島田君の事情 2/4
おもしろい話を耳にした。工場の今川さんと鈴木さんが自宅にパソコンを購入してインターネットを始めた。今川さんが買ったのは Gateway 2000 P5-75 だった。
「スペックは島田君のほうが上だよ。でも俺はホームページを見られたらそれでいいから」
「どんなホームページを見てるんですか」
「国産車の改造とか集会の様子とか。車は買えないけどパソコンなら貯金でなんとかなるかなって思って。彼女も認めてくれたし」
今川さんは女の人といっしょに暮らしているんだ。パソコンの使い方も生活も人それぞれだ。鈴木さんはデジカメでGatewayの箱を撮影していた。
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[TALK]
Title : インターネット
From : SHIMADA
みんなどうしてるの。
やっぱり最新のパソコンを買うべきですか。
Title : Re: インターネット
From : タケチー
私はQuadra 700だから問題ない。
島田くんはNECだっけ。
PC-98シリーズでやってる人は多いよ。
ウェブは妥協する必要があるけど。
Title : Re: インターネット
From : SHIMADA
Windowsを覚えると仕事の役にも立つので
新しいのを買いたいです。
就職用のスーツを買わずにすんだので
10万円くらいなら出せます。
無理でしょうか。
Title : Re: インターネット
From : タケチー
無理ではないよ。
私なら秋葉原で探すかな。
ショップが部品を集めて組んだパソコンが投げ売りされてるでしょう。
あれは性能が低いんじゃなくてメモリ不足だけなことが多いんだよね。
DOS/Vだからどうにでもなると思う。
メモリを挿すときは静電気対策で服を脱ぐのが作法だよ。
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そういうわけで週末に秋葉原を歩いてみた。いつの間にか増えたPC/AT互換機専門店がそれぞれの技術を誇示している。
その象徴がショップブランドのパソコン。ケース、電源、ビデオ、サウンド、マザーボード、CPU、モデム、HDD、CDその他。お店のおすすめの部品を組み合わせてエンブレムまで付けて並べている。
メモリはたしかに最近まで高騰していた。だから価格を下げるためにメモリをケチった。そうしたら性能が低くなった。これの売れ残りがどこかにあるのだ。風が吹けば桶屋が儲かるみたいな話だろうか。よく考えたら違うのにそんな連想をした。
6万円、7万円、5.5万円。うーん。高いのか安いのかわからない。安いは安いけど使い物にならなかったら意味がないぞ。
何時間も歩いて冷たい缶コーヒーで一休みしていたら路地裏の店に目が止まった。大小のCRT、洗濯機、扇風機、パソコン。あんなふうに山積みにしてまともな商品に見えないぞ。
「4万円」
探していた売れ残りパソコンはここがいちばん安かった。
「中古品じゃないぞ。中を見たかったらこっちだ」
正直、見てもわからない。
「ばらして部品で売ればもっと高くなる。でも手間がかかるだろう。次のマシンをどんどん売りたいから古くなったらそのまま流してしまう。それがこれだ」
「これってCPUは」
「本物の486」
「メモリは」
「72ピンSIMMの4MBが2枚で8MBだ」
「買います」
希望通りの条件だったので即決した。それが意外だったのかおじさんは笑い出した。
「よしよし。駐車場はどこだ。近いなら台車を貸してやるよ」
「いえ、電車なんです。送ってもらえますか」
「うちは発送はしてないんだ。余計なサービスはしないから俺ひとりで店がまわる。どうする、買うか買わないか」
「買います。持って帰ります」
15kgはある白いパソコンをおじさんは段ボールでくるんで紐で十字に縛った。
「こっちに背中を向けて」
それを背中に乗せて太めのビニール紐で肩にぐるぐると縛り付ける。かっこ悪い。
「まっすぐ帰ったほうがいいぞ。まいどあり」
汗だくになって帰宅するとリムネットからアカウント開設の通知書が届いていた。まだモニターとキーボードとマウスとメモリと Windows 95 を買ってないのに。




