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僕らの日常を取り戻せ!~元転生者たちは世界を救う~  作者: 赤葉忍
第一章:元勇者と個性的な仲間たち
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元復讐者とのショッピング(3日目)

「ユウ、そんなところで何をしているのだ?」


「あ、ラビ⋯⋯。実は、ドクさんが起きてこないんだよ」


 ドクと過ごす最後の日。今日も朝からショッピングに付き合わされるのではないかと思い早めに起きて待っていたが、昼近くになってもドクが部屋から出てこない。どうしたものかと困っていた時に、偶然通りかかったラビに声をかけられた。


「友達が困っているなら手伝わないとな! 吾輩はこのアジト全てを掌握するダンジョンマスター、ドクの部屋を開けるのもお茶の子さいさいなのだ! ⋯⋯でも、ドクに怒られるのは嫌だから吾輩が開けたのは言わないで欲しいのだ」


「もちろんだよラビ。ありがとう!」


 ラビの協力も得て、無事ドクの部屋を開けることが出来た。部屋に入ると、ドクの姿は見当たらない。どこに居るのか探してみると、ベッドの上の布団がこんもりともりあがって人の形を作っている。


「まったく⋯⋯昨日はあんな早くに叩き起こした癖に、自分はこんな遅くまで寝ているとか、ホント自分勝手な人だよね」


 つい愚痴が口から漏れる。その時だ。この勝手な上司にちょっぴり悪戯をしてやろうと思いついたのは。


 悪戯といっても、たいしたことじゃない。布団を一気に引っぺがして、驚かしてやろうという単純なものだ。後で怒られるだろうけれど、それは勝手に部屋に入った時点で決まっていることだし、今更怒られる原因が増えたところで問題じゃない⋯⋯はずだ。


「おそようございますドク! もうすぐお昼です、よ⋯⋯」


 思い切って布団を剥がすと、そこに居たのは全裸のドク。それだけでもビックリだが、まあ寝る時に服を着ない人も居ると聞くし、これはまだいい。


 問題は、ドクそのものだ。ドクの胸には、あるはずの乳房がなく、そして、その股間には⋯⋯ボクにはない、大きな塔がそびえ立っていた。


「⋯⋯お? お、お、お!? おおおお、おち⋯⋯おと、おとおと男!?」


 まさか、これもドクのメイクなのだろうか? いや、寝る時までメイクをしている理由はない。それよりもこの股間の塔、じっと見ているとなんだか懐かしい気分になるような⋯⋯。


「⋯⋯おい、お前。俺の秘密を見たな? ボス以外には誰にも教えてない、俺の秘密をよぉ。てか何股間をまじまじと見てんだこら。変態か!」


 寝起きというだけで説明出来ない程、ドスのきいた低い声で脅しをかけてくるドク。しかしその顔は見慣れた女顔のままなので、なおさら身体とのギャップが激しくて頭が混乱する。


 あと、早く服着てくださいお願いします。そしてボクは変態じゃない!



 ドクは服を着て、ボクはドクの眠っていたベッドの上で正座させられている。こうして服を着たドクを見ると、さっき見たことが夢だったのではないかと疑うくらい、ドクはとても可愛い。しかし、ボクの脳裏には先程見たビッグマグナムがこびりついている。


「おい変態」


「ボクは変態じゃないです!」


「人の部屋に勝手に入り込んで裸を見た奴が変態以外のなんだって言うんだ?」


 ⋯⋯確かに、それを言われるとぐうの音も出ない。しかし、裸を見たのは不可抗力だ。


「出来れば、お前をまた記憶喪失にしたいところだけれど⋯⋯その方法は分からないし、気付かず眠ってたのは俺の落ち度だ。『ドクちゃんは最高に可愛い!』って100回言う刑で許してやる」


「ドクちゃんは最高に可愛い、ドクちゃんは最高に可愛い、ドクちゃんは最高に可愛い⋯⋯」


「五月蠅い! ちょっと黙れ!」


 何たる理不尽。解せぬ。


「あの⋯⋯どうして男なの皆に隠してるんですか?」


「別に隠しているわけじゃねぇよ。ただ⋯⋯男だった時の過去はもう捨てたんだ。今ここに居るのは、超絶可愛いドクちゃんだぞ♡」


 そう言ってポーズを決める時には既に、声色も元のドクのものに戻っていた。声はメイクじゃどうにもならないから、あれは自前なのだろう。


「あの⋯⋯何があったとか、聞いてもいい感じですか?」


「⋯⋯まあ、既に秘密を知られちゃってるわけだし? 特別に教えてやるよ。ドクちゃんの過去」


 ドクは部屋の端から小さなソファを持ってくると、ドサッと乱暴に腰掛ける。そして、タイツを履いた足で正座しているボクをいじりつつ、過去を語り始めた。


「ドクちゃんは元々、この世界で産まれて、異世界に飛ばされた⋯⋯転生者ではなく、転移者ってところね。だけど、飛ばされたのはドクちゃんだけじゃなかった。当時学生だったドクちゃんのクラスメイトも、皆異世界に飛ばされたの」


 リズさんは転生者で、ドクは転移者。その違いは、1回死んだかどうかなのだろう。


「クラスメイトが一緒だったなら、心強いですね」


「何言ってるんだよ、その逆。俺は⋯⋯クラスメイトに蔑まれ、国を追い出された。俺が何の能力も持ってないって理由でさ。んで、見慣れぬ土地に放り出された俺は、奴隷商人に売られ、奴隷として最底辺の暮らしを味わった。その時誓ったんだよ。どんなことがあっても、俺を陥れたクラスメイトに復讐するって。そしてついでに、散々俺を弄んだ魔族の奴らも道連れだ」


 ドクの怒りは相当なものなのだろう。話している内に、声色も一人称も男っぽいものに戻ってしまっていた。だがしかし、ドクはあのメイク術があるはずだ。何故、何も能力を持っていないと思われたのだろうか。


「その顔、メイクがあるのになんで⋯⋯とか思ってるんでしょ? これは復讐を考えていた時に偶然手に入れた力。まあ、そこからは楽勝よね。この女顔を利用して名前も性別も偽り、ちょちょっと誘惑やらなんやらしてやったら、簡単に殺し合ってくれたわ。まあ、何人かは自分の手で殺したけれど。ちなみに、ドクちゃんがこの名前を名乗るようになったのは、初めての殺人で毒を使ったからよ。今でも直接殺す時は毒をよく使うんだから。トムおじのおかげでこのダンジョン内でも簡単に毒草が栽培できて便利なのよね~♡」


「は、はぁ⋯⋯」


 何というか、反応に困る話だ。うっとりとした手つきでポケットから毒薬の入っているであろう瓶を取り出すドクは、男だと分かっていても妙な色気がある。


「えっと⋯⋯じゃあ、復讐はもう終わっているんですね」


「そ。でも復讐を終えて元の世界に帰ってきたら、腐れ魔族がのさばっているじゃない? ボス達の誘いを受けてすぐ乗ったわよね。⋯⋯あいつらは一匹残らずこの世界から駆逐してやる」


 ドクがどうしてそこまで魔族に対して深い憎悪を抱いているのか。恐らく、奴隷時代のことが関係しているのだろうが⋯⋯。そこは流石に聞かない方がいいだろう。誰にでも、忘れたい過去というものはある。


 それよりも、爪先を足でツンツンつつくのを止めてほしい。正座を続けているせいでだいぶ痺れているのだ。


「えっと、話も聞きましたし、そろそろ正座をやめても⋯⋯」


「だーめ♡ まだ罰は終わってないでしょ~? このドクちゃんの秘密を知ったんだから、むしろご褒美と思いなさいよ。ほら、ほ~ら♡ ふふふ、面白~い♡」


 ドクは昔は色々あったかもしれないが、昨日のこともあるし、恐らく今は本気で人間を助けるために頑張っているんだと思う。そこに多少の私情が交じるのは問題じゃないだろう。


 悪い人じゃない、それは分かっているんだけれど⋯⋯。やっぱりこの人は苦手だ⋯⋯!


「あれ~、もうギブなの? 女の子の方が正座得意なんでしょ? ドクちゃんにざこって罵られたくなかったら、もうちょっと頑張りなさいよ♡ ⋯⋯ギブなんて認めねぇからな?」


 声のトーンを落として脅してくるドク。結局、ボクはその日、日が暮れるまで正座を続ける羽目になったのだった。


ショッピング(嘘)

次回から新章突入予定。ラブとザキの個別回楽しみにしていた方はごめんなさい。でも出番はありますよ!

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