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世界のカケラ  作者: viseo
崩壊編
169/171

新たな路 3

 いつの間にか、無意識に掃き続けていたらしい。

 思ったよりも大きくなってしまった落ち葉の山に、ハピナー達がもぐりこんで遊び始める。

 中に入っては、ぴょこりと顔を出して、ばさばさと散らばしている二匹が、その都度、嬉しそうにぴーぃぴーぃと鳴く。

「こらこら。せっかく集めたんだよ?」

 そんな私の気持ちは知らぬとばかりに、嬉しそうにきらきらした目で見上げられれば、強くは咎められない。

 

 ――ううっ、可愛いなぁ。もう。

 そう思いながらも、いたずらっ子の青いリボンをつけたハピナーの名を呼べば、抱きつくように飛んできて、首筋をくるくると回りだした。

「わわっ!――エーフ?!」

 その勢いとくすぐったさに、思わず落ち葉の上に尻餅をつくと、今度は赤いリボンをつけたハピナーが、私の上に飛んで落ち葉を舞い落とし始める。

「ちょっ、アルも!」

 なんか……二匹とも、浮かれてる!?

 もしかして、大好きなリンゴでも見つけたのだろうか。

 シグルスが連れて来てくれたハピナーは、シルヴィアの古塔にいた二匹で、リンゴの蜂蜜がけを食べさせてしまったからか、リンゴに特に目が無い。


 まるで結婚式のライスシャワーのように降りしきる落ち葉の、その向こうから差し込んでいた秋の日差し。

 ――それが、ふと、さえぎられた。


「まさか、こんな所にいるとはな」


 あまりの衝撃に、息が止まる。

 はらはらと舞い散る落ち葉のカーテン。

 その向こうの影は、逆光で見えない。――けれど。

 ど、して――…。


「探しましたよ」

 心臓が大きく跳ねたのも、耳に届いた声も、幻なのだろうか。

 はらりはらりと、ハピナー達が遊んでいた最後の落ち葉が、大地へと落ちきる。

 落ち葉の中でへたり込む私と、いつの間にか傍に来ていた二頭の馬。

 そして忘れることなんて出来ない――二人の、姿。

 

 なんで。

 なんで、ここが――。

「シルヴィアの枕の下にあった折鶴を見て、確信したんです」

 優しく微笑む琥珀の瞳と、相変わらずの豊かなヴァリトンボイス。そして、

「ここは一番最初に調べたんだがな――。あまりに完璧に痕跡が残っていなかったから、流石に騙された」

 今考えれば、かえって盲点だったな。――そう話す、どこか皮肉ったいつもの口調。


 白昼夢にも程がある。

 ――ダイオキシンには、幻覚作用もあったっけ……?

 まだ火をつけてもいないのに、馬鹿なことを思いながら呆然とへたり込む私の前で、二人は慣れた動きで馬から降りて私の手を取り、立ち上がらせる。

 その手の暖かさがどうしても信じられなくて。

 どうして――。と、掠れた声で呟いた。


 呆然とした私の問いかけに、いたずらが成功した子どものように、二人は小さくちらと笑う。

「どうして。の先は?」

「………。」

「どうしてここに居るのか。どうして探したのか。――それとも、どうして放っておいてくれないのか――…でしょうか」

 穏やかなレジデの声に、茫然自失のまま、ゆるゆると首を振る。


 どうして、ここが分かったの。

 どうして、探しに来てくれたの。

 そして何より、どうして……身勝手な私の行動を、二人は怒らないの。

 ――そんな幾つもの答えが、胸の内でぶつかり合う。

 すると、考えたことが顔に出ていたのか。

「貴方が何を考えて行動を起こしたのか。思い当たることが多すぎて――、咎めることなど出来ませんよ」

 そう、労わるように微笑むレジデに、

「お前が無事で――、良かった」

 と、私の髪の中にくしゃりと手を入れるフォリア。


 そんな二人の視線に耐え切れなくて。

 思わず俯いた私を撫でる、彼の指先は優しかった。


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