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桃源の乙女たち  作者: 星乃 流
十章「炎、揺らめく」
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第二話(第三十六話)

 ――ここでおさらいをしておこう。

 カナミはひとり、頭の中で現状を振り返る。残りの、生き残りの持つ刻印の数は――。

 カルナ、セラの二人は変わらず二画ずつ。表面上、未だ二人共事件などに関わりなし。

 ラスタは十四番の刻印の一部を奪い取ったことで合わせて五画。現在負傷にて療養中。

 切断されて行方不明のライラの左手に二画。おそらく十四番が所持している。

 ナルザはサリャに勝負で敗れたきりそのままで一画。

 エリンは今際のレミから二画引き継いで四画。

 リサは二画のまま。エルの邸宅にて事実上軟禁中。

 アズミも……二画のままのはず。

 イマリはナルザに譲渡したきりで一画。

 十四番は昨夜の戦いで三画を削られたため残り七画。しかし、刻印が残ったままのライラの左手を所持している可能性が高い。

 そして私――カナミの持っている刻印も最初から変わらず二画。

 すべて足すと三十。やはり数が合わない。本来は全て合わせて二十九画しかないはずだというのに。あの十四番――黒衣の襲撃者が最初から一画持っていたということだろうか。

 状況は未だ中核に至らぬ嵐の空のように移ろいでいる。

 レミが殺された時、十四人目の存在が立証された。そのことに皆、慄きはしたが、同時に安堵もしただろう。自分たちの中に殺人者はいない、と。

 だが、昨夜の事件でその一時の安堵も土台から崩れ落ちた。十四番の共犯者の存在が明らかになってしまったのだ。誰かが手引をしている。ただでさえ、正体不明で強力過ぎる力を持つ、不気味で恐ろしい十四番目の存在に加えて、だ。

 十四番は今のところ里の人間の誰一人として条件に当て嵌まらないというのに、この里由来の術を扱う。この点だけ目を瞑れば、その正体は「外敵」との可能性もあった。そう思えば皆、少しは安心できたろう。

 だが、もう一人いた。十四番はきっと外の人間だと言い聞かせていた心にも、誤魔化しが利かなくなるだろう。この十五人目の存在は本当に十五人目なのか。十三人のうちの生き残りの誰かではないのか。十五人目だとしても、結局は里の中の他の者が手引きをしているのではないだろうか。皆、見知った顔の中に殺人鬼がいるかもしれないという不安が再燃してしまっているだろう。

 さぁこんな状況下、必ず近いうち、今すぐといっていいほど近いうちにさらに誰かが何かを起こすだろう。

 ――私も急がねば。

 カナミは亡き父の側妻の二人ほどを連れて、自ら行動すべく屋敷を出た。

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