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ギャルと陰キャは相性が悪い

ちなみにタイトルの陰キャはザキちゃんのことですね。

「改めまして、うちが陰陽師のアベ! みんなであけでぃをぶっ飛ばそうね!」


 キャハッ☆ と顔の前でピースサインを決めるアベ。あけでぃとはもしかして『怠惰魔将』アケディアのことを言っているんだろうか。事前に説明を受けて抱いていた陰陽師に対するイメージと本人とのギャップが激しすぎて未だに頭が追い付かない。


「お主、そんなでも一応今回の作戦におけるりぃだぁなのじゃから、もう少しきちっとせぬか。それになんじゃその恰好は! 戦いには正装で臨むのが常識じゃろ!」


「え~? これでも一応まじめにやってるつもりなんだよ? それにぃ、正装ってあれ着るのめんどいし、こっちの方が可愛いじゃん? ご隠居はこの格好、嫌い?」

「な!? べ、別に嫌いとは言っておらぬわ。ただ、肌を見せすぎというか⋯⋯」


「だいじょーぶ! 見られて困るよーなスタイルしてないから☆ あとでホットケーキ作ってあげるから、今回は許して~!」


「ほっとけぃきじゃと!? ⋯⋯こ、今回だけじゃからな」


 目の前で仲の良いやり取りを繰り広げるアベとご隠居。そんな二人を見ていた全員が、ご隠居はちょろいという認識をした瞬間であった。おそらく、同じようなやり取りを何度かやっているであろう空気を感じる。


「仲がいいのはよろしいことだけれどさ、そろそろ本題に入ろうじゃないのさ。アケディアのアジトを見つけたんだろ? 一体どこにあるんだい?」


「ラブの言うことももっともじゃな。アケディアのアジトに関しては、既に複数の妖怪が見張りについておる。儂の術を使えば今すぐにでも転移して乗り込むことが可能じゃ。しかしその前に⋯⋯」


「その前に、恐山に集まっている妖怪ちゃんたちにも会っておかナイトプール! 皆やる気マンマングローブだからマジはっちゃける五秒前って感じだし~?」


「え、何語ですかそれ⋯⋯? まさか呪いの言葉⋯⋯!? し、死にたくないのでそれ以上喋らないでくださいお願いします⋯⋯!」


 ギャル特有の言葉遣いに困惑したのか、止める間もなくノータイムでザキはアベ目掛け発砲した。しかしその銃弾は、アベに届く前にご隠居がかざした手の中に吸い込まれるようにして消えていく。


 銃弾をかき消したご隠居は、敵意の籠った瞳でザキを睨みつける。その迫力はすさまじく、直接敵意を受けているわけではないにも関わらず放たれるプレッシャーで変な汗をかいてしまうほどだった。


「おい、お主⋯⋯なぜアベに発砲したのじゃ。しかもこの弾丸、普通ではないな? 強い呪いが込められておる。儂じゃから平気であったが、それ以外の者がこれを受けておったら即死じゃったろう」


「ひぃぃぃ!? なな、なんで私の銃弾食らって平気なんですか信じられない怖いです殺さないでくださいもう死んでくださいお願いしますごめんなさいぃぃ!!」


 錯乱した様子のザキは、ご隠居の問いかけも無視して再び発砲しようと銃を構える。そんなザキの頭を殴って無理やり気絶させたのは、隣に立っていたラブであった。


「おっと、ごめんねご隠居。こいつ、悪い奴じゃないんだけれど時々暴走しちまうことがあるんだよ。今のも本気で殺そうとはしてなかったから、許してやってくれないかい?」


「あれで本気で殺そうとしてなかったとはにわかには信じられぬが⋯⋯」


「もしザキが本気なら、直接手を出したあたしが真っ先に殺されてるよ。これくらいで気絶してくれるのは、ある意味こっちのことを少しは信用している証拠だと思うね」


 この一連のやり取りと会話を聞いて、ますますザキという少女が何者かが分からなくなってきた。ラブはこう言っているけれど、正直味方にすら問答無用で発砲するなんてかなり危ない子なのではないかと思う。


「むむむ⋯⋯まあ、今回はラブに免じてそういうことにしておいてやるか。アベ、お主は何か言いたいことはないのか?」


「うちは別に大丈夫だよ! ご隠居が守ってくれたから無傷だし、ザキちゃん可愛いし!」


「容姿は関係ないと思うのじゃが⋯⋯まあ、お主が気にしないと言うならそれでよい。ただ、今回のようなことがまた起こらぬためにも、お互いの能力や出来ることを知っておきたい。ちょうど初対面の娘もおることじゃし、改めて自己紹介でもせぬか?」


「それに関しては異論はないよ。こっちとしても互いの出来ることを把握しておくのは大事だしね」


 そんなわけで、改めてお互いに自己紹介をすることになった。まずは、この中では一番の新入りであるボクからだ。


「えっと⋯⋯ボクはユウっていいます。最近リズに魔術を習っていまして、火の魔術なら宝石を使わずある程度行使することが出来ます。後は、魔力を循環させての身体強化も少しなら出来るようになりました」


「ユウちゃんっていうんだね! リズっちみたいに魔術が使えるんだ、すごーい! 魔術って派手でちょーかっこいいよね! うちも似たようなこと出来るけれど少し地味なんだよ~」


「こら、お主の番はまだ先じゃろ? いちいち反応するでない」


「は~い☆」


 ⋯⋯うん、アベちゃんに褒められて、まんざらでもない自分がいることに気づいた。帰ったらリズにお礼を言っておこう。


「次はあたしの番だね。名前は皆知ってる通り、ラブさ。得意なのは治癒魔術と、神聖魔術だね。ちなみに、神聖魔術っていうのは神に祈りをささげることで一日に一回『奇跡』を起こすことが出来るっていう変わった魔術だよ。ユウも、リズに基本属性とは異なる特殊属性の魔術については教わっているだろう? あれの一種と考えてもらっていいさ」


「一番神を信じてなさそうな奴が神聖魔術の使い手とは、皮肉な話だよなぁ」


「トムおじ、余計なこと言うんじゃないよ。祈りをささげるだけで奇跡をくれるんだからお得なもんじゃないさ」


 どうやら、ラブのシスター衣装は伊達ではなかったらしい。怪我の治療のようなことが出来ることは知っていたけれど、神聖魔術とかいういかにも神に仕える人だけが使えそうな魔術が使えることは知らなかった。新鮮な発見である。


「あ、次おっさんの番かい? 呼び名はトム。そして、出来ることだけれど⋯⋯いやー、俺は他の子たちと比べたらたいしたことないよ。植物の生長を早めたり品種改良できたりするくらいさ。あとは、料理も一応自慢できるかな」


「おいユウ、トムおじはこんなこと言ってるけれど、このおっさんアジトの食料問題1人で解決してるからね? 何気に1番やべー奴だよ」


「うちのとこにも定期的に野菜分けて貰ってちょー助かってるし! マジ尊敬だよね~」


 謙遜するトムさんだが、周囲の評価はかなり高い。確かに、助けた人達の食料とかどうなっているんだろうと疑問に思ったことはあったので、その疑問がようやく解消された瞬間であった。


「んじゃ、次はうちの番だね! うちはごぎょー説? に基づいた陰陽術に、それの派生術を使えるよ! 派生術は簡単に説明すると、えーっと⋯⋯ゲームのバフデバフ的な? 兎に角、直接戦ったりするよりサポートとかの方が得意な感じ!」


「儂は、色んなことが出来るな。転移術に変身術、そしてあらゆるモノの捕食⋯⋯初代のアベに作られた式神故に、高性能なのじゃ!」


 東北組も、なかなかに心強い能力だ。特に、ご隠居は聞いたところ万能な感じがあってかなり頼りになりそうである。


「ザキに関しては⋯⋯まあ、起きてからでも聞いてやってくれ。話すかどうかは分からないけれどね」


 そして、1番の不安要素であるザキに関しては、その力の詳細が明かされることはなかった。ラブ曰く、「だいたいは理解しているが詳しいことに関しては知らない」そうだ。どうやら、ザキは仲間にすら自分の力をしっかりと明かしていないらしい。⋯⋯本当にこの人、信用出来るのか?


「まあ兎に角、お互い理解も深まったし、恐山に行って妖怪ちゃんと合流しよう~! きっと首を長くして皆のこと待ってるし!」


「実際ろくろ首もおるからのう⋯⋯」


 アベにそう促され、ボク達はBARを後にして新たな目的地、恐山へと向かうこととなる。


「あ、やべ。ザキ置いていってるじゃん」


「「「「あ」」」」


 皆がその事実に気付いた時には、既にご隠居の術によって恐山に転移した後であった。


ザキ「あれ、皆どこ⋯⋯?」

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