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僕らの日常を取り戻せ!~元転生者たちは世界を救う~  作者: 赤葉忍
第一章:元勇者と個性的な仲間たち
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失われた記憶

しばらくは毎日投稿⋯⋯できればいいなぁ。


「うひぃ!? り、リズ、腕に抱えているのはいったい誰なんですか~!? 初対面の人間です恥ずかしいですこっち見ないでください殺しますよごめんなさいぃぃーー!!」


「この黒髪の可愛らしい女の子の名前は『ザキ』といって、わたくしの仲間ですわ。さっきバンバン銃を撃っていたのはこの子ですの。こう見えてとても強いんですのよ」


 アジトにお姫様抱っこで運ばれている途中、ザキと呼ばれる少女と合流した。確かに、ビクビクして顔を隠そうとしている様子は、小動物みたいでとても戦えるようには見えない。


 しかし、その手にはまだ煙を上げている銃をしっかりと握っていて、リズの言葉が嘘じゃないことを証明していた。


「わ、私の紹介なんていいですから早く帰りましょうよぉ。今は混乱しているから大丈夫ですけれど、すぐに他の奴らが襲ってきますよ。このままじゃ確実に死んじゃいます⋯⋯うう、ごめんなさい」


「確かにザキの言うとおりですわね。それじゃあ『ラビ』に信号を送ることにしますわ」


 リズは、優雅な姿勢を崩さずにスカートを少し捲り、そこからキラキラと輝く宝石を取り出した。それをボクを片腕で抱えたままやったのだから、お嬢様然とした見た目の割に力があるみたいだ。


 その時ちらりとリズの太ももが見えた。その玉のように傷1つ無い白い肌は、まるで陶器のようで、つい見とれてしまう。


 そしてリズは、取り出した宝石を床に置くと、それを力強く踏みつけた。躊躇なく宝石を踏み砕いたことにも驚いたが、もっと驚いたのはその砕けた宝石を中心に、魔方陣のようなものが浮かび上がったことだ。


「リズさん凄いです! 魔法が使えるんですか!?」


「あら? わたくしは貴女も使えるものだと思っていましたけれど。だって貴女の身体からも魔力が⋯⋯」


『お、反応がきたのだ! リズ、無事人間の救助は出来たのだ?』


「⋯⋯この話は後にしましょうか。ええ、ラビ。無事任務達成ですわ。入り口を開けてくださいまし!」


『了解したのだ! ゲートオープン!!』


 甲高い子供のような声がリズに答えると同時に、魔方陣が浮かび上がっていた場所にぽっかりと人1人入れるくらいの穴が空いた。その穴には、梯子がかかっていて下に降りることが出来るようになっているみたいだ。


「じゃあ私が先に行きますね。ごめんなさい、ごめんなさい。でも、早く安心したいんです死にたくないんです許してくださいぃぃぃ⋯⋯」


 穴が空くとほぼ同時に、早口で謝りながら猛スピードでザキが梯子を降りていく。あの子はなんというか⋯⋯かなり変わった子みたいだ。


「それでは、わたくしたちも降りましょうか。落ちないように、しっかりと掴まっていてくださいまし」


「は、はい!」


 にこっと優しく微笑みかけられ、つい顔が赤くなるのを感じる。うう、同じ女の子どうしなのになんでこんなにドキドキするんだろうか。きっと、リズの行動がいちいち格好良いのがいけないんだ。


 梯子は、思ったより長くなかった。途中で上の穴がふさがった時はビックリしたけれど、リズが全く動じていなかったのでたぶんそういう仕様なんだろう。


 梯子の先にあったのは、木製のドアだ。ここでようやく、リズはボクをお姫様抱っこから解放してくれた。⋯⋯ちょっぴり残念に思ったのは秘密だ。


「どうやら、ザキはもう中に入ったみたいですわね。このドアの先には、わたくしたちの仲間がいますわ。皆少し個性的な方々ですが、悪い人達ではありませんので、怯えないでくださいね」


「は、はい。分かりました」


 先程のザキを見る限り、少しという言葉をどこまで信用していいものか分からない。ただ、ここまで来て帰ると言うわけにも、帰るあてもないのでボクは覚悟を決めてリズがドアに手をかける様子をじっと見ていた。


 リズがドアを開ける。直後、中から飛び出して来た水色の物体にボクは押し倒されていた。


「リズ、お帰りなのだ! ⋯⋯ってあれ? お前リズじゃないのだ。いったい誰なのだ?」


 水色の物体かと思ったのは、水色の髪をツインテールに結んだ小さな女の子だった。歓迎のダイブをリズにするはずが間違えてしまい、非力なボクではその突進の力に耐えることが出来なかったことがこの状況を産みだしたらしい。なんという悲劇だ。全身が痛い。


 しかし、この子⋯⋯どう見ても角が生えている。角は悪魔族の特徴だ。見た目はとても可愛らしいが、魔族となるとつい警戒してしまう。


「ラビの角が気になりますの? その子は確かに悪魔族⋯⋯つまり人間ではなく魔族ですが、わたくしたちの大事な仲間ですわ。怖がらなくても大丈夫です」


「そうなのだ。ラビは人間大好き! 悪い魔族じゃないのだ!!」


 無邪気に笑うラビは確かにとても悪い奴とは思えない。そうだ、ボクをあんなところに縛ったのは魔族だけれど、だからといって全員が悪い奴とは限らないじゃないか。


 ⋯⋯あれ? そもそもボクはあそこに連れて行かれて何をされたんだ?


「リズが連れてきたということはお前が今回の救出対象だった人間だな? 名前はなんというのだ?」


「そういえば、まだ名前を聞いてませんでしたわね。よろしければ、貴女のお名前を教えて頂けませんか?」


「あ、はい。そういえばまだ言ってなかったですね。ボクの、名前は⋯⋯」


 その時、ボクは自分の名前すら思い出せないことに今になってようやく気が付いた。おかしい。さっきから、何か大事な記憶がいっぱい抜け落ちている気がする。


 いったい、ボクは何をされたのだろうか。なかなか名前を言わないボクを心配そうに見つめるラビ。そして、リズはそんなボクの様子から何かを悟ったようだった。


「⋯⋯なるほど。だいたい理解しましたわ。詳しい話は、中に入ってからにしましょう。『ボス』も待っていることですし」


 記憶がない不安で足が動かないボクを、リズはそっと自らの肩を貸して歩かせてくれる。そんなボク達を見ながら、後ろ歩きでドアをくぐるラビ。


 ボクは、肩から伝わる温もりに優しさと勇気を貰いつつ、ようやくドアをくぐることが出来たのだった。


サイレントタイトル修正しました。これで閲覧数伸びたらいいなぁ

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