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くしゃみの大きな王女様

作者: んが


                                             

むかーしむかし、そのむかし。

くしゃみの大きな王女様がいました。



「はーっくしょん!くしょん」

「姫様、外まで聞こえますよ!」

「だって、出てしまうんだもの。仕方ないわ」

「王女様たるもの、そんな大きな声でくしゃみをしてはいけません」

「王女だってくしゃみするわよ」

 王女様は、ぺろりと舌を出しました。

「おお、そんな大きな声でくしゃみをしたら、ばあやは腰が抜けてしまいますよ」

「そのくらいで腰を抜かすようでは、私のばあやはつとまらないわね。」

「まったく生意気ばかり言って」


 次の日も大きなくしゃみがお城の中から聞こえてきますよ。

「はあーっくしょん!!!」

「姫様!」

 大臣がやってきました。

「来週、隣町の王子様がお城にいらっしゃるそうですよ。」

「くしょん!」

「姫様。そんな大きなくしゃみをしていたら、王子様が逃げ出してしまいますよ」

「このくらいでびっくりするようでは、とても将来王様にはなれなくてね」

「姫様だってそうですよ。くしゃみの大きな女王様なんて、聞いたことがございません」

「よその国には、スピーチの苦手な王様もいるそうよ」

「まったく、へ理屈ばかりお上手になって・・・。もう少しおしとやかですと、たくさんよその国の王子様も訪問なされるでしょうに」

 大臣はため息をつきながら、出て行きました。


「くしゃみが大きいくらいで男の方にもてないようでは、この国も未来がないわねっ、はっはっはーっくしょん!」


『王女様、なんでそんなにくしゃみが出るにゃ?』

 猫のにゃんぴょんが不思議そうに首を傾けました。

『それになんで小さくできないにゃ。猫だってくしゃみをするとき、小さくできるにゃよ』

 くちゅ。にゃんぴょんはくしゃみをしてみせました。

「あら、かわいいわね。どうしたらそういうふうにできるのかしら」

『僕が思うに、王女様はくしゃみをするとき息を吸っているんだにゃ。はっはっはって最初いつも言うにゃ。その時に息を吸っているから、はーっくしょん!で大きなくしゃみが出るんだにゃあ。』

「ふうん、にゃんぴょんってくしゃみの専門家みたいね。いつの間にそんなに私のことを観察してたのかしら?」

 にゃんぴょんは、『いつの間にさにゃあ~。』と尻尾を振って庭に出て行きました。


「なんだか、みんなにくしゃみが大きい大きい、っていわれるとさすがに気になるわね。来週王子様も遊びに来るって言うし・・・。」

 王女様は、鏡の前に立つと髪の毛を整えました。



「姫様!おやつの時間ですよ」

 テーブルには、町で評判のチョコレートやクッキーが、花柄のお皿に並べられていました。

「これは、何のクッキーかしらん」

 王女様がバラのようなほほえみでクッキーを口に入れると、

「ぶぁーっくしょん!!!」

 何と、クッキーが口から吹き出してしまいました。

「姫様!どうしてあなたはそうお下品なんですか!」

 ばあやが、ぷんぷん怒りながらほうきとぞうきんを振り回して飛んできました。

「まったく、この間はアップルパイを吹き飛ばしたと思ったら、今度はクッキー・・・。まったくとても王女様とは思えませんわ」

「だって。クッキーの粉が鼻に入ったのか、くすぐったかったのよ」

「クッキーの粉ですって?どうしたらクッキーの粉が鼻の中に入るんですか?大臣がパリのお店からわざわざ取り寄せたそば粉入りクッキーですよ。パリの職人が作ったクッキーでくしゃみが出るなんて、聞いたことがありませんよ」

 ばあやは、粉々になったクッキーを拭き集めると、ぷりぷりしながら「やれやれ困った王女様だ」とため息をつきました。

 王女様は、なんだかクッキーを食べてもおいしくなくなってきました。



 部屋に戻ると、またにゃんぴょんがやってきていました。

『だからさ、息を吸っちゃダメなんだってばあ。クッキーおいしそうだな、って匂いかいだでしょ。その時にそば粉入りクッキーの小さな粉が鼻にはいっちゃったんだにゃ』

「見てたの?」

『そうにゃ』

 にゃんぴょんは、毛づくろいを始めました。

『あのクッキーはおいしかったにゃ。多分、王女様はアレルギーがあるかもにゃ。あと、今の季節、鼻がむずむずするにゃあ?花粉かにゃあ。』

「そういわれると、昔お医者様にそんなことをいわれたかもしれないわ」

『なんにせよ。王女様は、息をたくさん吸っちゃうから大きなくしゃみが出るんだと思うにゃ』

「どうすればいいと思うの?」

『鼻にイヤリングでもはさんでみたらどうにゃ?』

「そんなの痛そうじゃない」

『鼻から細かい粉を吸い込んじゃうんだから、仕方ないにゃ』


 にゃんぴょんは、ひょいっと鏡台に飛び乗ると、イヤリングをくわえて戻ってきました。


『目を閉じるにゃ』

 にゃんぴょんが、王女様の鼻にイヤリングを付けようとしますが、うまく挟めません。王女様が自分で挟むと・・・。

「ううっ 痛いわ。鼻がちぎれそう!お母様のもので、もうちょっと大きくてぱちんと優しく挟むタイプのものがあったはずよ」

 そういわれてにゃんぴょんは、女王様の鏡台からぱちんと挟むタイプのイヤリングをそっとくわえて戻ってきました。

『それでおやつを食べてごらんにゃ』



 食堂では、ばあやが掃除を終えてお菓子を片付けているところでした。

「お菓子まだ残ってる?」

「何ですか、その顔は」

「かわいいでしょ。私、お菓子を食べるとき、鼻からクッキーの細かい粉を吸っちゃうみたいだから、イヤリングで鼻をつまむことにしたの」

「ったく。なんて変なことを考える王女様なんでしょう。しかも、女王様のイヤリングまで持ち出して・・・。」

 深いため息をつくと、ばあやはイヤリングをぱちんと外しました。


「にゃんぴょん!にゃんぴょん!作戦は失敗よ」

『にゃあ~。ばあやは頭が固いんだにゃあ』

「どうすればいいかしら。このままでは私、王子様が来た時にもおいしいお菓子が食べられないかも・・・。」

『じゃあ、練習するにゃ』

「どうするの」

『僕のおばあちゃん、何でもよく知ってるにゃ。おばあちゃんも昔はくしゃみが大きくて、よく注意されていたそうにゃ。』

「ふーん。それで、どうすれば小さくできるの?」

『魚をね、くわえて息を吐く練習をするといいそうにゃ』

「魚ですって!私は猫じゃないのよ」

『王女様は、くしゃみを小さくしたいんだにゃ』

 にゃんぴょんは、横目でちらりと王女様を見ました。

『王子様と一緒においしいお菓子を食べたいんだにゃ?』

「うぅ・・・」

 にゃんぴょんは、ちょっと待ってるにゃ、というと台所から夕食用の白身魚をくわえてきました。


『ほーら、白身魚のフライだにゃ』

「おいしそうね」

『くしゃみが出そうになったら、これをくわえて大きく息を吐くんだにゃ』

「そんなことできるかしら」

『するんだにゃ』

 にゃんぴょんは、きっぱりと耳を立てると王女様の目を見つめました。


 

 こしょこしょこしょ。肉球で王女様の鼻をくすぐります。

「ぷわっぷわっぷわっ、ぶわーっくしょん!」

 にゃんぴょんがフライを王女様の口に入れようとして、後ろへ吹き飛びます。

『フライをくわえるにゃあ!』

 しゃあっと毛を逆立てます。

「ああ、難しいわ。英語の文法の方がよっぽど簡単よ」

『ほら、もう一度くすぐるにゃ』

 こしょこしょこしょ。

『ほれ』

「あぐ」

 王女様は、フライを飲み込んでしまいました。

「にゃんぴょん!くしゃみは止められるけどお魚食べちゃったわ。それにフライをくわえて息を吐くなんて無理よ」

『おばあちゃんにはできたそうにゃ』

「人間には無理よ」

『無理なら、おいら帰るにゃ』

「待ってにゃんぴょん!」

 にゃんぴょんは、尻尾を強くつかまれて悲鳴を上げました。

『痛いにゃ!』ひげがぴぴぴーんと震えます。

「ごめんごめん。でも、フライだと柔らかいし、息を吐く前に食べちゃうわ。だから、ペンをくわえるっていうのはどうかしら?」

『王女様の好きなようにするにゃ』

 にゃんぴょんは、もう帰りたくなってきました。

『にゃ~ご』

「ほら、もう一度くすぐってちょうだい」


 にゃんぴょんは、しぶしぶ王女様の鼻をくすぐりました。


 こしょこしょこしょ。


『どうだにゃ』

「うぐ」 

 ペンをくわえます。

「くしゅ」

 小さなくしゃみができました。

「やったわ、にゃんぴょん!」

 ガッツポーズを決めると、王女様は何度も何度も繰り返し練習しました。



 その後、コツを覚えた王女様は、ペンなしでもみんなの前で小さなくしゃみがができるようになりました。

 王女様の噂は、またたく間に国中に広がりました。

 あんまり話題になりすぎて、おんなじ悩みを持つ人たちからお願いされて、『くしゃみを小さくする教室』

を開いたそうです。なんとその中には、隣の国の王女様と王子様もいたとか!

 にゃんぴょんと一緒に本も作って売りだしたら、その日のうちに売り切れ状態になったそうです。


『大盛況にゃ!』


 にゃんぴょんは、しばらくは王女様のもとにいたそうです。

 





 














にゃんぴょんより

みんな、おはなしを読んでくれてありがとうにゃ。

まったく。王女様はわがままだにゃ。おいらも散々こき使われたにゃ。

ここだけの話だけど、王女様はまだ時々大きなくしゃみをしてるにゃよ。みんなも気をぬいたらいかんぞにゃ。

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