お気に入りの場所
「やだ、私ここにずっといたい」
「無茶言わないの。もう決めたことなんだから」
「やだ、友達と離れたくない、もっと遊びたい」
「つべこべ言わないでさっさと支度しなさい。やらないならひなただけ置いてくよ」
「やだ、それもやだ」
「じゃぁ、行きましょう」
それから5年の歳月がながれた。
「おばちゃん、アメ一個ちょうだい」
「はいよ、ひなたちゃんは本当にこの駄菓子屋が好きなんだね」
「うん、私はね、田舎からこんな都会へ引っ越してきたんだ。お母さんとお父さんが都会のほうがいいっていってね。でも私は田舎のほうが馴染んででこういう駄菓子屋が大好きなの」
「ありがとね。そう言ってもらえるだけで嬉しいよ」
おばちゃんの言ったその言葉はどこか悲しげな気がした。
「やばっ。もうこんな時間」
時計を見ると5時になっていた。
「お母さんとお父さんにしかられる。早く帰らないと」
私はバックを持った。
「おばちゃん、また明日ね」
「分かった、分かった」
「バイバイ」
私はあわてて家へ向かった。
しかし時間はとっくに過ぎていて…
「何度言ったらわかるの?門限は5時なんですからね。15分もおくれるとはどういうこと!?しっかり説明しなさい」
「えっと、友達と遊んでて」
「じゃぁ、その友達の名前は?」
「お母さんの知らない人」
「いいから言いなさい」
「さっちゃん」
「あとで確認しますからね。嘘はつかないこと。いい?」
わたしはうなずいた。