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……はい?反対って、何が?
哲平は思わず足を止めた。
今のミサトの台詞を頭の中で反芻する。
“鉄板は(哲平のことだろう)女の子なのに学ランを着ている”
この文を、ミサトを主語にして含意を反対にしてみれば。
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“ぼくは、男の子なのにセーラー服を着ている”
「…………」
ちょっと待ってくれよ、おい。
ミサト達は哲平と一緒にその場に立って待っている。哲平は改めて外見を確かめる。
一、喉仏。微妙に出っ張っているような気がしないでもない。が、男のものだと断言できるほどではない。
二、胸。無いな。ほぼ真っ平ら。
しかしこれは直巳も似たようなものだ。薄着になれば少しはあることが分るものの、冬服のセーラー服を着た状態ではほとんど膨らみは分らない。
三、下腹部。スカートだから分るわけもない。
これも直巳も同じだが、こちらは直に見て知っているから間違いない。……ここ三年ばかりの間に、新しく生えてきたというのでもない限り。
ミサトは哲平の視線の行く先に気付いたらしい。
「見たい?」
スカートの裾に手をかけ、ちょこんと小首を傾げた。