表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
11/13

11

 色白でほどよく引き締まった太ももに、哲平の目は吸い付けられる。が、それはほんの一瞬のことで終わった。

「ぐがっ」

 強いて文字にするならそうなるだろう。哲平の口が異音を発した。

「だめよ、ミサト。そんなはしたないことをしては」

 穏やかにたしなめる言葉が振動となって直に伝わる。

 それもそのはず、直巳の身体が蛇のように哲平に絡みついていた。

 左腕は上方から巻き付いて首を極め、同じく右腕は哲平の右手首を取って、自身の胴を支点に曲がってはいけない方向へ肘を伸ばす。プロレスで言うところのドラゴンスリーパーに似た体勢だ。

 気が遠くなりそうなほどに痛い。なのに身をもがかせることすらできない。

 そしてさらに恐ろしいのが、これでも直巳は十分に手加減をしているという事実だった。なにせまだ首の骨が折れていないのだから。

「冗談だよ、直巳。ぼくがお風呂以外で全部を見せるのは、直巳だけなんだから」

 端からするとかなりアレげな発言だったが、直巳にとっては安心できるものだったらしく。殺人半歩手前の拘束が緩む。

 どうにか目だけ動かして見ると、ミサトはもうスカートの裾から手を下ろしていた。

 哲平はほっと息を吐きながら、しかしいささか残念な想いも拭い切れず──ひぎっ。

 直巳は人の心を読むスキルも身に付けているらしい。

 自力での脱出は完全に不可能、といって他からの助けも望めず、もはや哲平にとっての救いは気を失うことだけかと思われた。

「だけどね、直巳」

 しかし女神はそこにいた。

「直巳もそんなことしたらダメ」

 見た目通りの可愛らしい口調、なのにやけに力強い響き。

 哲平は感動の余りに震えそうになる。

 言動は少しばかりおかしくても、やはりこの子はれっきとした女の子なのだ。美少女ではあるがサイボーグみたいにハードな直巳とは違う。真の優しさを持っている。そして優しさは時として強さに勝る。

 その証拠に、直己は気後れしているようだった。今なら力尽くでも振りほどけそうだ。

 だが哲平はミサトに任せることにした。直巳はミサトのことをとても大事にしているらしい。その心からの言葉が伝われば、直巳も少しは女の子らしくなってくれるのではないか?

 そして動揺を隠せない様子の直巳にミサトは言った。

「かよわい女の子をいじめるなんて、オトコとして見過ごせないよっ」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ