第4話 おい、このロリっ娘…あ、何でもないです
基本書きあがったら投稿してます。
「OK、落ち着けロリっ娘。俺は君のパパじゃ無い。いいか?俺をよく見ろどう見ても新品だろうが!お子様の情操教育によろしくないので何がとは言わんぞ!!」
「ふぇ?」
なんてこった…、魔王の封印を解除したと思ったら謎の剣が出てきて手に取ったら激痛と共に気絶、挙句その剣が無機物から有機物に変化してやがった…。え?さっきの剣だよね?一応確認しないとダメか…。
先程から「うー…、うぅー…」と涙目になってく少女に話を聞いて見ることにした。会話は心の清涼剤。沈みゆく太陽を眺めなら同時に俺の瞳の光も落としていく。
「…えっと君はさっきの魔王と一緒に封印されてた剣の…ヴィルクリンデ??なのかい?お兄さんも状況が飲み込めないんだけどそろそろ此処から出たいなーって。君何かチートな能力なり魔法なり使えたりする?もしくは俺に使い方教えてくれ!さあ!」
「えぅ…えと…うぅ…」
…あ、まずい辺りが暗くなって来たからこの子もきっと不安になっちゃったんだろう。綺麗な瞳一杯に涙を溜めてこっちを見ているこの子をこのままにしちゃいけないな!ほら!俺って紳士だしね!?
…分かってます、ごめんなさい暗くなって不安になってるのはワイや。焦ってテンパって矢継ぎ早に質問責めしちゃったもんな…。とりあえずこの子落ち着かせないと…俺もな!
「ごめんね?色々一変に聞いたら困っちゃうよな、えっとまず名前聞いていいかな?」
震える膝をこの子に見えないように殴りながら平静を保ったかのように振る舞う。大丈夫中身おっさんだろう?ここで意地を張らないでどうするよ。まだ薄暗くなって来た程度じゃん?目の前にちっちゃい子もいるじゃん!俺ha,1人jyaないyo!
…冷や汗垂らしながらぎこちない笑顔を幼女に向けるの29歳のおっさんがいたらお巡りさんこっちですされそう。良かっっった俺も子供で。
「えと…くらんは、[ゔぇるくらんて]っていうの。おじいちゃんがつくってくれたぱぱとままのこどもです!」
ほう、そっかぁ…おじいちゃんが作ってくれた俺とママの…って誰だよおじいちゃんって!!誰だよママって!!そこの所重点的に詳しく!!まだこの体は清いって信じさせて!!記憶にない童貞卒業なんて認知しないわよ私!!
今日何度目なのか顔を両手で覆い蹲った俺を「ぱぱだいじょうぶー?」と頭を撫ででくれる自称娘。
うん、いいんじゃないかな。パパ云々はさておき可愛いは正義じゃないかな?俺の汚れきった心が洗われていくようだ。いいじゃないか娘で。剣とか剣じゃないとか些細なことさ!
「クランは可愛いなぁ、パパもう大丈夫だ!!とりあえず魔法でも使ってこっからビューんと脱出しようか!!」
「ぱぱまほうつかえるの?すごい!くらんにもみせてー!」
…ん?んん?
「…クラン魔法使えるんじゃないの?なんか魔力がどうたら回路がどうたら言ってた気がするんだけど。おいどんはからっきしだぞ??」
「???」
…ま、まじかここに来てまた降り出しじゃねえか。オルタさん…やっぱり一発ぶん殴りたいので戻って来てください。哀愁漂わせて消えていったからなんも言わなかったけど余りにも説明端折りすぎだろうよ!?日本人の察する能力にだって限界が有るんだぞ!?
再び頭を抱えた俺に優しいクランはまた頭を撫ででくれる。だめだ娘が駄目男製造マシーンに最適化されてしまう。…それもいいかも知れないが今後を考えてもどうにかせねば。這い寄るな混沌。
「ん?そう言えばクラン、そのボロボロの布切れいつまで被ってるんだ?汚いから脱ぎなさ………は!!まさか下に何も着てないなんて事に!?よし僕の上着と交換しよう。なに君に風邪を引かせるわけには行かないからね。こちらの方が暖かいだろう。あくまで僕は紳士だ、こういう時こそ手を差し伸べるのがジェントルマンたる所以だね?」
「!?」
ぼろぼろのローブの様な物の下から素肌が覗いた瞬間僕の脳はアカシックレコードに接続されたかの様に全ての事象を見通した。衝撃だった。そうか、これが全知。これが全能!!我ここにエデンを見つけたり!!
「いいの?パパありがとー!」
そう言って彼女はローブを脱ぎ捨てた。
深く考えるんじゃない。感じるんだ娘の成長を。この視力に全身全霊をかけ他の感覚を犠牲にしてでも彼女の有志を見守るのだ。それがきっと親心。今まで培ってきた2人の絆があるからこそ、彼女は俺に全幅の信頼を寄せて居るんだ。裏切る様な事をしてはいけない。例えそこにCの果実が実っていたとしても!!
床に落ちるローブの音が響く中、俺の視界に飛び込んだ物はまだ未成熟な体、しかしながらもうすでに色を感じさせる鎖骨、そして綺麗なフリルをあしらった紺のキャミソールワンピとクリーム色の肩出しロングセーターという可愛い服装だった。
…まあうん。分かってたさ。悪ふざけが過ぎるって言いたいんだろ?いや、こんな子供に何を期待して居るのかね。言っただろう?私は紳士であると。これが子を見守るという事だ。我が娘はファッションセンス良いじゃないか。
「…??ぱぱなんでないてるの?」
「これはね、クランの成長を見守れての嬉しい涙なんだよ?さあこのジャケットを羽織るがいい。心の汚れきったパパはボロ切れがお似合いさ…。…………肩紐が見えなかったせいかぁ。」
ああ、所々穴が空いているからかな。心まで冷え切っていく様だ。
反比例して顔は熱くなってきているがさっきから雨も降って居るんだここは甘んじて状況を受け止めようじゃないか同士諸君。
ああ、クラン優しく撫で撫でしないで、雨の勢いが増すから!止まない雨になっちゃうから!
「ははは、なんだこのローブ内側にポケットあるんだ。便利だよねーポケット。俺も4次元に彷徨って出れなくなればいっそ…ん?何だこれ紙?」
いっそ別次元の扉探しちゃおっかなーとポケットを弄っていた所、結構年代物の紙…羊皮紙って言うんだっけ?実物を見るのは初めてだけど所々風化していて読みにくいな…。というかまず文字が分からないですオルタさん。…駄目元でクランに聞いて見るか。
「ねえクラン、これなんて書いてあるかわかる?こんな文字見た事なくって」
「んー………、これありすもじだよぱぱ、ひみつのおてがみとかはこのもじでかくっておるたおじいちゃんいってた!」
「まじか!!ってかおじいちゃんオルタさんだったんかい!!で、なんて書いてあるの!?」
あの人が作った剣とか…なんだろう既に剣として機能していない時点で残念ではあるんだがまだオルタさんよりはマシな気がする。オルタさんは可愛さが足りない…足りても困るけど。
「えっとね、こまったときのたった一つのさえたほうほう!だって」
「え、なにそれピンポイントで今のこの状況じゃん。オルタさん居るんですか?居るなら出てきてくださいぶん殴ります」
弄ばれてる気分で腹立たしいぞ、今ここで俺が崩壊を起こしてやろうか。うん俺の社会的な崩壊を意味する方だけど。勢い付いて床なんて殴るんじゃなかった血涙出そう。
「だいいち、『ゔぇるくらんて』をとりだします。」
「え、何、方法は一つだけど手順あるのかい。取り出すも何もここにいるけど」
「だいに、つかにてをおき、あたまのなかでこうさけぼう」
「……………クラン、柄ってどこ?」
「ここー」
あぁ、手なんだ。安心した様なちょっとガッカリした様な。
「で、なんて叫ぶのクラン?やっぱテレポート!とかフライ!みたいな魔法名叫べば良いの!?」
なんだろうちょっとワクワクしてきた。これで助かるっていう安心感から来る余裕かな?楽しくなってきたぞ?
「えっと、『たすけて!くらんちゃーん!!』だって!!くらんだいかつやく!」
「…」
危ねぇ、無言でクランの持ってる羊皮紙奪い取って破り捨てる所だった。いかんいかん冷静になれ、おれはcoolいたって冷静なナイスボールだ。ん?玉になってる。ボーイだよ。
「…ふう、OKわかった。今一度だけその口車に乗ってやりますよオルタさん。もし、何もなかったら次会った時口の中にタバスコ突っ込んでやる」
俺の棺の中にはタバスコを入れてもらおう、やめろ縁起でもない。そもそもタバスコだって今では貴重な食料だ、無駄にしてなるものか。そんなもの無いけどな。
「じゃあクラン、ちょっと手握るよ?」
「うん!えへへ〜」
やだこの子すごく可愛い、じゃなかった。えっと頭の中で叫べば良いんだっけ?
んじゃ、せーの。
たすけてー!クランちゃーん!!!!!
「……救助要請を確認、これより所有者の安全確保を優先して行動致します。魔術回路接続、サーキット安定。探索魔法起動、…現在地把握、マップにより照合……完了。全セーフティロック解除、コンバットモード移行完了。全シークエンスオールクリア」
「…クランさん?」
「ご安心くださいマイマスター。これより、マスターの魔術回路を使用し、魔法を行使致します。大まかに3パターンの脱出方法が御座いますがいかが致しましょう?」
「え、うんキャラ変わりすぎて面食らったんだけど『クランさん』形態だとこうなるのね?OK把握。ちょっとショック受けたけど把握。…………でその脱出方法って?」
おいマジでたすけて!クランちゃん!じゃねぇか。なんだこの幼女なんだこのギャップは!っく!なんかすっごい負けた気分になる!!
「一つは飛行魔法による大穴からの脱出です。数時間前のマスターの魔力放出によりこの大穴で脆い部分は全て吹き飛んでおりますのでこれ以上の崩落は恐らく発生する事はないと思われます。
また警戒対象が上空のみに絞れる為警護の面でも一番確実性が高いと思われます」
「…うん、まぁ、それが一番だよね?俺もそれでいいと思う。………因みに他の二つって何?」
「はい、二つ目はランダムテレポートを使用した脱出方法です。本来は転移先を指定したテレポートを実行できれば第一候補だったのですが、登録済みの座標がこの時代ではロストしております。なのでランダムテレポートという手段を用いることになるのですが、此方の方法はなにぶん私のライブラリーに存在するデータが古過ぎるため地形変動等していた場合転移先で上半身が山の中…などと言うこと…」
「OKそいつは却下だ!」
なんでここで生き埋めにならずにギリギリ助かったのに望んで埋まりに行かねばならんのか!!使い方によっては便利かも知れんが使うならクランにしっかりデータ取してもらわねば。
「三つ目ですがこれは単純に破壊です」
「…はい?こわすの?…何を?」
「この浮島をこの階層より上部分を極大魔法を使用し爆散させるというプランです。
こちらはマスターの協力が不可欠で、対極大魔法用防護壁の中から外に出ないで頂きます。
最適な術式は爆裂系統の魔法となりますので一日ほど爆発の余波である熱、土砂、煙等二次災害のおそれが」
「うん、飛んで行こうか」
いや、だからなんで危険な道を突っ走らねばいかんのか、俺は困難に立ち向かいたい訳じゃないぞ。回避出来るものは回避してなんぼでしょうよ!!
「イエス、マイマスター。では御手を」
「うわ、いざ飛んで脱出となると緊張するな。………ごめん、下見たくないし落ちるの怖いからおぶさって良いですか……」
「……………いえす、マイマスター」
あ、なんか今呆れられた様な気がする。いやだって想像して見なよ怖いだろ普通ジェットコースターとか絶叫マシーンはベルトなりなんなりで固定してんじゃんよ!!それと同じだよ!!絵的に子供が子供におぶさってる様に見えるんだし微笑ましいよ!!ねぇ?!
「では行きましょう、しっかり掴まっていてください」
「イエス、マム」
この世界に来てちょっと場所的にも話的にも暗いところに来ちゃったなと思ったけど、これでやっと俺の物語が動き出すんだ。そう思うとクランに抱きついた体が強張っていくのを感じた。楽しみではあるが、やはり恐怖もある。この世界にはまだ戦争だってあるし、人族の盗賊やら奴隷狩りとかだってあるかもしれない。俺は絶対的な力なんか持っちゃいない。今俺の手の中にあるのはクランだけだ。これから大事なものも増えるかもしれない。そうなった時、俺はそれを守る力を持てるのだろうか。……らしくないな。俺の守れるものなんてたかが知れてるんだ。ましてや今は子供、これから色々な未来に向かえば良い。
そんならしくない考えをしていると、体を包み込む様に柔らかな風がまとわりついて来た。
おお、浮いてる浮いてるーうぅうう!?ふぅえええ!?
初めて見る魔法に感動していたのもつかの間、まるで打ち上げ花火の様に急加速したクランは一気に大穴を抜け出すと急降下し地面に着地した。そして、俺の方に向き直って思いっきりドヤ顔して来やがった。
「マスター、到着です。恐怖を一瞬で終わらせるために最高速度での飛行でしたが如何でしたでしょうか?」
「お、おま……………」
なんでそんな嬉しそうなの!?なんで凄いでしょ褒めて褒めて見たいな顔してんの!?俺のこの震えが伝わってないのか!?超怖かったわ!!『クランさん』の方は知的で常識的なのかと思ったけどこういうなんか根本的なとこはやっぱクランだわ!
でも…さっきまでの辛気臭い空気は無くなったからまぁ…今回は褒めてやるか。
「うん、ありがとうクラン。お陰でたすか……」
「あれー?フィルくんこんな所にいたのー?探したよー!急に居なくなるんだもん〜」
「へ?」
どこか間延びしたかのような声が聞こえ、振り返るとそこには……………………………。
天国があった。
お読みいただきありがとうございました。