第7話 勉強会 2
夕飯になり、今日も父さんはまだ帰宅していないため、3人での食事だった。
「そうだ、この後、香奈の家に勉強しに行くから。」
食事終わりに、一応、この後の予定は伝えておいた。
「こんな時間に。健斗、香奈ちゃんの家に迷惑かけるんじゃないよ。」
「いや、俺も言ったっよ、それ。香奈が来いって言うから。」
「え、何、あんた、香奈ちゃんと付き合っているの?」
男子高校生に、ストレートにそんなこと、笑顔で聞くなよ、母さん。
「付き合ってないから、勉強教えて欲しいんだって。」
「あんたが教わる方じゃないの?」
「いや、それも言ったって。何か分からないところがあるんじゃないの。」
あぁ、正直に言ったのを後悔した。面倒な絡みが続きそうなので、自分の部屋に退散しようとしたところ、ソファーに座っていた、友里がドヤ顔でこちらを見ている。
おいおい、お前のアドバイスが役立った訳じゃないからね。
そんな妹も無視して、自分の部屋に戻り、一通り勉強道具を揃えたが、まだ8時まで時間があるので、さっとシャワーでも浴びておくことにした。
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シャワーから出ると、母さんが貰い物のお菓子を袋に詰めていた。
「あんたがいきなり言うから、こんなものしかないけど、香奈ちゃんの家に持っていきなさい。」
まぁ、こちらが呼び出されたとはいえ、夜に伺うのだから、仕方ないか。。。
「わかった。」
「香奈ちゃんママ、パパにも、よろしく言っておいて。」
「わかった。わかった。」
ソファーでゴロゴロする妹が、またもやドヤ顔でこちらを見ているのに気づき、若干イラっときたが、無視して自分の部屋に戻り、時間を潰した。
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8時になったので、自分の部屋を出て、玄関に向かうと、母さんと友里がにやついた顔で、「いってらっしゃい」と、わざわざリビングから出てきて、お見送りしてきた。
明らかに勘違いしているが、何を言っても無駄なので、そのまま家を出た。
香奈の家に着くと、香奈のおばさんと香奈が出迎えてくれた。満面の笑顔のおばさんにあいさつをして、お菓子を渡すと、
「健ちゃん、遅くにごめんね、香奈が無理言って。しばらく見ない間に、大きくなったけど、相変わらずかわいいね、健ちゃんは。」
小学校の頃までは、この顔が原因で、よく女の子に間違えられていたが、おばさんからすれば、その頃から俺の扱いは変わっていない。
「夜分にすいません、おばさん。お邪魔します。」
おばさんの横に立っている、香奈は中学生時代の普段着よりおしゃれな、チェック柄のロングワンピースを着ており、風呂から出た後なのか、少し顔が赤くなっていた。
「勉強集中したいから、私の部屋行こ。」
香奈に誘導され、2階の香奈の部屋に向かった。
すれ違った際、おばさんがうちの母さん、妹と同じような顔していた気がしたが、
状況的に仕方ないと考え、そのままお辞儀してスルーした。
階段を上りながら、香奈に、
「おじさんは、まだ帰ってないの?」
と聞くと、
「仕事で帰ってないよ。健斗来てるとはママが伝えてるけどね。」
と返答があった。
父親不在時に、娘の部屋に上がり込む男はどうなんだろうと、頭の中でちょっと躊躇したが、
香奈の家は、女性が主導権を持つ家であることを思い出し、そのまま香奈の部屋に入った。
香奈の部屋に入るのは、小学生ぶりで、3年以上前のイメージしかなかったが、その頃と比べると、おもちゃなどはなくなり、きれいに整理整頓された、白を基調とした女の子らしい部屋になっていた。
部屋の中央には円形のカーペットが敷いてあり、その上に、ふたりでギリギリ勉強できるサイズの白いテーブルと2つクッションが置いてあり、そこで勉強する模様だ。
「テーブル小さくてごめん、いつも一人で使っているから。」
「いや、ノート置ければ、いいよ。」
テーブルを挟んで、香奈の真正面に座り、持ってきたファイルケースから、必要最低限のシャーペンと消しゴム、問題集とノートを取り出して、机の上においた。
「じゃあ、俺は何を教えればよろしいでしょうか。」
「う~ん、特に健斗から教わることはないから、いっしょにテスト勉強しよ!」
うん、わかっていたけど、俺必要ないよね。だいたい中間テストでも、どの教科も10点くらいは俺より高いイメージあったから。
「わかったよ、じゃあ、俺もテスト勉強するから。」
本当は帰って家で1人で勉強した方が、捗る気はしたが、目の前でニコニコ笑顔で勉強されると、帰ると言いづらい状況だった。
おじさん帰ってきたら、あいさつして帰ろう、うん、そうしよう。心の中でそんなことを考えながら、問題集を解き進めていた。
正直、かわいい女の子と部屋にふたりっきりでいる時点で、ラブコメイベントとして、かなりポイント高いし、かなりドキドキしているし、若干、外堀が埋まってきているような気がして、少し恐怖心(別の意味のドキドキ)も芽生えて来ていた。
だが、香奈と俺の関係の中には、どうしても裕ちゃんの存在を切り離すことができず、俺は、この「香奈攻略ルート」を心から楽しめないでいた。
第7話書きました。 今後も更新していきますので、よろしくお願いいたします。






