迷子の子犬 〜兄の事件編〜
登場人物 横島一樹:探偵、香川紀子:草刈の妹、草刈正志:香川の兄
子犬探しから三日後、事務所はまだ閉鎖はしていない。というか閉鎖することを忘れていた。
何が何だか分からないのだ。依頼料をもらったのはいいが…。
ピンポ〜ン
横島
「は〜い。」
男
「すいません。」
40後半といったところか。
横島
「どういった用件でしょうか?」
男
「あの…、私こういうものでして。」
男は、名刺を差し出した。いろは建設?結構変わった名前だ。男の名前は、草刈正志。
男
「子犬を探し出してください。」
横島
「えっ!。」
男
「何か。」
横島
「…いや、なんでもありません。」
用件を聞くと、三日前に来た香川という女の犬と同じ写真を差し出した。
横島
「あれ?」
草刈
「どうしました?」
横島
「三日前に依頼してきた女性と同じ犬ですね。」
草刈
「紀子来てたんですか?」
まさか、旦那さんか?
横島
「旦那さんですか。」
草刈
「いえ、妹です。」
なんと!歳が離れ過ぎてる、ありえない。
草刈
「見えないですか。」
見透かされてる…。
草刈
「私、32の独身です。」
しかも、年をすぐ言う所が彼女に似てる。
でも、独身は余計でしょう。
すると急に草刈は、眉をひそめ語り出した。
草刈
「独身が余計だと!失敬する。」
横島
「あっ!ちょっと待ってください。」
そんなあ。声に出していないのに、なぜ分かるんだ?
すると。
ピンポ〜ン
横島
「はい。」
男
「警察ですが、この周辺でひき逃げ犯がこのマンションに逃げたらしいんです。気をつけてください。じゃあ。」
横島
「えっ!」
警官は、すぐにいなくなった。 特徴ぐらい言ってくれないと、どうすることも出来ないのに。
謎だらけだ。香川といい、草刈といい、警官といい。
あっ!そういえば、香川紀子は旧姓草刈というのか。ふと、そう思った。落ち着かない。
テレビでも見るか。
プチッ
ニュースが流れている。
キャスター
「事件です。ひき逃げ犯が、アルトマンション付近にいる模様です。」
嘘ではなかったみたいだ。
キャスター
「たった今、捕まりました。」
よかった、捕まった。
安心した俺は、テレビを消した。ピンポ〜ン
横島
「は〜い。」
女
「香川ですが、兄の件でちょっと聞きたいんですが。」
横島
「あい。どうぞ。」
香川
「兄に会ったんですか。」
横島
「ついさっきだけどね。」
香川
「あの〜。」
香川は、恐る恐る聞いた。
香川
「兄なんていないんです。」
横島
「ウソ!さっき会ったのに。」
香川
「あの人は、私の夫なんです。」
横島
「嘘付いていたのか。」
香川
「はい、気にしないでください。」
横島
「…。」
言葉も出なかった。
香川
「それじゃ。」
もう何が何だか分からない。寝よう。
何だか煙たい。
ん!焦げ臭い。
火事だ!
目が覚めた。早く逃げないと死んでしまう。
マンションは、燃えていた。ぼーっと立っていた。
どうしよう。行く当てないし…。
はっ!夢か。
俺はどうかしてる。
そう思った。
食事が喉を通らない。この状態が続いていた。
ピンポ〜ン
余力を振り絞り、ドアへと行った。
男
「警察ですが、草刈正志さんについてお話があるんですが。」
何かあったのか?
横島
「どうぞ。お入りください。」
刑事
「昨日、草刈正志さんが何者かに殺害されました。」
横島
「えーーーー!」
刑事
「静かにしてください!」
横島
「すいません。」
刑事
「最期に会った人物があなたなんですよ。」
横島
「そうなんですか。」
刑事
「詳しく話して頂けないでしょうか?」
刑事に前あった事を話した。ここまで来ると、正気でいられない。
いろいろな事がありすぎて整理つかない。
刑事
「何か思い出したら、署に連絡をしてください。」
横島
「はい。」
刑事はそそくさと帰った。
そういえば、香川さんはどうしてるのだろう?
旦那さんが亡くなっていては、悲しむに違いない。
待てよ。最期に会ったのは、彼女じゃないのか?
だって、
「夫に会ったんですか?」
と尋ねていたのに。何故なんだ?
謎は深まるばかりだ。
そうして俺は、調べてみる事にした。探偵として調べなければ、そう思った。
つづく