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元聖女は拳を掲げる

昨日は投稿休んですみませんでした! ちょっと寝不足でして⋯⋯。また休むことももしかしたらあるかもしれませんが、その時は「あ、こいつ寝ているな」と思ってください。ただなるべくそうはならないよう頑張ります!

「ちょ、ホントもうやめろよ。近づくなこの変態!!」


「むっふっふ! 心地よい罵声でございますな。もっと罵ってくれてよろしいですぞ!」


 全裸の魔族、マルボロに追いかけられ、必死の形相で逃げ続けるラブ。かれこれ一時間近くこの追いかけっこは続いている。


 普段は男勝りな言動が目立つラブだが、こういった変態行為には人一倍耐性がなかった。その理由は、彼女の過去にある。



――『リターナー』における貴重な癒やし手、ラブ。彼女の本名は、『(ひじり)愛羅(あいら)』という。


 彼女が元々居たこちらの世界から異世界へと召還されたのは、5年前のこと。当時23歳だった彼女は、バリバリに働いている現役OLであった。


 ラブが巻き込まれたのは、聖女を召還するという儀式。本来、ラブは聖女としてもてはやされる存在となるはずだったのだが⋯⋯どういうわけか、召還されたのはラブ以外にもう1人居た。


 そのもう1人は、見るからにラブよりも若く、そして可愛らしい女性であった。ラブを召還した国の王子は、一目でもう1人の女性の方に惚れ、そして⋯⋯ラブは偽物の聖女とみなされ、国を追い出されてしまった。


 何も分からないまま異世界に召還されたかと思えば、偽物と罵られ追放されたラブは、それはもう荒れた。それまでたしなむ程度に飲んでいた酒を毎日浴びるように飲むようになり、タバコも吸い始めた。


 しかし、そんな生活を続けていくうちにラブは自分の身体のある変化に気付く。いくらお酒を飲んでも全く酔うことがないのだ。しかも、八つ当たりでそこらのごろつきと喧嘩した時に出来た傷も、次の日には綺麗さっぱりなくなっていた。


 ちょうどその頃、ラブは反乱軍が結成されたという噂を聞いた。重税を課す国に反発した民が、王族を倒さんと反旗を翻したのだ。


 実は、国が税金を上げた理由の1つに、ラブの代わりに聖女になった女性が王子に対し高価な装飾品や食事をねだりまくった結果国庫が圧迫されたことが原因だったりする。


 そんな事情は一切知らないラブであったが、自分を追い出したことは未だに根に持っていたので、噂を聞くなり即革命軍に加入することを決めた。


 ラブは、いつの間にか身につけていた治癒魔術と、ごろつきとやり合って身につけた喧嘩殺法を用い、革命軍の前線に立ち戦い始めた。


 そしてある日、王家の所持する図書館を占領し、そこに置かれた資料を読んだことで初めて、「あれ、もしかしてあたし本物の聖女じゃね?」ということに気が付いたのだ。


 その日以来ラブは、本物の聖女である自分を追放した国への意趣返しの意味も込め、シスター服を身に纏い、自ら『聖女ラブ』と名乗ってますます暴れ回った。返り血を洗い流すのが面倒で、髪を赤く染めたのもこの時だ。


 革命軍もまた、『聖女』という強力なカードを手に入れたことでさらに力を付けた。この時には既に革命軍はかなり大きな組織と化しており、国民のほとんどが革命軍の味方になっていた。


 なにせ、革命軍には本物の『聖女』がいるのだ。実際に怪我や病気を治してもらったものも多く、ラブが聖女であることを疑う者は居なかった。


 一方、ようやくここにきて焦りを感じたのは、国王たちである。贅沢続きですっかり肥えて醜くなってしまった偽聖女を問い詰めるも、ヒステリックに泣きわめくばかりでろくに会話も出来ない。王子もすっかり偽聖女の言いなりとなって使い物にならず、破滅の時はすぐそこまで迫っていた。


 そして、ついにその日はやって来た。革命軍の先頭に立ち、真っ赤な髪を振り乱しながら拳を掲げる聖女、ラブ。その勇ましい姿に続かんとばかりになだれ込む革命軍の戦士たちによって、王族と偽聖女は城を追い出された。ラブがこの世界にやって来てから約3年。革命がなされた瞬間であった。


 当然、新しい国には新しいリーダーが必要だ。誰もが、その新しいリーダーとしてラブを望んだ。実際ラブもまんざらではなく、また革命軍のリーダー的存在であった男性とも良い感じになっていたので、彼と結婚してこの世界に骨を埋めるのも良いかなぁなどと呑気に考えていた。


 しかし、そんなラブを待ち受けたのは非情な運命。この世界の神は、もう聖女の役目は済んだとばかりにラブを元の世界に送り返してしまった。


 勿論、ラブは荒れた。それはもう滅茶苦茶に荒れた。神を敬う立場でありながら、何度も神へ中指を立て罵りまくった。


 そこからは、そう難しいことではない。革命軍として異世界で暴れ回ったラブが、こちらの世界の状況を知り放っておけるはずはなかった。それに、ムシャクシャしていたので魔族でも何でもいいからとにかくぶん殴りたい気分だったのだ。迷わず『リターナー』に加入した。


 ⋯⋯ちなみに、聖女の力を使うには1つ条件がある。それは、『清らかな存在であること』だ。分かりやすく言い換えれば、『処女であること』である。


 異世界に召還される前は仕事が恋人であり、異世界に召還されてからも気になる相手はいたが聖女としての力を振るうため一切そういうことはしてこなかったラブ。現在28歳。聖女としての力を振るい続ける彼女は未だに処女。男性経験は0に等しかった。


「ぐすっ、もう、ホント勘弁してよぉ⋯⋯」


 よって、ラブがいきなりあったばかりの魔族に全裸を見せつけられ、泣きそうになっているのも仕方が無いことだろう。男性のアソコなど、幼い頃父と一緒に風呂に入った時以来見たことがない。それをよりによってこんな変態のモノで記憶を上書きされてしまった。攻撃は全く受けていないが、ラブの心は折れそうになっていた。


 もしこれがマルボロの策略だとしたら、彼は相当恐ろしい策士である。しかし、彼はただ自分の局部を見せつけたいだけの変態魔族だ。最低である。


「むっふっふ。どうやら追いかけっこは終わりのようですな。では、吾輩の熱い抱擁を受け止めてくださいませ~!!」


 そう叫び、へたり込むラブに向かい全裸でダイブするマルボロ。ラブは、そんなマルボロを見ないように目を瞑りながら、拳に魔力を溜め込んでいた。


「ぐすっ、うう⋯⋯! いい加減にしろよこのド変態がぁぁーー!!!」


 振り上げた拳は、マルボロの股間にクリティカルヒットする。それと同時に、ラブの拳から膨大な魔力が放出される。


 ラブが扱うのは、治癒魔術と神聖魔術。本来なら攻撃にはほとんど使えないそれを、ラブは独自に進化させていた。今回使ったのは、過剰なエネルギーを送り込む『回復超過(オーバーヒール)』。重症患者に使うならば問題はないが、健康な人間や魔族に使えば、過剰なエネルギーにより肥大した身体は風船のようにふくれあがり、そして⋯⋯。


――パァン!!


 ⋯⋯耐えきれず、破裂する。そして、それは先程ラブに触れられたマルボロも例外ではなく、股間を中心に膨れあがり、見事に爆発四散した。ただ、魔力の保有量が多いせいか、上半身は未だ残っていた。


「む、むっふっふ。こ、この痛みは新体験ですぞ。死ぬ前にこんな体験が出来た吾輩は、幸せ者だぁぁぁぁ!!!」


「いい加減黙れ変態」


 股間を破裂させられてもなお顔を赤らませ興奮するマルボロに心底恐怖しつつ、ラブは残った上半身を蹴り飛ばした。


「はぁ⋯⋯。なんだか凄い疲れた。ちょっと一服してから皆と合流するかね」


 ラブは、スカートのスリットからタバコを取り出し、火を付ける。口から吐き出された煙は、ゆらゆらと漂いながら階段の方に向かっていた


タバコを吸う女性ってかっこいいですよね。

次回はトムおじさんです。

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