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あいつの人生、終わらせましょう! ~ざまぁ探偵・浅間天音のスッキリ事件簿~  作者: 遠野九重


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4/5

第4話 おかしいのはあいつだよ

登場人物


浅間天音:合法的、非合法的な手段でクズの人生を終わらせる女探偵。

影山:名字しかわからない大男。暴力が得意。

水谷真帆:デザイナー。暴行被害→集団ストーカー被害。

柊一真:全国各地に拠点を持つ大手法律事務所『リーガルス』の創設者――柊誠也の御曹司。加害者。


「あんた、おかしいよ」


 この一言の話をしたい。


 殴る蹴るは最悪だ。

 でも、もっとタチが悪い暴力がある。


「お前の頭がおかしい」って繰り返すこと。


 殴られたら痛い。蹴られたら痣ができる。

 自分が被害者だって自覚できる。


 でも「おかしいのはお前のほうだ」って言われ続けたらどうなる?


 自分の目が信じられなくなる。

 そのうち「被害なんてなかった、おかしいのは自分だ」って思い込まされる。


 ガスライティング。

 被害者から「被害者でいる権利」を奪う行為。


 個人的に、全暴力の中で最低だと思ってる。


 五月下旬。

 梅雨が近い。空気がじっとりしてきて、薄着だと中途半端に汗をかく季節。


 ロースンの新商品『とろろ杏仁マンゴー』。

 あたし——浅間天音は事務所の椅子でこいつと格闘中だ。


 最初、あたしはこれを『とろ()ろ杏仁マンゴー』って名前だと思ってた。

 とろとろの杏仁豆腐にマンゴーソースを掛けた定番のスイーツ。

 そんなイメージだった。


 事務所について、開封して――気付いた。


 これ、とろろが入ってる。

 杏仁豆腐にマンゴーソースをかけて、さらに、長芋のすりおろし(とろろ)を載せたシロモノ。


 とろとろではある。

 

 ふわふわでもある。


 けど、長芋の味があまりにミスマッチ。

 本当にあたしはスイーツを食べてるのか、って気持ちにさせられる。

 定期的にリリースされる『ロースンの狂気』シリーズ(非公式名称)だ、これ。

 

 せめて長芋がサツマイモだったらマシだったかもしれないね。

 マイナス800点。


 そんなふうに採点していると、突然、ドアが開いた。


 ノックなし。

 でも入り方はおずおず。長いこと迷った末に勢い余って開けちゃったパターンだ。


 女性。

 20代後半。


 頬がこけてる。

 鎖骨が浮いてる。


 急に痩せた体型だ。

 たぶん精神的に追い詰められてる。


 でも目はまだ死んでなかった。

 ぎりぎりのところで何かを手放していない目。


「あの……大ノ手探偵事務所さん、ですか」


「そうだよ。入って」


 彼女は椅子に浅く座って、膝の上でバッグを抱えた。


「ご依頼かな?」


「……はい。ただ、普通の依頼とは違うかもしれなくて」


 少し間が空く。


「わたしが頭おかしいだけなのかもしれないんですけど……。

 集団ストーカーが妄想じゃないって、確かめてほしいんです」


 へえ。

 なかなか面白い依頼だね。


 こんなのは初めてだよ。



◇◇◇



 登場人物の紹介だ。


 被害者——水谷真帆、28歳。

 広告代理店のデザイナー。休職中。


 1年前に暴行被害。

 被害届を出して、証拠も揃えて、正しい手順を全部踏んだ。

 結果は不起訴。


 以来、「誰かに見られている」感覚が消えない。体重は10キロ落ちた。


 あの手首の細さ。

 ペンタブを握る力も残ってなさそうだ。


 プラス300億点。

 この状態でここまで来た。それだけで300億の価値がある。



 最終的な加害者も明かしておこう。


 柊一真、30歳。


 全国各地に拠点を持つ大手法律事務所『リーガルス』の創設者――柊誠也の御曹司。

 パパの看板で守られてきた七光り坊ちゃん。


 大学時代から暴力沙汰を繰り返してきたらしい。

 全部パパのコネで処理してきた。


 詳しくは後で話す。先にマイナス点だけつけとく。

 マイナス1兆点。桁が足りないね。



◇◇◇



 真帆ちゃんの話を聞いた。

 曰く――


 1年前。

 会社の飲み会の帰り、柊一真に暴行された。


 翌日に被害届。

 診断書あり。

 物的証拠あり。


 まっとうな手順を踏んで、勇気を振り絞って声を上げた結果。


 不起訴。


 柊誠也。

 法律の世界で権力を握る男が、息子の盾になった。


 正しいことをした人間が潰された。

 ここまでで十分最悪だけど、地獄の本番はここからだ。


 不起訴処分のあと。

 真帆ちゃんの日常が壊れ始めた。


 通勤路で同じ顔を何度も見かける。

 マンションの前に見知らぬ車が停まる。

 深夜の無言電話。

 誰もいないのに鳴るインターホン。

 職場への匿名通報——「水谷真帆は虚言癖がある」。


 ひとつひとつは些細に見える。

 でも毎日、毎日続く。

 じわじわ、確実に。


 周囲に訴えても受け流されるだけ。

 ひどいときは「頭おかしいんじゃない?」とまで言われた。


 学生時代からの親友に相談すると――


「真帆、いろいろあったもんね……。

 カウンセリング、受けてみたら?」


 きっと真帆ちゃんを気遣っての言葉だったのだろう。

 けど、それは孤独を加速させるだけだった。


 真帆ちゃんはここで折れなかった。

 体重は10キロ落ちたけど、心はまだ生きてた。

 強い子だ。


 探偵事務所に調査を依頼する。

 3件。


 すべて、翌日に「調査不可」という返答。

 

 最後に行ったところで「大ノ手さんなら……」と言われたらしい。


 オーケー、なるほどね。

 このあたりの探偵事務所じゃ「調査不可」は一種の暗号だ。


 ――ヤバいヤツが関わってるから大ノ手に任せろ。

 

 そういう符丁になってる。

 3件目でウチを紹介するのも定番のコース。


 そうやって()の眼をくらますってわけ。


「依頼、引き受けていただけますか……?」


 そう尋ねる真帆ちゃんの声は震えてた。

 バッグを握る指先が白い。


 あたしは真帆ちゃんの目を見た。まっすぐ。


「任せといて。最後まできっちり調べてあげる」


「ほんとう、ですか」


「もちろん。あんたの頭はおかしくない。あたしが証明してあげる」


 真帆ちゃんの目から涙がこぼれた。

 堪えようとして、駄目で、両手で顔を覆う。


 そりゃ泣くよ。

「お前がおかしい」と言われ続けた1年間。

「おかしくない」って、たった一言を言ってもらえるまでの距離。

 どれだけ長かったか。


 事務所の奥で、権田の赤ペンが一度回った。


 受託のサイン。

 

 普通じゃない依頼は、うちの得意分野だ。




◇◇◇



 真帆ちゃんには「依頼したけど断られた」って顔で帰ってもらう。

 監視してる連中に悟らせちゃいけない。


 作戦はカウンターサーベイランス。

 逆監視。


 真帆ちゃんに普通の生活を送ってもらう。餌だ。

 あたしは距離を置いて「真帆ちゃんを見張ってるやつ」を見張る。


 ただ、あたし一人じゃ網が足りない。


 だからあいつを呼んだ。


 前回『名簿屋』の連中を撃退するのを手伝ってくれた黒い影――


 影山。


 名字しかわからない男。

 年齢不明。

 本名不明。

 経歴なし。

 公的記録がこの世のどこにも存在しない。


 身長190近い。

 肩幅が広くて、分厚い体格。


 物静かで、顔はピシッと整ってる。

 日本人離れした彫りの深さ。


 もしかしたらハーフかも。

 ギリシャの彫刻みたい。


 得意分野は暴力。

 生きるか死ぬかの鉄火場ならこの男。

 無人島に一人だけ連れていくなら、迷わず影山だ。


 48時間。

 真帆ちゃんの周囲を張った。


 結果。


 集団ストーカーは実在した。


 いや。

 ストーカーなんてチャチなもんじゃない。


 3チーム。

 計7名。

 ローテーション監視体制。


 朝の組が2名。

 昼が3名。

 夜間が2名。


 シフトが組まれてる。


 影山がそのうち1名を尾行して、待機用の車両と中継拠点のワンルームまで突き止めてくれた。

 あの体格で気配を消せるのがそもそも意味わかんないけど、できるものはできる。



◇◇◇



 並行してハッカーの氷室にも連絡。


「食べられる鍵。これはなに?」


「クッキー。……まあまあかな、57点」


「天音、辛口採点」


「もっと精進しな。仕事いい?」


「うん」


「柊一真、30歳。父親は柊誠也法律事務所のリーガルス。

 一年前の暴行事件のカルテと警察記録、全部洗って。改ざんの痕跡があるはず」


 こいつが不起訴になってから、真帆ちゃんの集団ストーカーは始まった。

 たぶん関与しているはずだ。


「面白い。やる」


 翌日。


「天音。掘れた」


「もう?」


「ほめて」


「ありがとね。あんたは最高のハッカーだよ」


「えへ」


 今の反応は可愛らしいね。

 98点。


 氷室が掘り出した情報は予想を超えていた。


 ひとつ。

 真帆ちゃんが受診した病院のカルテデータが書き換えられてた。

 傷の程度が実際より軽く改ざんされてる。上書き前のログが残ってたらしい。

 消したつもりだったんだろうけど、氷室の前じゃ甘いよ。


 ふたつ。

 監視チームの一部が、柊誠也の法律事務所と顧問契約を結んでる調査会社の人間だった。

 パパの事務所と直通パイプ。


 みっつ。

 柊一真についての事件記録が、警察のデータベースから消失していた。

 手際が「異常にきれい」と氷室は言う。

 かなり腕利きのハッカーが関わっているかも、とのこと。

 まあ、見事に復元できたんだけどね。



 さらに分かったことがあった。


 柊一真の暴行被害者は真帆ちゃんだけじゃなかった。

 過去に2名。

 どちらも不起訴。

 その後の流れも同じだ。

 そして集団ストーカーを周囲に訴え、白い眼を向けられる。

 頭がおかしいんじゃないかと言われ――心を病み、外を出歩けなくなった。


 常習犯だ。

 暴行して、パパに揉み消させて、集団ストーカーでトドメ。

 それをパッケージにして繰り返してきた。


 許せないね。

 

 ただ、これはあくまで推理だ。

 裏付けが欲しい。

 

 だから七瀬遊真にも声をかけた。


 歌舞伎町のナンバーワンホスト。顔面偏差値は暴力。

 変装と話術の天才。

 園田彩花ちゃんの事件(第2話)でカスハラおばさんから情報を引き出す時にもお世話になった。


「七瀬、ちょっといい?」


「今度メシ奢ってくれるなら」


「吉野家でいい? それか松屋」


「つれないなあ。ま、いいけど」


 最終的になか卯になった。

 飲むスイーツシリーズの新作、タピオカ宇治抹茶ラテが気になったからだ。


 それはさておき――


 七瀬には変装して柊の行きつけのバーに潜入してもらった。

 仲間と飲んでる柊の席の近くに陣取って、会話を拾う。


 録れた音声がこれ。


「遊びだったんだよ。あの子がそう受け取らなかっただけ。不起訴は不起訴だ。もう終わった話だろ? ――それよりこれ、見てくれよ。めっちゃビビってんの。笑えね?」


 柊は仲間たちにスマートフォンを見せる。

 

 そこに映っていたのは、集団ストーカーに怯える真帆ちゃんの姿だった。


 最悪。

 

 発言が秒で矛盾してる。


 終わった話とか言いながら、真帆ちゃんを追い詰めて遊んでる。


 完全に逆恨み。

 根に持ちまくってるじゃん。


 被害者が壊れていくのを見て笑ってるクズ。


 採点不可。

 時代が時代なら、銃を持って乗り込んでたところだよ。




◇◇◇




 手札がかなり集まって来た。


 48時間分の監視記録。3チーム7名の実態。

 カルテ改ざんのログ。

 警察記録の不審な消失。

 監視チームと柊の法律事務所を結ぶ線。

 過去の被害者2名の存在。

 柊一真本人の音声。


 でも、もうひと押し欲しい。


 柊本人が集団ストーカーを指示していると示せる、決定的な物証。


 マトモにやってても手に入らないだろうね。


 だからあたしは仕掛けた。


 昼間の駅前。

 人通りの多い場所で、真帆ちゃんと堂々と接触した。


 監視チームに見せつけるように。



 

 ――そのあとの展開は狙い通りだった。




 翌日の夜。 


 真帆ちゃんの仮住まいの周辺に、監視チームとは別の人間が集まり始めた。


 10名。

 威嚇と排除が目的の実行部隊。


 暗い路地裏。

 あたしと影山。

 2人だけ。

 最強のコンビ。

 

 先に動いたのは影山だった。


 先頭の男に向かって低く踏み込む。

 あの大きな体が嘘みたいに沈んで、相手の懐に潜り込んだ。

 顎への一撃。


 男が後ろに吹っ飛んで、後ろの2人を巻き込んで倒れた。


 3秒で3人。


 残り7人が囲もうとする。


 あたしは右から来たやつの膝にヒールを叩き込んだ。

 体勢が崩れたところにバッグを振り上げてこめかみへ。

 

 もちろんバッグは鉄板入りだよ。

 

 強烈な一撃。

 脳震盪の手応え。

 相手は横に崩れ落ちた。



 あたしが1人片付ける間に、影山はもう3人沈めてた。


 音がしないんだよ、この男。


 振り向くたびに地面に転がってる人間が増えてる。


 残り3人。

 逃げようとしたけど遅い。


 影山が1人の襟を掴んで壁に叩きつける。

 

 2人目は走りかけたところを追いつかれて、両肩を外された。

 絶叫が響く。


 最後の1人はあたしが処理。

 振り向きざまにヒールの踵を鳩尾にめり込ませて終了。


 10対2。所要時間、1分かかってない。


 片付いた。


 と、思った瞬間。


 背後の物陰から気配。


 もう1人。

 あたしの背中めがけて飛び出してくる。


 反応が遅れた。


 でも、影山のほうが速かった。


 あたしの横をすり抜けて、飛び出した男の腕を掴む。

 そのまま地面に叩きつけた。


 重い音。

 男は動かなくなった。


「さんきゅ」

「無事ならいい」


 おっ、今日最初の発言いただきました。

 相変わらず渋い声だ。


 さて。


 倒れた連中のポケットを探る。

 スマートフォンにはロックが掛かっていた。

 あたしはポケットからボールペン型の装置を取り出す。


 これは何かって?

 企業秘密。


 簡単に説明すると、電子ロックの解除装置だね。

 

 ……ビンゴ。


 連中のスマートフォンには柊一真とのやりとりが残っていた。


 集団ストーカーの指示、報告。

 今回の襲撃についても文字で残ってる。

 甘いねえ。

 こういうのは声か、紙でやりとりするもんだよ。

 

 ほどなくして真帆ちゃんがやって来た。

 戦いが終わってすぐにLINEで呼んでおいた。


 ここまでに得た情報を手短に伝える。


「真帆ちゃん。あんたの依頼は『妄想じゃないことの確認』だったね」


「……はい」


「確認できたよ。集団ストーカーは確かに存在した。

 これにて依頼完了ってことにしてもいいけど、今なら追加サービスもあるよ」


 あたしは右手の人差し指を立てる。


「1番。

 転がってる連中と、集めた証拠。

 こいつを使って柊と取引する。あんたへの集団ストーカーを辞めろ、ってね」


「……2番はなんですか」


「やるなら徹底的に、だね。

 柊の人生を終わらせる。

 二度と表に出てこれないところまで追い込む。

 どっちがいい?」


 真帆ちゃんは一瞬も迷わなかった。


「2番でお願いします。

 あの男に死んだ方がマシだって思わせてください。

 ――わたしは、わたしの仇を取りたいんです」


 声は静かだった。

 でも、あの細い体の奥でとんでもない熱量の怒りが燃えてるのが見えた。


 1年間。

 否定されて、疑われて、「おかしいのはお前だ」と言われ続けて。

 それでも折れなかった人の怒り。


「了解。全力で潰す」



◇◇◇



 まずは110番通報。


 パトカーから出てきたのはおなじみのイケメン。

 轟慎吾だった。


「浅間さん! 今回もすごい——」


「今忙しい」


「はい……」


 しょげる大型犬にかまってる暇はない。


 排除要員11名は暴行未遂の現行犯逮捕。

 こっちは正当防衛ってことで。


 さあ、ここから忙しくなるよ。


 手札を片っ端から切っていく。

 

 警察、知り合いの大河原弁護士、あとは表に出せない色々なコネ――。


 思いつく限りすべてのルートで柊一真の悪行をぶちまける。


 ああ、そうそう。

 

 過去の被害者2人ともコンタクトを取って、新たな告訴状を出してもらった。

 

 かくして――


 柊一真。

 脅迫罪、ストーカー規制法違反などなどで逮捕。

 余罪もたっぷり。


 警察が来た時に「親父を呼べ!」と叫んだらしいけど、呼ばれて出てきたパパもそのまま逮捕された。


 なにせ息子と一緒になって違法行為をしてたからね。

 当然だ。


 過去の暴行についても再捜査のメスが入るらしい。


 さらに――

 登録者数180万人、日本だけでなく海外でも人気のニュース解説系心理学者Vtuberの『Ren』が()()()()この件を取り上げた。


『集団ストーカーって、だいだいは妄想なんです。

 心療内科で診てもらったほうがいい。

 ……って昨日までは言えました。

 けーれーど、名門法律事務所の御曹司くんがやらかしちゃったんですよ。

 おかげで事情が変わっちゃったんですよねー』


 柊一真の所業は日本中が知るところになった。

 彼はもちろん父親の柊誠也、そして弁護士事務所『リーガルス』にも批判が殺到した。


 話はさらに広がる。

 今回の事件はインターネットを通じて世界中に広がり、海外の弁護士団体や人権団体が声明を発表。

 ここまで来ると日本の弁護士業界も動かざるをえない。

 柊誠也に懲戒請求が入った。

 法律事務所ごと終わりだね。

 Xじゃ『()リーガルスw』なんて揶揄られてる。

 

「遊びだったんだよ。もう終わった話だろ?」

 

 柊一真はそう言った。


 不起訴も遊び。

 集団ストーカーも遊び。

 人をぶっ壊すのも全部遊び。


 じゃあ教えてあげるよ。

 遊びにはルールがある。

 負けたら退場。


 あんたの番だ。

 さよなら。

 本当に終わるのはあんたの方だったね。

 



 ただ――


 柊一真がこれまでに起こした暴力事件。

 警察のデータベースから記録が消失していたこと、覚えてる?


 天才ハッカーの氷室が「異常に綺麗」なんて珍しい褒め言葉を使ってたやつ。


 あれをやったのは誰なんだろうね?


 ちょっと調べたけど、今回、逮捕された連中にそれっぽいヤツはいなかった。

 

 もしかしたら背後にはまだまだ闇があるのかもしれないね。


 



◇◇◇




 事件解決から少し経ったある日のこと。


 あたしがロースンのスイーツコーナーを眺めていると、声を掛けられた。


「浅間さん!」


 真帆ちゃんだった。

 こけていた頬が元通りになっていた

 目にも光が戻ってる。


 隣には同年代の女性がひとり。


「真帆がお世話になりました。本当にありがとうございます」


 聞けばこの人、真帆ちゃんから集団ストーカーの相談を受けて「カウンセリングに行きなよ」と言った本人らしい。


 今は何度も謝って仲直りしたとのこと。


 いい友達じゃん。

 間違えたけど、ちゃんと謝れる人だ。

 プラス500点。


「浅間さん、それ買うんですか?」


 あたしの手にはロースンの『超・強火焼きプリン』。

 パッケージには「徹底的に焼きました!」の文字が踊ってる。


「それ、焼きすぎて炭の味しますよ」

「そうなんです、苦いだけで」


 2人揃って止めてくる。


「買う。自分の舌で確かめないと気が済まないんでね」


「えー」


「じゃあ感想教えてくださいね!」


 LINE交換。

 真帆ちゃんと友達が、笑いながら去っていく。


 仲良さそうだ。


 あたしは店を出て、さっそく『超・強火焼きプリン』を開封した。


 ひとくち。


 …………。


 炭じゃん。


 0点。


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