夢か現実か
「……っつ、どこだ、ここ…」
俺は見慣れない場所にひとり、横たわっていた
「え…うそ、だろ……?」
手には手錠がかけられていた
俺が何をしたって言うんだ
わけがわからなかった
『やっと起きた?ずいぶんぐっすり寝ていたのね』
その声は聞き覚えのある声だった
『お腹すいたでしょ何か食べる?』
彼女は日常の会話のように平然と話す
ただひとつ違っているのは僕を拉致しているということ
彼女は西岡奏、僕の元恋人
先週、俺が振った
理由は彼女が異常なほど重かったからだ
以前、サークル仲間と飲んでいた時、彼女から送られてきたメールの返事を返さなかったことがあった
そのことが原因で俺が浮気をしていると思いこみ俺の携帯にGPSを仕込まれたことがあった
それからというもの5分ごとに連絡がないと俺の居場所を突き止め、やってくる
俺は怖くなり彼女と一緒にいられなくなった
だから振ったのだ
それなのに彼女は
『光くん、毎日ちゃんと朝ごはん食べてる?自炊しないとダメだよ、栄養バランスもしっかり考えないと』
「…どう、して…こんなことを…するんだ…?」
恐怖のあまり俺の声は裏返った
『えぇ?こんなことって?あぁ光くんを私のものにするためだよ?』
彼女は平然と笑って答えた
「頭おかしいだろ!俺たち別れたよな?なのにどうして!」
『何変なこと言ってるの?私たちが別れる訳ないじゃない、変な光くん』
別れて…ない…
嘘だ、俺はちゃんと覚えている
あの時ちゃんと別れたはずだ
しかしあの時の彼女は少し様子がおかしかった
『はーい、朝ごはんできたよー』
こいつは何をのんきにご飯なんて…
俺は苛立ちを感じた
「そんなことより手錠はずせよ、俺を解放しろよ!」
彼女の顔から一瞬にして笑顔が消えた
『…光くんは私から離れたいの?』
「あぁ、だから別れたんだ」
『私はずっと一緒にいたかったのに…残念だなぁ』
悲しいような切ないような後悔しているようなそんな笑顔だった
『光くん、私ね、光くんを他の人のものにしたくないの、だから私のものにしようって決めたの、だから…』
彼女の手には怪しく光る刃物が握られていた
「お、おい…何するつもりだよ…」
『光くん、ずっと一緒にいてくれるって言ったよね?あの言葉すっごく嬉しかったんだよ?』
「く、くるな!お、お願いだ!助けてくれ!」
『光くんは私のもの、ずっとずっと私のものなの、ずっと一緒にいようね、大好きだよ、光くん』
「く、くるなあああ!!!」
俺は恐怖のあまり気を失った
「……ハッ!」
俺は目を覚ました、ものすごく汗をかいていた
あたりを見回すが誰もいない
「ふぅ、なんだ…夢だったのか…」
夢でよかったと安堵した
でも妙にリアリティーがある夢だった
『夢だったらよかったのにね』
俺の背後から聞きなれた声がした