第1話 入学
~4月8日~
俺はこの春、高校1年になる。
中学生時代はオープンオタとしてキャラを確立して、男友達からはイジられ、
女の子からは呆れられながらも、それなりに楽しい学生生活を送ってきたつもりだ。
ただ、中学生時代、実現できなかった、叶えたい一つの目標がある。
そのために複数のラノベを分析し、研究に研究を重ね、目標実現のため、
水面下(脳内)で準備を進めてきた。
ついに始まる、俺の充実した高校生生活。
「俺はラブコメを実現する!」
~5月8日~
「何かがおかしい。」
「いや、まだ修正範囲内だ。」
そんな問答を脳内で繰り返していくうちに、約1ヵ月経過している。
現状の成果は、クラスで馴染めてきただけだ。ラブもコメ(ディ)もない。。。
空回り系オープンオタという、バラエティー班的なポジションだ。
あ、コメディはあるのか?
「って、中学と状況変わっていないじゃないか!」
と自分にツッコミを入れつつも、まだプロローグだと頭の中で言い聞かせていた。
~6月8日~
「・・・いや、これミスってるよね!!!」
1学期も終わりに差し掛かり、既に人間関係も出来つつあるが、
完全にモブキャラ路線に突入している、、、
ここから修正せねばと、昼休み、今後の対策を教室の隅の自分の席で練っていると、
1人こちらに歩み寄ってきた。
「ま~た、健斗はキモい顔して、ひとりで考え込んでる!
やめたほうがいいよ、その癖!」
辛辣なコメントを放ってきたのは、ラブコメ要素(幼馴染枠)を満たす重要人物、遠藤香奈だ。
香奈とは、幼稚園から中学校まで、ほとんど同じクラスの腐れ縁で、明るく面倒見のよい性格で、よく俺にも突っかかってくる。
「重要な議題について、検討中のため、お引き取り願います。」
ただ、香奈は美人であるのは間違いなく、昔から香奈を意識していたのも否定できないが、付き合いが長いこともあり、俺の扱いがかなり雑なため、俺の中では、ラブコメ実現のための最終手段(優先度低)となっている。
なので、丁重に頭を下げて、この場をやり過ごした。
「健斗のくせに生意気な。もう知らないし!」
と言って、元いた女子グループのほうに戻っていった。
「あ~ぁ、香奈様怒らしていいの、健斗。後々めんどいよ。」
そんなことをいいながら俺の席によってきたのは、こちらもラブコメ要素(幼馴染友人枠)を満たす重要人物、滝藤裕也だ。
イケメンで成績優秀、運動神経抜群と非の打ち所がないのだが、性格がいいかげんな部分もあり、
誰からも敵対されないという、超主人公キャラである。裕ちゃんとは小学校からの付き合いで、なぜか気の合う親友だ。
「大丈夫、大丈夫。香奈様、次会ったときは忘れているから、いつも。」
俺は昔から裕也は裕ちゃん、香奈はそのまま香奈と呼んでいるが、裕ちゃんが呼ぶので、今は香奈様という呼び方に合わせておいた。
「いや、めんどいのは、香奈様じゃなくて、信者ね。」
裕ちゃんが解説を始めてくれてた。
「最近、香奈様人気急上昇で、結構狙っている奴多いらしいし、健斗も気を付けておかないと、血祭りにあうよ。」
裕ちゃんのイケメンらしからぬ、モブキャラ ゴシップ解説を傾聴して、一安心した。
確かに高校になっから香奈は、ぱっつんヘアーからおしゃれショートボブに変えた影響か、
かなり大人びて見えるようになり、中学時代から女子人気は高かったが、今では男女ともにクラスでの人気はトップレベルだ。
「大丈夫、香奈様と俺の間に1本もフラグ立っていないから、それに高校に入ってから、さらに俺への扱い悪くなってるし。」
俺がドヤ顔で裕ちゃんに宣言する。
「健斗が大丈夫ならいいんだけどね、俺は。」
笑いながら裕ちゃんは立ち去っていった。何か裏事情知ってるなら、もっと詳細解説してほしいな、と思いつつも、教室で話すことでもないかと思って、その場はラブコメ検討に戻った。
まず、今までの振り返りからはじめてみた。
はじめに、環境面については、申し分のない状況のはずだった。
一番大きいのは、香奈と裕ちゃんと同じ高校に入ったこと。幼馴染3人が同じ高校に通う時点で、
ラブコメの王道コースに入ったと確信した。かつ、3人同じクラスにまでなり、これはかなり奇跡的だし、強力なカードだと思っていた。
ただ、裕ちゃんと香奈の2人と俺のスペックを比べると明らかに俺が劣っているため、俺は主人公(裕ちゃん)をサポートして、美味しいおこぼれをゲットしていく、友人キャラ路線でいくことを心に誓い、その戦略は入学当初はうまくいっていた。
だが、コミュ力のなさから、せっかくの裕ちゃん目当てで、俺に関わってきた女の子にうまく対応できず、次につながらず・・・
それに加えて、裕ちゃんの一匹オオカミ発動で(昔からあまり人と群れるタイプじゃなかったっけ)、4月下旬には効力をなくしていた。その頃には、既にクラス内で(隠すつもりもなかったが、)
アニメ、漫画、ラノベ好きのオープンオタとしてのキャラが確立し始め、同じ趣味を持つクラスメイトとも仲良くなりはじめていた。
・・・この時点でクラス内での新規ラブコメ要素は築きにくいキャラになってない?俺。。。
そして、最終手段(香奈)を攻略するのは、スペック差からくる劣等感に加え、以前から引っかかっていることもあるので、現状の選択肢としてはなしだった。信者の方々も怖いし。
奇跡的にそろった環境ばかりに頼ろうとしていた約2ヵ月を反省して、今後の対策を考えようとしたころで、昼休みは終了した。
「今後の対策は放課後、部活で考えるか、、、」
次の授業の準備をしつつ、俺は一旦検討を終了した。
初投稿になります。徐々に更新していきますので、よろしくお願いいたします。