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プロローグ

凄まじい轟音とともに衝撃が身体を貫いた。



ぐはぁ。

「保護」をかけていたのに、物理的ダメージが全身に叩きつけられる。


レベルが違いすぎると感じながらも

「ま、まだ。」

と自分に言い聞かせながら体制を立て直そうとした。

汗が眼に入る。


その隙を見逃して貰えるほど甘い相手ではなかった。

視界に凶悪な爪が飛び込んできた。


自分の死を覚悟したとき、黒い影が目の前に現れた。


「ぎゃあぁぁぁぁぁん」


人の叫びにも似た、「結界」の消し飛ぶ音が聞こえた。


かすむ視界に映ったのは、普段から姉さんと慕う女性ひとの後姿だった。


「涼音、ここは引きなさい!」

と言いながらその人は凶悪な爪の持ち主に「一撃」を入れていた。


「うがあぁぁあぁあっっ!」

今度は結界を消された相手が本当の叫びを上げた。


自分の力は判っているつもりだった。

でもこの「程度」の深さの「森」なら通用するのではという甘い期待は無残に打ち砕かれた。


死ななかった安堵と死ぬかもしれなかった恐怖が背筋を上り、のどの奥をひりひりとさせる。

両手はそれを物語るように小刻みに震えていた。


目の前の「敵」はすでに別の存在に変わっていた。


「封魔石」

レベル差が30を超える敵を封じる技。

その凶悪な爪の持ち主を封じた石を拾いながら、姉さんと慕う女性ひとは私を見て満面の笑みを浮かべた。

「真紀姉、ありがとう。」

涼音が姉さんと慕う人に声をかけたとき。

時間が凍りついた。


時空震。

森がその存在に耐えられなくなった時に発生する歪。

その場所が一瞬で切り離される。


「!」

「真紀姉!」涼音が叫ぶ。

すでに数十メートルの距離が二人を分っていた。

時空震が起きると通常、数十年はそこに行く手段がなくなる。

真紀姉と呼ばれた女性はゆっくりと振り返ると「大丈夫」と声に出さず言い、にっこりとほほ笑んだ。

「真紀姉!真紀姉!真紀姉!」半狂乱で叫ぶ涼音。

涼音は理解する。「今の私じゃあそこには届かない。」

空間が涼音を拒絶していた。


そして真紀姉と呼んだ人の姿が見えなくなった。

涼音は声にならない悲鳴を上げその場に突っ伏した。


数分後、決意に満ちた顔を上げて涼音が呟く。

「真紀姉、私、きっとそこに迎えに行くから!

絶対にそこに行くから!」


時空震が起きた空間は静かにそれを見守った。


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