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世界のカケラ  作者: viseo
崩壊編
151/171

信ずるもの 18

 分かっていた、本当は。

 私が二人に強く惹かれている事も……、この気持ちが決して誰も幸せにしない、成就しない気持ちだと言うことも。


 二人への気持ちは、異世界の生活での不安と、恐怖と、生への執着と。

 複雑に絡み合いすぎて、個別に向き合えないぐらい、渾然一体となって私を揺さぶる。

 ――この気持ちが、恋愛感情なのか。

 ――私は誰を好きなのか。

 そんな事を浮き彫りにして何になる。


 教団に管理されて生きてきたレジデ。

 スパイを狩るための猟犬であるフォリア。

 恋愛は、私達の間に最も持ってきてはいけない『猛毒』でしかない。

 異端である私達に、未来は無いのだ。

 大切に思ってもらっているだけで、充分じゃないか。


 だから自分の感情を、分からないふりをしていた。

 認めるわけには、いけなかったから……。

 二人と肌を重ねた今ですら、自制が効かない恋愛感情なんていらないと、心の底からそう思う。


 ……そう思うのに、それでも目を閉じれば、別の情景が見えてくる。


 紫の宝玉が埋め込まれた、机の上の、白い仮面。

 あっけなく流れた麻衣子の血。

 帰れない、元の世界。

 二度と会えない、大切な人たち。


 隠しきれない恐怖と、深い絶望と。

 それらに追い立てられるように、身体が、気持ちが、彼らを求める。


 傍にいて。

 キスして。

 抱きしめて。

 そして、すべてを忘れさせて――。

 死にたい。

 消えたい。

 そして、死にたくない――。


 矛盾した考えが空転し、虚空に消える。 

 身体と、気持ちと、考えが。

 すべてが自分を裏切って、それぞれが好き勝手に動き出し、制御出来ない。

 そうして全てを忘れて、一度でも気持ちを重ねてしまったら――?


 後に待つのは、地獄だ。


 子を成す道具として、二人以外の男と性交、出産しろと言うなら、耐えられる。

 この地に囚われ続けられるのだって、今更だ。

 けれども、二人に抱かれたら私は崩壊する。


 彼らの死を受け入れられるほど、私はそんなに強くない……。



 私たちは分かっている。

 私たちに未来は無いと。

 

 だから一歩離れて、見つめあう。

 許される時まで。

 ほどなく訪れる……、それぞれの、別れの時まで。


 私も。 レジデも。 フォリアも。

 愛していると口に出せるほど――…。


 私たちは、子供じゃない。


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