迷子の子犬 〜探索編〜
登場人物 横島一樹:探偵、香川紀子:子犬を探している依頼人
俺は横島一樹。
脱サラして、探偵事務所を設立した。
だが、今までに事件を一回も解決していない。
なぜなら、子供の頃に探偵に憧れていただけだからだ。
というか、自信はあるが今まで一回も当たらないのだ。そのおかげで、経営ピンチで、依頼人に殴られたこともある。
そんな軽率な行動でした自分に嫌気がさしていた。
あっ!秘書を雇うの忘れてた。今頃雇っても、経済能力が無いからもう遅い。
今月でやめよう。そう思った。そして今日、事務所閉鎖の準備に取り掛かった。
ピンポ〜ン
誰だろう?もうやめようと思っていたところなのに。
ピンポン!ピンポン!ピンポン!
うるさいなあ。ほっとこう。
ピンポン!ピンポン!ピンポン!ピンポン!ピンポン!ピンポン!
仕方ない、出るか。
いや?まさか、クレームしに来たんじゃないのか?
「ちょっと、いないの探偵さん。」
女の人か。
「子犬探してほしいんですけど。」
何?子犬探し?それなら出てもいいかな。
横島
「は〜い、今出ます。」
出ることにした。
女
「早く探し出してください。今日中に。」
横島
「えっ!」
女
「お願いします。」
いきなり急には探せないのになぁ。やっぱり居留守すればよかった。
いや、これを逃したら最後だ。
横島
「はい、分かりました。」
女
「本当ですか。」
横島
「どういった種類でしょうか?」
女
「黒ブチです。」
そういえば、犬なんて詳しくなかった。しかも、犬嫌いだ。
よく考えてから行動しろと母によく言われてたんだ。俺は頭悪い男だ。
女
「どうしたんですか?」
今自分は、遠くの方を向いていた。
女
「しっかり!」
横島
「はっ!」
女
「あの、気絶してましたよ。」
男として情けない。これ以上関わらないでおこう。
女
「あの…。」
横島
「僕なんかでよろしいでしょうか?」
女
「いいえ、そんな事ありません。」
なんて優しい女性なんだ。根性悪い俺なんかに、優しくしてくれるなんて。
女
「あの…。泣いてますけど、どうしました?」
しまった!さらに情けない姿を見せるなんて。
女
「そろそろ本題に戻ってくれませんか?それと二時間以上気絶してましたよ。」
私は、また気絶した。また二時間以上気絶した後、本題へと戻った。
横島
「それで、どこでいなくなったんですか?」
女
「公園です。」
横島
「時間は?」
女
「今日の四時です。」
横島
「へっ?」
ということは、今は八時。なんということだ。
もう暗くなってるぞ。
横島
「かなりやばいですね。」
女
「気になさらなくてもいいです。あと、十時間ありますから。」
ということは、徹夜だ。
仕方ない、俺が気絶するからこうなるんだ。自業自得だ。
女
「その子、捨て犬なんです。」
横島
「はぁ。そうなんですか。」
ただ、頷くだけだった。
話は一通り聞き、捜索することになったが、これからどうする?
女
「あ!名前を言うの忘れてましたね。香川紀子25です。」
ご丁寧にお歳まで言うなんて、ありえない。
香川
「横島さんでよろしいでしょうか?」
横島
「はい。一樹と呼んでください。」
なに言ってんだ、俺?
香川
「はい、喜んで。」
横島
「ついでに、つきあ…あ!」
ついつい昔のナンパ気質が出てしまった。
香川
「月がどうかしました?」
横島
「なんでもありません。気にしないでください。」
余計なことは、言わないようにしよう。そう心に誓った。歩くこと十分、公園についた。
ふと思った。なぜなんだ、どうして香川さんに恋してるんだろう。
確かにかわいいが、こんなことしてる場合ではないのに。
香川
「家の主人が探してくれって言うもんですから。」
がーん、見事に玉砕した。
香川
「横島さん、しっかりしてください!」
また、気絶した。
この後、二時間程気絶した。
もういい加減にしないと、香川さんに睨まれてしまう。もう気絶しないと心に誓った。
香川
「横島さん、彼女いないんですか?」
横島
「何?急に。」
香川
「かっこいいから、つい。」
横島
「へっ?」
香川
「気にしないでください。」
なぜ急にそんな事言うのか?分からなかった。
香川
「あ!もしかして、ニラなの?」
そこにいたのは、大きな犬だった。
香川
「見つかりました。ありがとうございます。」
横島
「へっ?」
言ってる内容と違うのではないか?
すると彼女はこう言った。
香川
「私もよく分からなかったもので。」
なぜそれを言わない?
香川
「じゃあこれ、依頼料三十万。じゃあ、帰りますね。」
横島
「あの!」
彼女は、すぐに帰ってしまった。
なんだったんだろう?
犬の大きさの違いといい、ブチもなかった。
おまけにニラと言う名前らしい。けど、依頼料は多すぎる。
こんなにもらっていいものか?ただ歩いただけなのに…。
まあいいかと思い、帰ることにした。
まさか、後で事件が起こるとは、この時、思いもしなかった。
つづく…