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第10話 ポンコツ、戦闘中。


「うーん……ウドって思ったより、へっぽこやねぇ」

 ショートソードのファーファが呆れたような声を出す。白光の刃の輝きが暗くなった。


「んー、テンションさがるんやけど……」

「お前の武器が強力すぎて、こええんだよッ!」


「振るから当たらへんのよ。腰だめにかまえて突っ込み!」

「なんでやっ!」

「お、ええツッコミやね! 突っ込みだけに!!」

 もういやだ、この大阪妖精。


「相手スライムやろ? かまへんから、やってみ!」

「えええええええーい! 死んだら化けて出てやるっ!」

 俺はスモールバックラーを投げ捨て、ショートソードを腰の辺りで横ざまに構えた。


「おおお! エエ感じやねっ!! おどりゃあああああって言って! 言って!!」

 やけくそだ。

「おどりゃアアアアアア!!!!」

 再び転がってきた全高2メートル近いスライムに体当たりをしかける。

 腰だめにしたショートソードの白い輝きが、その気合に呼応するように更に更に大きく光を放って――


 刃が触れた瞬間、巨大スライムが蒸発した。


「久しぶりの仕事としては、全然ものたりへんねぇ」

「すげ……」

 と思うまもなく、岩が俺の足にズドンと落ちた。


「!!!!!!」


 スライムの本体が突然蒸発し、体内の岩が宙に浮いた形になって……俺の足に落ちてきたわけで――

 声無き声を上げて、片足で跳ね回る俺。


「プラウドさんッ! い、いま治療しますッッ!!」

 チャイムが駆け寄ってくる。


 俺の足を見て、小さな声で1つ2つ言葉を紡ぐと、手にした杖がキラリと輝いた。そしてもう片方の手で、痛めた俺の足にかざす。

 フッと一瞬にして痛みが消えた。


「凄いぞ、チャイム!」

「いちおー、プリーステスですからー」

 まんざらでもない顔のチャイム。単なるアホの子じゃないんだな。


 ショートソード・ファーファが感心したように、

「さすがは転移者の特化能力持ちやね! バッファも簡易申請で通すんやなぁ」

「なんだそりゃ」

「ん? バッファは創造・生命部の部長やからね。この手の申請ならワンストップで済むから決裁早いんやけど、チャイムからの申請はさらに簡易申請でええみたいやね。しかも受理が早い!」

 また世界の裏側を垣間見た気がする。



 あれ。そういえば、残りの8体はどこへいった?

「あ、アレ……」

 チャイムが震える声で俺の背後を指す。さっきもそんなシーンあったよな……。


 恐る恐る振り向くと――



 横幅、高さがおよそ5メートルを越えた……8体が合体した巨大スライムが俺たちに突進してきていた。




「ファーファ! アレ! アレはヤバいッ!」

 逃げ回りながら、ショートソードのファーファに叫ぶ。

「あー、スッとしたぁ」

「聞いてんのか! まだ終わってねーぞッ!!」

 見ると、白刃の輝きもだいぶと収まっている。ファーファのやる気次第かよ!

 スピードは遅いが、ちょっとした小屋サイズのスライムがドドドという地響きを上げて迫ってくる。


「プラウドさん! あそこ! あっちに岩がありますっ!」

 川原から少し高い段差に登ったチャイムが巨大スタッフを振り回しているのが見えた。俺が超巨大スライムに追い回されている間に移動したらしい。


 俺の身長の倍サイズはある、その大岩の陰に間一髪、跳び込む。

 激突する小屋サイズのスライム。ドーンという地響きと共に……その大岩が、ミシミシといいながらズレた。



「おい、飛び道具みたいなのはないのか?」

 フラフラ飛んでいるファーファを見上げて叫んだ。


「さっきのんでもええ? 疲れたから、弱火になるけど?」

「アホか! あんだけデカイと体当たりとかできないだろうが! 先にこっちが潰されるわ!!」

 ショートソードが例の奇妙な色の光を放つと、ファーファが飛び出てきた。ショートソードは元の普通の姿に戻っている。


「飛び道具て……ショートソードは切るもんやし刺すもんやん? 飛び道具ちゃうし。そういうのちょっと……イメージできひんやん?」

 ――弓矢とかなら、ビシュッ! とかなんとか、ええ感じなんやろけどなぁ。ショートソードはショートソードやしなあ……などとブツブツ言っている。


 わかる、わかるけど! 今は妥協してくれーーッ!


 とにかく、こいつのやる気を上げねば。ノッてくるか……試してみるか。

「よし! ファーファ、無事に帰ったら、何でも奢ってやる!」

「ほんまに!?」

 いきなりテンションが上がったな。魔王の元武器レベルが欲しいものとは想像するに怖いが……。


「ええのん? ウチ、あの果物、1つ丸ごと食べたい!」

 あのマンゴーみたいなのか? そんなのでいいの?

「いいぞ! 奢ってやるから、頼む!」

 叫ぶ。

「おぉ!! ウドくん、キミ、ええとこあるやんっ!」

「ウド、言うな」

「よーし! はりきっていこー!!」

 と、とりあえず、その気になってくれたからいいとするか。



 大岩が、小屋サイズスライムの圧し掛かりでゴリゴリミシミシと変な音を立て始めた。

 マズイ。ここに居ると間違いなく潰される!


「さあ、ウドくん。何になりましょかー」

 お姫様人形のような妖精が、プラチナシルバーの前髪越しにグリーンの瞳をうるうるとさせている。

 なんだろう、この残念感は。



そろそろ終わりになります。


本編の設定をファンタジーアレンジするつもりでしたが、アドリブしまくっていたら、魔法設定やキャラが楽しくなってきました。

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