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おもてなしは『笑顔』で

今回も少し短いですが、更新です。自分のことを異常だと思っていない異常者好き。

「うちの同胞の仇を討ってくれたこと、感謝するぞ、ご隠居。出来れば俺も戦いたかったが⋯⋯」


「お主は戦うのは得意ではないじゃろ、ぬらりひょん。お主はこれだけの数の妖怪を集めてくれた。それだけで充分じゃ」


 キャメルとの戦いは無事終わり、ご隠居とぬらりひょんの年齢詐称コンビがそのような会話をしているのが聞こえてくる。


 それにしても、先程のアベとご隠居は凄かった。魔術とはまた違う、独自の術で敵を終始翻弄していたアベに、実質ほぼ無傷で魔族相手に完全勝利してみせたご隠居。個々の実力も確かなものだったが、2人のコンビネーションが本当に素晴らしかった。


「刺客が送られてきたってことは、敵にこちらの居場所がバレてるってことだ。早いとこ敵さんに会いに行った方がいいとあたしは思うよ」


「ラブの言うとおりじゃな。おいぬらりひょん。妖怪達にすぐ出発するように伝えろ」


「おう、準備は既に出来ている。百鬼夜行の始まりだ!」




――天狗と人魂が空を舞い、小さな妖怪はがしゃどくろの背に乗って、どんてんがらがらどんがらり。妖怪達の大行進。


 ぬらりひょんを先頭に、百鬼に混じり異色を放つ人間達も、一反木綿の背に乗って、風に揺られてゆらゆらり。


 目指すは魔族の大屋敷。怠惰を名乗る不届き者をこの地から追い出すため、百鬼夜行は続いていく。どんてんがらがらどんがらり。



〇〇〇〇



 一反木綿の背中に乗ること約1時間と少し。一反木綿酔いとかいう謎の病気を発症しそうになったその時、ようやく目的地である怠惰魔将アケディアのアジト⋯⋯というか住処が見えた。


「あれがアケディアの居る場所ですか? なんていうか⋯⋯凄く和風ですね」


 そこにあったのは、昔話とかで出てきそうな、純和風なお屋敷であった。かなり大きい上に、庭までしっかりと作り込まれている。


 魔族は人間のことを下等種族とみなして貶しているため、今ではこういう和風な建築物を見ることはまずない。そのほとんどが、魔族によって破壊されてしまった。リズから聞いた話によると、京都の清水寺とかも今はなくなっているという。


 だからこそ、魔王直属の部下の1人であるアケディアがこのような建物の中に住んでいるのはかなり意外であり、その真意が読めない分不気味でもある。


本当にここにアケディアが居るのか疑いたくなるが、庭に武装した魔族⋯⋯それも、アケディアと同じ種族であるサキュバスが大勢いることから、ここにアケディアが居るのはどうやら間違いないらしい。


「見張りは俺たちが引き受ける。だから、お前達はその隙に屋敷の中に侵入してくれ」


 その言葉通り、ぬらりひょん達は一斉に屋敷の中に飛び込むと、思い思いに場を掻き乱し注意を引きつけてくれた。豆腐小僧は豆腐を魔族目掛け投げ、唐傘お化けは強制相合い傘を実行し、小豆洗いは勝手に庭でDJを始める⋯⋯って、あの妖怪いつもDJしてるな。


「おいユウ、何をぼーっとしてるんだい。今のうちに屋敷の中に入るよ」


「あ、はい」


 妖怪達に気を取られていたらラブに怒られてしまった。敵だけではなく味方の注意すら引くとは、これが日本の誇る妖怪の実力か⋯⋯!


 屋敷に潜入するメンバーは、ボクとラブにトム、そしてアベとご隠居の5人だ。少し人数が心許ない気もするけれど、建物の中という狭い場所なら少数精鋭の方が動きやすい。


 屋敷の入り口の扉には、鍵はかかってなかった。これは相手が不用心なだけか、それとも鍵などかける必要がないという余裕の表れか。どちらにせよ、入る以外に選択肢のないボク達は、その扉をガラガラと開け、中へと足を踏み入れた。


「イラッシャイマセ~。人間のミナサマ、ワタシのマスター、アケディア様のお屋敷に、ようこそお越しくださいマシタ。精一杯カンゲイ、致しマスね?」


 屋敷の中へ入ったボク達を迎えたのは、妙なカタコト口調で話す魔族だった。しかも、何故か着物を身に纏い、三つ指ついて丁寧に出迎えの挨拶をしてくる。


 お辞儀から頭を上げた魔族の顔には、笑い顔の仮面が被せられていて、着物とミスマッチであった。そんな、全体的にちぐはぐな印象を与える魔族は、正座の姿勢のままで名乗りを上げた。


「ワタシの名前は、『メビウス』。この屋敷の設計者兼、アケディア様の秘書デース。ワタシ、人間の文化、特に日本の文化大好きネ。伝説の妖怪を、この目で見られたこと、とても感動していマース」


「⋯⋯どの口で人間の文化が大好きなんてほざいてんだい。あんたら魔族に、ここ数年で人間がどれだけ虐げられたと思ってるのさ」


「オー、確かに、魔族は人間を支配し、奴隷にしてマス。それは否定しまセーン。全体で見れば、魔族は人間の敵、それ間違いアリマセン。でも、個で見れば人間が好きな魔族もいるということ、どうか理解して欲しいデス。かくあるワタシも、その1人ネ」


 ひらひらと着物の袖を振って、人間が好きだとアピールするメビウス。しかし、この場に居る誰1人として、その言葉を信用している者は居なかった。


「そうか。ではメビウスよ、1つ尋ねよう。お主の顔に付けているその仮面⋯⋯素材は何じゃ?」


「え、見れば分かりませんカ? 人間の皮で作ったんですヨ。ワタシ、人間大好きですカラ、人間になりたいって気持ちが抑えられなくテ⋯⋯。この仮面も屋敷も、自分で考えて作ったんデス。どうデス? 素敵だと思いませんカ?」


 メビウスの顔に被された、笑顔の仮面。その正体は、人間の皮を剥ぎ、無理矢理笑顔の表情を作らせて出来た狂気の産物であった。これで人間が好きだと言うのだから、どうかしている。⋯⋯いや、実際に人間のことは好きなのかもしれない。だからこそ、相容れない。理解出来ない。


 今、ボクは改めて魔族が人間の敵だということを認識したのであった。


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