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世界のカケラ  作者: viseo
崩壊編
141/171

信ずるもの 8

 ストレスで生理がとまった。

 色が白くなって、やつれた。

 東洋人の顔立ちの私が、彼らから少女だと言われることに、ずっと嫌悪感があった。

 けれども、ある日ふと思う。

 ――印象の違いは、痩せてやつれただけでなるものか?

 誰にも確かめれない、いっかな晴れない疑問。

 

 それは此方で麻衣子をはじめて見た瞬間、胸の中で膨れ上がり、彼女が私を見て驚いた口元で確信した。

 だって……若い。

 確かにあの時、彼女はそう言った。


「そうでしょう?レジデ」

 荒く息をつき、床に崩れたレジデの頭を、そっと近寄り膝に乗せる。

 傷ついた彼を抱き寄せるようにかき抱いて、耳元に落とした言葉。

 痺れ薬で苦しみながらも、頑迷に抵抗を続けていた瞳の力が、戸惑ったように揺れる。

 そうして苦しそうに、でもついに、諦めたように微かに頷いた。


「私は生死をさまよった。一命は取り留めたけれど、それの最後の治療をしたのは彼らよ。」

 シャムールが小さく息を飲む。 

 冬枯れの荒れた川で、死に掛けた。

 緋色の間でも証明されたように、それは本当だ。

 そしてそれの最後の治療――傷跡の治療をしたのは、レジデとフォリアだ。


「レジデール。……それは本当ですか。」

「――…俺と、フォリアで治療をかけた。……細工を施したのは、…その時だ。」

 意識を失わせないために、本当に弱い痺れ薬だったのか、何とか口だけはまわるようになってきたレジデが、それでも苦しそうに話す。

「……相変わらず小賢しいですね。レジデール。」

 小さな舌打ちが部屋に響く。

「二人の術者と時を合わせる必要性を持たせておく事で、自分の助命を考えたのですか。」

「……そ、うだ。」


 本当は、半分違う。

 私の時間が遡り始めたのは、多分もう少し前。

 時の館での治療が、完全に身体に馴染む前に外に出て、リバウンドをうけた。多分、あの時だと思う。

 けれども、それは必要の無い情報だ。

 

 暫く思案気な表情をしていたシャムールが、何人かに指示をしてフォリアの容態を確認させる。

 元々、政略の駒に使えるフォリアは、この場で殺す気は無かったのだろう。

 脈を取った兵士の報告を聞いて、小さく頷いた。


「しかし考えようによっては、光気を持つレジデールと、筆頭公爵家の血を引くウィンス卿。――悪くは無い、取り合わせとも言えましょう。」

 先ほどの能面の生成のような顔ではなく、いつもの、あの人間離れした美しい微笑みを浮かべ、シャムールはレジデと私の傍に近寄る。


「小賢しいお前も、まさか鍵の一つであるウィンス卿が、この地に訪ねてくるとは思わなかった、そういう事ですかね。」

「―――。」

 答えぬレジデに、答えを見たのか。

 満足したかのように、辺りを見回し、玲瓏たる声を張り上げる。


「レジデールと、ウィンス卿の手当てを急げ!!神子姫様のお身体をお戻しするまで、決して二人の命を損なわぬように!」


 多くの信徒と兵士に彼らと引き剥がされる。

 こうして私は、この地に完全に、――繋がれた。

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