陰陽師コンビVSキャメル
ギャル語ってこんなんでいいのか謎。
「食らえ、『シガーレイ』!」
先に攻撃を仕掛けたのは、アケディアの部下、キャメルだった。さっき妖怪たちを燃やした光線を、再びアベたちに目掛け放つ。
「単調じゃなぁ。もう少し変わった攻撃はできんのか。同じ味ばかりで飽きてしまうわい」
そんな光線をバクンと手に付いた口で捕食するのは、ご隠居だ。キャメルの攻撃は全く効かないばかりか、飽きたとすら言われてしまう始末。
これに怒ったのはキャメルである。額に青筋を浮かべ、勢いよく突っ込んでくる。その勢いのまま放った蹴りは、同じように回し蹴りを放ったご隠居によって相殺されてしまった。
「な!? 何故下等種族が我ら魔族に力で対抗できるのだ!」
「儂は正確には人間ではないからのう。どっちかといえばそちらよりの存在じゃ」
ご隠居の動きに合わせ、ひらりひらりと華麗に舞う、鮮やかな着物の袖。一枚の絵画のような完成された光景が、そこには合った。
そんな空間をぶちこわすかのように聞こえてくるのは、現代の陰陽師、その個性的すぎる術の詠唱だった。
「おんみょ~ん☆ いくぜ、アベちゃん式マジヤバ陰陽術その一! 『悲炎』!」
アベは手を目に近づけ、泣いている風なジェスチャーをとる。すると、大きな雫が手から地面にこぼれ落ち、『ぴえん』と言いそうな泣き顔の染みをつくる。
その直後、キャメルの足下にも同じような染みが浮かび上がり、そこから炎で出来た茨のツルが出てくる。その炎のツルは、キャメルを縛り付け、その身体を縛ると同時に燃やし始める。
「くそ、なんだこの邪魔な炎は! 人間の分際で魔術を使うとは生意気な⋯⋯!」
「魔術じゃなくて、陰陽五行説に基づくオリジナルの陰陽術だっつーの! 続けて食らえ~、ぴえん通り越しての、マジヤバ陰陽術その二! 『波音』!」
アベは、顔の前でピースサインを作り、「カシャッ!」とスマホで自撮りをする。そのシャッター音は波紋のように空中に伝わり、キャメルに到達する時には全方向から襲い来る音の嵐に変化していた。
「んがぁぁぁ!? こ、このカシャカシャいう音を早く止めろぉ!」
「やーめない☆ だって君らも散々うちら人間のそういう声を無視してきたっしょ? これはその報いと思って受け止めてよね。そしてご隠居、後は任せた!」
「うむ、任された。じゃが、儂の力だけでは足りぬ。補助を頼むぞ、アベ」
「もっちろ~ん! 陰陽五行サポート術式の原理は、火は力、土は防御、水は速度、木は精神で金は魔力! 陽と陰がつかさどるもの、それすなわちバフデバフぅ! いくよ~、『ひのえ、みずのえ』で火力速度テン上げからの、『かのと、つちのと』で魔力防御テン下げ! いけいけおんみょ~ん☆」
アベの足下に浮かび上がる五芒星。その中で輝くのは、『丙・壬・辛・己』の4つの文字。その4つの文字が五芒星から離れて宙を舞い、ご隠居とキャメルの身体にぶつかり消えていく。
「くっ、身体が重い⋯⋯! また妙な術を使ったのか。しかし、関係ない! 圧倒的な力の暴力で楽に蹴散らしてやる!」
キャメルは顔の前で腕を交差させ、両手をばっと広げる。そして、両手合わせ10本の指、それぞれの先端から細く鋭い光線を放った。
「これぞ我が奥義『フィンガーレイ』! 今度の光線は先程より鋭いぞぉ!?」
アベによって弱体化されたにも関わらず、キャメルの光線の威力は明らかに強くなっていた。光線を掌で捕食しようとしたご隠居も、あまりの鋭さに捕食しきれず掌を貫かれてしまっている。
そんな様子を見たキャメルは、勝ち誇った様子で高笑いした。
「ハハハハハ! 先程はちとビビったが、本気を出せば容易いものよ! さあ、楽に死ねると思うなよ? まずは指を1つずつ焼き払ってやる。その次は両目だ。そして耳、鼻、口⋯⋯。感覚器官をゆっくりと少しずつ奪ってやる。最後は、その美しい布だけはぎ取って真っ裸にひん剥いて、真っ黒焦げの石炭にしてくれるわぁ!!」
その言葉通り、キャメルは光線でご隠居を次々と撃ち抜いていく。ご隠居は戦意を喪失してしまったのか、されるがままキャメルに蹂躙されていた。
目、口、耳、鼻⋯⋯。次々と光線で撃ち抜かれ、肉が焼ける嫌な臭いが辺りに漂う。そして、加虐的な笑みを浮かべたキャメルが乱暴にご隠居の着物をはぎ取ったその時⋯⋯初めて、キャメルはその異変に気が付いた。
「こ、これは⋯⋯水の塊!? 本体は一体どこにいった!?」
「⋯⋯幻に溺れパシャパシャと、もがく様子は滑稽じゃったぞ」
その声は、キャメルの背後から聞こえてくる。振り向いた時には、既に幻は解かれ、少し離れた場所でアベが元気よくピースサインをしていた。
「マジヤバ陰陽術その三、『幻惑夜行水』! 見事大成功~☆」
そして、ご隠居はキャメルに向け容赦なくその牙を剥く。先程キャメルが無理矢理はいだ着物、その内側に無数の口が出現し、キャメルを文字通り丸呑みしようとしていた。
「こんな⋯⋯こんな馬鹿げたことが起こるはずがぁ!?」
「⋯⋯冥土の土産に教えてやろう。儂の真の名は『バク』。夢も現も、あらゆるモノを喰らい尽くす妖怪じゃ。儂の胃の中で、せいぜい覚めない夢を見るがよい」
――バクンッ!
ご隠居がキャメルを捕食した音が響き、その瞬間キャメルはこの世から姿を消した。
見事妖怪たちの仇を討ち、2人だけで魔族を退治してみせたアベとご隠居に、妖怪たちの感謝と歓喜の声が降り注いだのであった。
次回、いよいよ怠惰魔将アケディアのねぐらにカチコミです!




