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第1話 ポンコツ神官がやってきた


「あ、ああああの……少々お願いがあるんですけど……」


 ふと見上げると、どこかの子供が俺を見下ろしていた。


 ある晴れた昼下がり、市場へ続く道。俺はゴロゴロと惰眠をむさぼっていた。


 そこそこ大きな町の入り口の近く。

 ゴブリンどもや野犬などからも襲われる恐れもない。穏やかな日差しの下、気持ちよい風がそよいでいる。

 そんな絶好の昼寝タイムを楽しんでいる姿を見てもなお、わざわざ邪魔してまでの頼みとは一体。


 いかにも村人Aという風体で、切り株にもたれて寝そべっていた俺は、薄く目を開いて……そのまま寝返りを打った。


「なんだ。今日は早々に仕事が終わってゆっくりしてるんだ」

「ごご、ごめんなさい……あなたじゃないとダメだそうなので……」

 子供にしちゃあ、えらく丁寧な言葉使いをするヤツだな。


「あのその、プラウドさん……です……よ……ね?」


 なんで俺の名前を知ってるんだ? 中肉中背――いや、背だけは無駄にデカイこともあり、のそり……と日本で言うところのウシのように振り向いた。



 目の前には、不釣合いなほど長い細身のスタッフを抱えたプリーストが居た。



 さっきまでは気にもしていなかったが、改めてみると神殿の――どこのだったか――神官服を着た……子供……いや、ちんちくりんの女の子がちょこんと立っていた。16歳の俺よりだいぶと下に見える。


「あ。あ。遅くなりましたが、わわわたし、チャイムと申します。聖バッファ教のプリーステスをしています。お昼寝という大事な時にお邪魔しちゃいまして、ご、ごめんなさい」

 ぺこりっと頭を下げた。


 ガシャン


「おい、杖、落ちたぞ」

「あああああ、ごめんなさい!」

 倒れたプリーストスタッフを急いで拾う。


 えらくデカイ……って、いや、持ち主が小さいだけか。慌てて拾い上げているチビ娘を眺めながら思う。


「ごめんなさいっ! ちょっと、こう、気を抜くというか……じゃない、緊張して気持ちがよそへ行っちゃうと、その、ちゃんと持ってるつもりなんですけど……」

「それは大変だな。それじゃ」

「あっ!あっ!! お話させてくださいっ!」

 チビ娘が再び寝転がろうとした俺を止めようとした。


 ガシャン


「おい、杖、落ちたぞ」

「あああああああああ! ごめんなさい!!」

 こいつ、いったい何の話をしにきたんだ……。




「落ち着いたか?」

「は、はい! おかげさまで!!」


 突如現れたちんちくりん神官を切り株に座らせた俺は、改めて相手の様子を伺った。


 地面に座り込んだ俺と切り株に座ってほぼ同じ目線になったそいつは、白地に濃いブルーでデザインされた神官服を着ていた。金糸銀糸も織り込まれていてなかなかにご立派なものだ。

 大きな町に行くとよく見かける……確かこの世界で最大勢力を持っている神、創造神バッファに仕えているプリーストたちの服……だっけ?


 思い出した。そういえば、さっきこのちんちくりんが自己紹介していたな。あまり印象に残らないヤツだから気にもしていなかった。


 白いフードがずれるせいか、しきりに持ち上げている隙間から見えた髪の色は、黒髪。

 背も小さく雰囲気も地味で、どこかの田舎から出てきたばかりの娘っこという雰囲気だ。動き始めるとなんだか子犬のようでもある。

 目は少し大きめか。たぶん興奮しているからだろう。瞳の色も黒。珍しいな。懐かしい。

 先ほどからやたら倒しているプリーストスタッフは、細身の魔法金属にシンプルな装飾がされているものだ。


「で、ちびっこプリーステスが突然、何の用なんだ?」

「ち、ちびっこ……」

「お子様だろ? お願いがあるって、道に迷ったのか?」

「迷子じゃないですよぉ!」

 思わず立ち上がるちびっこプリーステス。


 ガシャン


「おい、杖が――」

「ああああああああああ!!」




「えと……わたし、チャイムって名前なので、そう呼んでいただければ嬉しいなぁなんて……」

 チャイムと名乗ったちんちくりんは、恐縮して視線を外しつつ、気弱に訴えてきた。

 気が弱そうでも生真面目そうな子なので、面白いからとあまりおちょくってやるのも悪い気がしてきた。


「チャイムちゃんだな。わかった。で、何のようだって?」

「チャイム……ちゃんって……」

「子供を使った宗教勧誘ならいらん。俺は多目的型自由選択教だ」

「たも、たもく……?」

「何も無いなら俺はそろそろ市場に獲物を売っ払いに行きたいんだが?」

「あ! あの……ごめんなさい! 宗教勧誘とはちょっと違うんですけど――」

 神妙な顔になったチャイムは立ち上がると、突然キョロキョロ周囲を見回して、耳打ちしようとした。

 周りには俺が罠をしかけて狩ったウサギモドキがある位だが、まあいい、付き合おう。


 ずり落ちそうなフードを押さえながら耳元に顔を近づけたチャイムが、小さな声でささやいた。



「ま……魔王を倒して欲しいって言ったら…困ります……か?」




「断る」

「ええええええええええッ!?」

 耳元でデカイ声を出すな。


「そんなぁ! プラウドさんならやってくれるって話だったのに!!」

「だからなんで、俺の名前知ってるんだよ!」

 嫌な予感がする。

「宗教勧誘とちょっと違うどころか、トンデモ話だろうが。大体、俺、戦闘とか冒険とかしたことないぞ」


「冒険ですか?」

 おたおたしたチャイムの目がキラリと輝き、声のトーンが上がった。

「それなら大丈夫です! こんなわたしでもなんとかなっていますから! というのも、この聖バッファ教の装備には特殊な魔法が――」

「やっぱ、宗教勧誘じゃねえか」

「ああああああああああああッッッ!!」

 見事にテンパってフリーズしているちびっ子プリーステス。


「とにかく断る。俺の名前を知っているのは気になるが、厄介ごとはゴメンだ」

「ちょ、ちょと、最後まで話を聞いてくださいーっ!」


 いつまでこの話に付き合えばいいんだろう。



 この物語は、拙作のSF「宇宙戦争は、俺の秘密基地トイレで起きている。」(https://ncode.syosetu.com/n4319es/)のファンタジーアレンジ物です。


 もし、このキャラクターたちに興味を持っていただいたなら……よろしければ、本編の方をお読みいただければ、更に更に嬉しいです! 宜しくお願いします!!

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