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百鬼夜行と現れた刺客

昨日は投稿できませんでしたが、なるべく毎日投稿できるようがんばります!

「よう、お前達遅かったな。待ちくたびれたぞ?」


 恐山についたボク達を出迎えたのは、一見何の変哲も無い普通の少年だった。短パンに白のタンクトップ、そして膝に絆創膏と、やや古い気もするがまさに少年といった出で立ちで怪しいところはない。


 強いて怪しいところを挙げるならば、こんな場所に居ることと、タンクトップの正面に『ひょん』と平仮名で書かれていることくらいだ。なんだあのダサいタンクトップ。ボクの歌舞伎Tを見習って貰いたい。


「ひょんきち、おんみょ~ん☆ 出迎えさんきゅっ! 皆、この子が妖怪達の長、ぬらりひょんのひょんきちだよ~」


「アベが紹介した通り、俺がぬらりひょんだ。この恐山の主にして妖怪達の長を務めている。此度はよろしく頼むぞ、人間共」


 軽い感じで紹介されたけれど、思ったよりも重要人物⋯⋯いや、妖怪で驚いた。ぬらりひょんという名称だけは何となく聞いたことがある。


 しかし、なんかぬらりひょんってもっとこう⋯⋯見た目的にもぬらりとした感じの老人じゃなかっただろうか。少なくとも、こんな膝に絆創膏を貼っているようなわんぱく小僧ではなかったはずだ。


「おい、お主それは流石に若作りしすぎであろう。どうしてそんな姿をとっておるのだ」


「へっ! お前にだけは言われたくないね、この平安ロリ。老人の姿より可愛いショタの方が万人受けするだろがい!」


 見た目と実年齢の差が激しい2人が何やら言い合っている。そして、そんな喧噪につられてか、いつの間にか周りに妖怪達が集まってきていた。


「うわっ!? これ、人魂ですよね? 触ったら熱いのかな⋯⋯?」


「やめときな、ユウ。そんなんで火傷してもあたしは治療してやんないからね」


「小豆洗いにぬりかべに、一反木綿にすねこすり⋯⋯有名どころからマイナーな妖怪まで、こりゃ妖怪のバーゲンセールだなぁ」


「せめて百鬼夜行と言って欲しいところだ。実際は九十九体で、百には一及ばないが、そこに居る婆ロリを含めたらちょうど百。俺ら(あやかし)百鬼夜行隊、既に魔族の糞野郎共をぶちのめす準備は出来てるぜ?」


 ぬらりひょんが拳を掲げるのに合わせ、妖怪達が「おーー!!」と鬨の声を上げる。九十九体と聞くと少なく思えるが、大小入り交じった妖怪達が一斉に蠢くと、恐山そのものが動いたような錯覚すら覚える。


 巨大な骸骨の妖怪、がしゃどくろがガシャガシャと音を立てる隣では、首の長い妖怪、ろくろ首が見事なヘッドバンキングを披露して脳震盪を起こしている。一反木綿の集団は、空中で互いに絡まって地面に落ち、小豆洗いは小豆をシャカシャカと研ぎながらDJのまねごとをしていた。


 ⋯⋯なんだかこの集団全然統率取れてない気がするけれど本当に大丈夫だろうか。おおまかに見れば壮観だが、細かいところに注目するとかなり粗が目立つ。


 そして、ボクがそんな余計な心配をしてしまったせいだろうか。突然、空からキラリと光るモノが落ちてきたかと思うと、轟音と共に山肌に衝突。その勢いで多くの妖怪が宙に巻き上げられた。


「⋯⋯あー、今ので九体ほど死んだ。百鬼夜行じゃなくて九十一夜行だね、こりゃ」


 ぬらりひょんがぼやく声が聞こえる。先程まで騒いでいた妖怪達は、別の意味で騒ぎ、逃げ惑う。


 ボクは、踏ん張っていたおかげでなんとか吹き飛ばされずに済んだ。ラブやトム、そしてアベとご隠居も無事みたいだ。


 皆が視線を向けるのは、先程謎の物体が落ちてきた場所。土煙を掻き分け、その中から姿を現したのは、瞳の下に涙のタトゥーが入っているのが特徴的な魔族であった。


「愚かな下等種族よ、ひれ伏せ! 我の名は『キャメル』。アケディア様の命により、お前達を始末しにきた。アケディア様の安眠を妨げる存在など、意味はない。皆殺しだ!」


 キャメルと名乗った魔族が手を広げると、そこから無数の光線が放たれる。光線は恐山の木々を焼き、そして光線を食らった妖怪達は断末魔の悲鳴を上げて燃え尽きる。


「きさまぁ⋯⋯! これ以上同胞を殺すならば、容赦はしないぞ!」


 その光景に怒り狂ったのはぬらりひょんだ。そして、その怒りに呼応するように、巨大な骸骨の妖怪、がしゃどくろがその拳をキャメル目掛け振り下ろす。


「ふん、デカいだけの雑魚など、ただの的よ」


 しかし、がしゃどくろの拳は、再び放たれた光線によって粉々に砕け散ってしまった。その痛みと恐怖に、ガシャガシャと骨を鳴らして震えるがしゃどくろに、キャメルは無慈悲にも追撃をしようと掌を向ける。


「⋯⋯そこまでにせぬか、若いの。儂らがいつまでも黙って見ていると思うなよ?」


 そんなキャメルの前に立ち塞がったのは、ご隠居だった。だが、キャメルはだからどうしたと言わんばかりに鼻で笑うと、ご隠居目掛けて光線を放つ。


――バクンッ


「う~ん、あまり美味しくないのう。やはり魔族の使う術は味が悪い」


「⋯⋯貴様、何をした?」


 キャメルは理解出来ていないようだが、ボクはしっかりと見た。ご隠居がどうやってあの光線を防いだのかを。


 キャメルの掌から光線が放たれた時、ご隠居の掌ががぱぁっと開き、その中に光線が吸い込まれていったのだ。


 そして、ご隠居がキャメルの相手をしている間、ボク達もただぼーっとしていた訳ではない。傷ついた妖怪達を回収し、ラブの治療魔術で怪我を治していた。


「だいたいの奴らの怪我は治したけれど、既に死んでる奴はどうしようもない。すまないね」


「ううん、ラブっちは悪くないよ。悪いのは⋯⋯あいつ!」


 そう言って、アベはきっ! とキャメルを睨み付ける。その隣に、ご隠居がふわりと降り立った。


「ここは儂らに任せて貰おう。同胞の仇を討たねばならぬからな」


「うちとご隠居のコンビなら、スーパー無敵だし! キャメルだかキャラメルだかしらないけれど、ボコってやるかんね!」


「1度我の光線を受け止めたからといって、生意気な⋯⋯! 即刻処刑してやる!」


 そう言って、にらみ合う3人。任せておけと言われたので今は手出しはしないが、2人がピンチになったら迷わず飛び出す準備は出来ている。


 陰陽師コンビと怠惰魔将の刺客の戦いが、今始まろうとしていた。


次回は初の本格的戦闘描写。不安だけれどたのしみですね~。

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