⋯。まあ、あなたは人間じゃないみたいですけれど、悪い匂いはしませんし、嘘もついてないみたいです。今は、その言葉を信用することにします」


 そう言って、謎の黒い人物は去って行く。一反木綿を飛び降り、向かう先は屋敷の中だ。あの中にはアベ達が潜入している。本来ならばあんな怪しい人物は引き留めるべきなのだろうが、ぬらりひょんには彼女を引き留める勇気はなかったのであった。


次回、アケディアの恐ろしい力が明らかに⋯⋯! そして、ようやく到着したザキと、現在迷子中のご隠居は戦いに間に合うのか!?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ