第3話 約束
江藤さんと帰るのは、たまたま利用している駅が同じだったので、文芸部の同期が2人に落ち着いた頃から、部活終わりは、いっしょに帰ることが自然とお決まりになっていた。
別に寄り道をすることもないため、駅までの約10分間、その日あった出来事や課題についてなど、世間話をしながら、間をつないでいた。
「そろそろ期末近いけど、工藤君、勉強してる?中間、結構点数よかったよね?」
「まだ半月以上あるから、下準備中かな。」
高校入学のために、裕ちゃんから教わった勉強法を継続した結果、進学校であるこの高校でも、300人中25位という、俺としては、かなり上出来な成績を中間で取っていた。
まあ、裕ちゃんや香奈は1桁台の順位なので、足元にも及ばないが、、、
なので、期末ではさらに上位を目指して、テスト範囲の情報整理はこまめに実施していた。
「下準備って、何をやってるの?」
「テストで出そうなところを自分で考えて、その内容を整理しておくだけだけどね。」
「良ければやり方、教えてくれない?私、文系科目が苦手で、前回もあまり良くなかったんだ。」
江藤さんも以前話を聞いた限りだと、中間はそれなりに良かった気がしたが、俺の勉強法に興味をもってくれたらしい。
「全然OKだよ、次の部活のときにでも、情報整理してる、ノート持っていくよ。」
「出来れば、部活以外の日がいいな、部活だと集中できないから。」
確かに佐藤先輩に捕まると、勉強会は確実に出来ない・・・
「了解、いつがいい、俺はいつでもOKだよ。」
「明日の放課後、図書室でもいいかな?」
「大丈夫だよ、科目は何がいい?文系科目ならだいたい準備しているからOKだよ。」
「それじゃ、英語と古文で教えてもらってもいい?今度、お礼するから。」
江藤さんはかなり律儀な子だ。俺のようなモブ男子高校生は、特に好きな女の子でなくても、かわいい女の子と2人で勉強できるだけで、ご褒美もらっているようなものなのに。
「お礼はいいよ、今後もアミちゃ、、、佐藤先輩の相手してくれれば。」
「それは困るよ、、、それ以外で!」
「わかったよ、それじゃあ、何か考えておくよ。」
そんな会話をしているうちに、駅に到着していた。乗る電車の方面は違うため、改札に入った後、
「じゃあ、また明日。」と声をかけて、俺は江藤さんとは別路線に向かった。
高校に入って、女の子とふたりっきりのイベントは初めてのため、俺はかなりテンションがあがっていたが、表情に出さないように努めて、電車を待った。
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最寄り駅よりも1駅前で降りた俺は、健康維持(体型維持)のため、約30分歩いたのち、家に着いた。
リビングでは、料理を準備する母さんとそれを手伝う妹がいた。
「おかえり、ちょうど料理できたから、着替えてきなさい。」
「ただいま、わかった」
母さんに返事したあと、自分の部屋に戻り、着替えを済ませ、リビングに戻り、食事が用意されたダイニングテーブルの椅子に座った。父さんはサラリーマンで、だいたい終電で帰ってくるので、平日は3人で夕食をとることがほとんどだ。
「お兄ちゃん、ニヤニヤしてて、いつも以上にキモいよ」
2歳年下の妹から、辛辣なコメントが発せられた。どうやら、俺の笑顔は妹的には、軽蔑の対象らしい。
まぁ、いつものことなので、気にはしていないが、ツンデレ妹のテンプレ対応だと、プラス思考に考えることにしている。デレは見たことがないが、、、
「友里、そんなこと言わないの。多少気持ち悪くても、暗いよりかはいいでしょ!」
おいおい母さん、フォローになってないよ、それ。
返答するのが面倒だったので、さっと食事を済ませ、「ごちそうさま」と食器をキッチンにおいて、俺は自分の部屋に退散した。
いつもなら、少しラノベや漫画などを読んで休憩してから、勉強をして、風呂に入り、寝るのだが、
明日のために、英語と古文の勉強ノートを見やすいように修正することに3時間ほど時間を費やし、力尽きて、軽くシャワーを浴びて、その日は眠りについた。
何とか3話かけました。徐々に更新していきますので、よろしくお願い致します。