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桃源の乙女たち  作者: 星乃 流
十一章「風の詩」
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第五話(第四十三話)

 カルナとエリンは引き分けた。――と、いってもあのまま続けていたら確実にエリンが勝っていたろう。

 カナミはエリンとカルナのこの衝突の一部始終をひっそりと覗き見ていた。

 カルナとナルザの一戦は見逃したものの、今回は逃さずにすんだ。急ぎ場所を突き止めた甲斐があった。

 それにしても、エリンがあのまま引き篭もったまま終わってしまわないか心配だったが、思わぬ隠し玉を持っていたようだ。それにしっかり腹も括ったようで。

 フフッ

 カナミは驚いて思わず自分の顔を手で触った。

 (今、私笑った……?)

 ――いつからだろう、笑えなくなったのは。

 カナミは闇属(あんぞく)の適性を持っている。(やみ)は表向き存在しないこととされている属性であり、その適性は本人にすら伏せられるが、大抵は成長するとともに自然とその力を自覚してしまう。闇属の本質は「人の心に干渉する」力だ。自然現象を操る他の五大巫術とは一線を画す、異質な力。

 心の内とは無限に広がる闇のようなもの。それ故か、その力は闇と称されている。禁忌という印象を強く与えるためもあるかもしれない。

 偏に闇属の力といっても、他の五大属性と比べて個人個人で得手不得手に大きく違いがある。カナミの得意とするのは「他人の感情・思考を気取る」こと。飽くまでぼんやりと感じ取れる程度で、はっきりと心の内が読めるわけではない。

 ただ、嘘を付いているか否かぐらいは見透かすことができ、言葉や態度に何か裏があるか否かも判別できる。

 それ故、カナミは人の裏表というものに触れ過ぎた。

 力が芽生えたての頃にやたら無用に他人の嘘を看破し過ぎたせいで、周囲から敬遠されるようになってしまったことも大きかったろう。口には出されずとも、皆に恐れられていることは皮肉にも能力のおかげではっきりと伝わった。

 やがて、カナミは表情を失っていった。

 ――でも、唯一人だけ。

 カナミは次の行動に出るべくその場を離れた。

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