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第11話 果物1個に釣られる妖精形態チート武器の扱い方


 妖精形態チート武器、ファーファ。

 果物1個丸かじりに釣られ、キラキラとやる気に満ちたそのグリーンの瞳に、自分が提案した事とはいえ一瞬怯んでしまった。

 ふと、飛んでいるファーファの向こう――4メートルほど上の岩のてっぺんから赤い塊が現れた。ちょっとした小屋程度まで巨大になった赤色レアスライムが、隠れている岩の上から溢れて……きたッ?


 俺はバックパックの中身をぶちまけた!


 とにかく武器ッ! 武器だ。飛び道具ッッ! 熱の出るモノ! なんかないか、ファーファが気合入れて高熱出す気になるようなヤツ!!


 装備の中にあるのは……火口魔具? 火口魔具!!

 村人たちは普段火打ち石を使っているが、旅人は高価だが雨が降っても着火できるこの便利なマジックアイテムを使う。微小な炎系魔法が何回か分封じられた発煙筒のような形をしていて、魔法アイテム屋でチャージしなおすことができる。


 これなら!

「いいか、ファーファ。こいつは知ってるか?」

 火口魔具を見せる。頷くファーファ。


 頭上から岩の欠片がバラバラと落ちてきた。ここも限界か!

「プラウドさん!」チャイムの悲鳴が聞こえる。

 岩陰から転がるように跳び出した途端、スライムが大岩を飲み込んだ。

 そして、そのまま大岩を取り込み始める。周りの木が巻き込まれて根っこから押し倒されていく。

 

 今度アレがぶつかってきたら……逃げるどころの話じゃない。


 半分転がり這うように距離をとって、ファーファに叫ぶ。

「ファーファ! この火口魔具になれ! こいつの火力をお前の力でドラゴンブレス並みの火力にできるか?」

「できるかぁてー? 言うたねー!?」


 釣れた。


 ファーファが火口魔具に触れると、不思議な色合いに輝きだし、ファーファがその中に溶け込んでいく。

「ポリモーフ!」

 すると、ドラゴンの装飾が描かれたえらくゴージャスな火口魔具に姿を変えた。


 小屋サイズスライムが砕いた大岩を取り込んで、こちらに向かってくる。

 慌てて、距離を取るため走り出す。


「チャイムーーッ!」

「ひゃい!」

「そこから俺に炎防御の魔法を掛けられるかーッ?」

「プロテクション系はできますけど、ちょっと時間くださいぃ! 5分くらいーッ!」

「遅いわ!」

「チャイムってバッファんとこ所属やからね。バッファの部署から別部署の火関連に申請を廻して決裁もらうのに、実績が少ないと時間がかかるんよ」

 なんて世界だよっ!



 ついに川を目の前に、逃げ道を阻まれてしまった。プロテクションはまだ発動していない。


 仕方ない!


「ファーファ! 3、2、1、0で、火を吹けよ!」

「まかせて! よーーし! たそがれよりも~」

「そういうのはイイから! 頼むぞ!」

 何か言いたそうなファーファ・ライターを掴むと、


「3!」

 叫ぶと同時に大きく振りかぶって、超巨大スライム目掛けて投げ込む。

「2!」

 大きく息を吸って川に飛び込み頭を押さえて腹ばいになると、

「1!」

 スライムが、表面に当たってきたファーファ・ライターを中に取り込んだ。


 刹那。


 小屋サイズのスライムが内側から木っ端微塵に吹き飛んだ。

 爆速で膨らむ紅蓮の熱塊が、千切れ飛んだスライムと大岩の欠片を追いかけて瞬時に蒸発させ、高熱の爆風が渦を巻いて周囲を吹き飛ばす。

 川の中に腹ばいになって避難した背中を、高熱が炙るのがわかった。



次、最後の予定です。

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