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第2話 文芸部

 放課後、部室に到着すると同時に、いつも座っている席に座り、本を読むふりをして、

「議題:今後のラブコメ対応について」の脳内会議を開始した。


 この部は、形式上文芸部であるが、実質本を読みながら、まったりする部になっている。

文化祭で文芸誌を出すのがメインイベントっぽいが、今のところ、誰もそこには触れない。


 俺がこの部活に入ったのは、もちろんラノベ好きであるのも理由だが、その他にも理由はあった。


 まずは、俺が目指す、主人公の友人キャラが確立できなかった場合の備えとして、

俺自身が主人公として切り開く、(かなり勝算が低い保険としての)環境づくりのためだ。


 俺のラブコメ分析によれば、主人公は帰宅部 or 特殊な文化系部活に入っていることが多い。

多分、運動部でキラキラしているリア充では、読者の共感を得られないからであろう。

読者に、「俺だってあんな経験できるかも」と思わせてくれる、作家殿の思いやりと俺は信じている、、、


そんな分析は置いといて、必要な環境づくりの一環として、

どちらかを選択すべきだと入学前から考えていたが、帰宅部のチョイスは一歩間違えれば、

学校と家の往復のみの暗い青春になりかねないので却下し、去年の文化祭で見た、一番特殊な文化部に入部した。


 もうひとつの理由は、俺以外の部員が全員女子であること。


 別にハーレムを狙っている訳では無いが、(結果的になるなら、ありがたい、

むしろ歓迎だが、)先輩が二人とも美人であったことが、大きな理由であることは否めない。


 現在の部員構成は、高3:1名、高2:1名、高1:2名(俺含む)とかなり少数精鋭なハーレム(仮)だ。このままだと、来年は部の存続が怪しそうな気がする・・・


「工藤君、何を読んでいるの?」


 高3の伊藤(イトウ) 莉奈(リナ)さんが隣の席に座って、話しかけてきた。


「伊藤先輩、もちろん新着ラノベです。」


 俺はお気に入りのブックカバーを外し、図書室で借りた新着ラノベを提示した。

何故かこの学校の図書室、ラノベのラインナップが半端なく、おこずかいが少ない俺はかなり活用させて頂いている。


「ふふ、君はブレないね。」


 そう言って、伊藤先輩もカバンから本を取り出し、読みだした。その横顔を見るだけで、この部に入った価値があると思った。


 伊藤先輩はこの部の中では一番の常識人で、肩まである黒髪ストレートが似合う、正統派美少女だ。

彼女目的で体験入部の1年男子は数多くいたが、5月を過ぎるとそれも徐々に減り、今では俺と江藤さんだけになっていた。


 そこまで減ってしまったのには、伊藤先輩目的の(やから)たちが、ことごとく彼女をあきらめて、

収束していった部分もあったが、その他にも理由はあった。


 その理由のひとつが30分ほど遅れて、部室に入ってきた。


「ギリギリセーフ!」


 特に遅れても緩い部活なので問題はないが、開始時間的にはアウトだ。だが、その場にいた3人とも絡まない、面倒なの確定なので。


「ケン君、スルーはないよ、スルーは!」


 どうやら今日も俺がファーストターゲットらしい。ラブコメ検討を諦めて、本を机の上に置き、臨戦態勢を整えた。


「佐藤先輩、お疲れ様です。」


「おぉ、ケン君、元気~」


 高2の佐藤(サトウ) 亜美(アミ)さんが目の前に現れた。とりあえず、餌付けを試みた。


「先輩、チョコ食べます?今日コンビニで買ったのがあるんですよ。」


「うん、食べる~」


 新商品のチョコ手渡す、俺。食べてる間は実害は発生しないはずだ。


「ケン君美味しいかった~、あと佐藤先輩とか先輩じゃなくて、アミちゃんでしょ。」


佐藤先輩の謎テンションが発動した。ここは潔く乗っかるしかないか。


「はい、アミちゃん、、、先輩。」


 佐藤先輩は、ゆるふわロングな茶髪が似合う美少女で、悪い人ではないのだが、超絶天然で、

何故か高い格闘能力を有しており、いくつもの武勇伝が残している。今年の体験入部者にも、犠牲者が発生していた、、、


 このまま対応を一人でしていると、部活終了までトークの精神的サンドバック状態確定のため、

同期を一人道連れにすることにした。


「江藤さんもアミちゃん、、、先輩と話したいと言ってましたよ。」


「いや、ホントに、大丈夫です。」


少し離れた席に座っていた、江藤(エトウ)裕子(ユウコ)が間髪入れずに、ボソッと本音を漏らしていた。軽く俺のことを睨んでいる。ごめんね、ホント。


 江藤さんは俺のいる3組と隣の4組にいて、the文学少女というような、見るからに真面目そうな地味なメガネっ子だ。 メガネを外すと、美少女が爆誕することを俺は祈っているが、今のところ、その機会には巡り会えていない。


「ゆ~こも私と遊びたいなら、そういえばいいのに~」


「いえ、本当に、結構です。」


 江藤さんは見た目はおとなしい感じであるが、結構ズバズバ直球で意見を言う。


 それに対して、佐藤先輩がグイグイベタベタ絡んでいくのが、いつものパターンになりつつある。


 なので、佐藤先輩の相手に疲れると、江藤さんにパスを回すのが、俺の必勝法である。


 そんな3人の他愛もないやりとりを時折、本を読んでいる伊藤先輩が微笑みながら、眺めているのが、

ここ2カ月、週2回の部活のほとんどだ。


===


 下校時刻を知らせる放送が流れ、伊藤先輩の「じゃあ、帰ろっか」の声に反応して、

俺は背伸びをしながら、椅子から立ち上がり、本をリュックに放り込んで、先輩2人にあいさつをして、

江藤さんといっしょに駅へ向かった。

第2話投稿になります。徐々に更新していこうと思いますので、

よろしくお願いいたします。

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