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あいつの人生、終わらせましょう! ~ざまぁ探偵・浅間天音のスッキリ事件簿~  作者: 遠野九重


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第2話 お客様は神様じゃない

登場人物


浅間天音:合法的、非合法的な手段でクズの人生を終わらせる女探偵。

七瀬遊真:歌舞伎町の高級ホストクラブ「グラスシャード」のナンバーワン。変装の名人。

園田彩花:カスハラ被害者

「小林」:傲慢な客

「お客様は神様です」


 有名な言葉だね。


 元ネタは歌手の三波春夫。

 ステージに立つ者として、聴衆を神だと思って全身全霊で歌え——という心構え。


「私は客よ! お客さまは神様でしょ!?」


 などと、客が自分で振りかざしていいセリフじゃない。


 なのに。


 この言葉を錦の御旗にして、店員の人格を踏みにじるクソ野郎が令和にもまだ棲息している。


 マイナス1億点。


 あんたは神じゃない。

 ゴミだ。


 4月下旬。

 桜はとっくに散って、新緑がまぶしい季節。


 あたし——浅間天音は、事務所でロースンの「特厚キャラメルシュー」齧っていた。


 特濃じゃなくて特厚、要するにガワが分厚くてシューはしょんぼり。

 なんだこの迷商品。

 でもガワがラスクみたいでおいしいから、まあ、80点。


 まあ、スイーツレビューもここまでにしておこう。


 仕事の話だ。


 うちの事務所——大ノ手探偵事務所は、新宿の雑居ビルの3階にある。


 ここに来る人間は、たいてい他の全部に門前払いされてからたどり着く。


 警察。

 弁護士。

 労基。

 ハラスメント窓口。


 どこにも助けてもらえなくて、最後の最後、縋るようにここへやってくる。

 場末の探偵事務所。

 けれど実態は……秘密ってことで。


 今日の相談者は若い女の子だ。


 小柄。

 華奢。

 手が赤い。

 水仕事で荒れてるし、飲食業かな。


 いちばん印象的だったのは、瞳だ。

 

 光も、温度もない。


 彼女のような状態を『眼が死んでいる』って言うんだろう。

  

「あの……相談、したいんですけど。大丈夫ですか」


「うちはいつでも大歓迎、けど、あんたは大丈夫じゃなさそうだね。座りなよ」



◇◇◇



 今回の登場人物を紹介しよう。


 被害者——園田彩花、22歳。


 大手カフェチェーン「デイリーカフェ」新宿南口店のスタッフ。

 高卒で新潟から上京して4年目。

 実家には頼れず、一人暮らし。


「大丈夫です」が口癖。


 どんな目に遭ってもまず「大丈夫です」。


 内側に抱え込んで、ある日突然、ボロボロ涙がこぼれるタイプ。


 自殺する前にうちに来てくれてよかった。

 プラス1000点。

 


 加害者——名前、不明。


 デイリーカフェ新宿南口店に通う常連の女性客。

 店では「小林」と名乗っている。


 50代前半。

 昭和みたいなギラギラの服、ブランドバッグ、ジェルネイルの3点セット。

 趣味悪くない?


 外見だけじゃなく内面もクズだ。


 口元に笑みを浮かべながら、22歳の女の子を精神的に壊しにかかる。


 容姿いじり。

 土下座の要求。

 頭からコーヒーをぶっかける。


 絵に描いたようなクソ客だ。

 マイナス10億点。


 ただ――

 

 あたしの中に引っかかっていることが2つ。


 ひとつ。

 なぜ店長は小林を止めないのか。


 ふたつ。

 なぜ小林は、彩花ちゃんを狙い撃ちにしているのか。


 ただのカスハラじゃない何かが、ここにはある。



◇◇◇



 彩花ちゃんの話を聞いた。

 曰く――


 小林が初めて店に来たのは2ヶ月前。


 最初は普通の客だったという。


 コーヒーの温度にやたら細かい人だな、くらいの印象。


 2回目から変わった。


 彩花ちゃんを名指しで呼ぶようになった。


「あなた、いつもいるわね。この店の顔なのかしら」


 嫌味の入り口。ここから始まった。


「その髪、ちゃんとケアしてる? 接客業でしょう」

「爪、短すぎない? 女捨てたの?」

「声が暗いのよ。お客様に失礼だと思わない?」


 容姿。

 声。

 態度。

 何もかもにケチを付けられた。


 彩花ちゃんが笑顔で応じれば——


「作り笑いはバレるわよ」


 真顔で応じれば——


「愛想がなさすぎる」


 どう返しても詰められる。


 典型的なダブルバインド。

 カスハラにパワハラの手口が混じってる。

 もしかすると小林はどこかのお偉いさんなのかも。


 まあ、あたしの予想はさておき――


 小林からの嫌がらせについて彩花ちゃんは店長に相談した。


 けれど、返ってきたのはあまりにも心無い言葉だった。


「あの方は常連のお客様だから。穏便に頼むよ」


 穏便に?


 殴られてる側に「穏便に」って言えるの、あんた。


 マイナス3億点。


 他のスタッフも気づいていた。


 でも誰も動けない。


 店長が「対処しない」と決めている以上、どうにもならない。


 警察にも行った。


「お客様とのトラブルはお店の方で」と返された。


 相手の本名も分からない。


 弁護士に相談する金の余裕もない。


 八方塞がり。


 そして——先週。


 火曜日の午後3時。


「あなた、まだいるのね」


 小林が来店。


 カフェラテを注文、彩花ちゃんを指定して淹れさせた。


 呑んで、立ち上がる。


 そのままカップを彩花ちゃんの頭の上で、ひっくり返した。


 温かいカフェラテが、髪を伝い、制服を濡らし、足元に水たまりを作った。


「なにを……するんですか」


 震える声で彩花ちゃんが問いかける。

 

 小林はにっこり笑って答えた。


「そんなことで動揺するなんて接客業失格よ。そもそも、自分が頭から被れもしないカフェラテを出すなんて論外じゃない」


 頭おかしいんじゃない?


 だったらカレー店の店主は自分が頭から被れるようなカレーを作ってると?

 

 彩花ちゃんは何も言えなくなった。


 常識が通じない怪物を前にすると、人間はフリーズする。


 怪物――小林はスマートフォンを取り出すと、動画を回し始めた。


「うんうん、素敵じゃない。いいものが撮れたわ。……なに、その目? 文句あるの? お客さまは神様なのよ。感謝しなさい。ほら、復唱。『お客様は神様です』」


 彩花ちゃんは助けを求めるように視線を彷徨わせる。


 店長と目が合った。


 逸らされた。


「さっさと言いなさい」


 バシャリ。


 今度は水を頭から掛けられた。


「……『お客様は、神様です』」


 彩花ちゃんは屈するしかなかった。

 

 頬から伝う水は、掛けられたものか、自分の涙か。

 

「また来るわ。次はマシになっておきなさい」


 小林はバッグを持ち、悠然と店を出た。


 そうしてすべてが終わってから店長がやってきた。


 口から出たのは慰め?


 味方になってやれなかったことへの謝罪?


 ううん。


 もっと最低なものだ。


「このまま穏便に頼むよ……」



◇◇◇




 普通に考えるなら、辞めてしまえばいい。


 こんなクソ客の来る店で働く必要もない。


「でも、私が辞めたら他の子が被害に遭うかもしれないですし……」


 優しすぎる。


 我慢のしすぎだ。


 あたしたちはキリストじゃないんだから、わざわざ苦難を引き受けなくっていい。


 けど、耐える子はとことん耐えちゃうんだ。


 ――だからあたしみたいなヤツが必要になる。


「オーケー、話は分かった。そいつの人生、終わらせよう」


「でも……」


「いい子ぶらなくていいよ。そもそも、やり返したくないならここに来ないでしょ。違う?」


 あたしは彩花ちゃんの瞳を覗き込む。

 死んだ眼の奥には、わずかだけど火が残っている。

 

 あたしの仕事はその火を取り出して、大火事を引き起こしてやることだ。


「ふんぞり返ってる神様を引きずり落してやるわ、任せて」


 事務所の奥で、権田さんがこちらをちらりと見た。


 手の中の赤ペンを一度だけ回す。


 オーケーサイン。


 いくよ。



◇◇◇



 まず、あたし一人で動いた。


 客としてデイリーカフェ新宿南口店に通う。

 火曜と木曜の午後。

 小林が現れるタイミングだ。


 観察。


「小林」は50代前半。

 背筋がいい。

 バッグはセリーヌ。

 靴はフェラガモ。


 立ち居振る舞いに品がある——彩花ちゃんの前以外は。


 支払いは毎回現金。

 ポイントカード不使用。

 レシート不要。


 痕跡を残さない客。


 帰り際に尾行した。


 1日目。

 路地を三つ曲がったところで見失った。


 2日目。

 地下鉄の改札をくぐったかと思えば、入らずに反対側の出口から地上に出た。


 尾行を警戒している。


 3日目。

 ようやく捕捉。

 タクシーではなく、黒いセダンが迎えに来た。

 運転手付き。

 追跡を試みたけど、すぐに引き離された。


 4日目。

 セダンの行き先を絞り込んで港区の高層マンションに当たりをつけた。


 オートロック。

 コンシェルジュ付き。

 住民名簿非公開。


 近隣の聞き込み、成果なし。

 SNSでもヒットなし。

 デジタルの足跡が一切ない。


 おかしい。


 カフェに嫌がらせをしに来る中年女性が、なぜ偽名を使い、尾行をまき、証拠を残さない生活をしているのか。


 こいつはただの客じゃない。


 自分のやっていることの「重さ」を分かっていて、周到にガードしている。


 あたしの手持ちのカードでは、ここが天井だ。


 正面突破が無理なら、搦め手でいこう。


 電話をかけた。

 3コール。


「はいはい、七瀬ですよ。天音ちゃん、今日は何の御用?」


 七瀬遊真。

 27歳(自己申告)。


 歌舞伎町の高級ホストクラブ「グラスシャード」のナンバーワン。


 身長180超え、切れ長の目。

 髪はダークブラウンで、光の角度で色が変わる。


 顔面偏差値は暴力。

 道を歩けば視線を集め、笑えばお金が飛んでくる。


 けど、こいつの本当の才能は顔じゃない。


 変装。

 話術。

 心理操作。


 別の人間になりきって、ターゲットの懐に入り込む。


 世が世ならスパイとして歴史に名を残していたかもね。

 

 あたしとの関係は、腐れ縁?


 電話を掛ければすぐに出る。


「七瀬、仕事。金曜の夜、空けて」


「天音ちゃんのためなら毎晩空けるよ」


「キモい。本題に入るよ。ターゲットは――」



◇◇◇



 尾行で掴んだ情報がひとつだけある。


 小林は毎週金曜の夜、赤坂のワインバー「ル・クロ」に一人で来る。


 そのことを電話で七瀬に伝えて、作戦を指示。


「ここで接触。偶然を装って近づいて、素性を割れ」


「ソーシャルエンジニアリングか。非合法スレスレだね」


「スレスレならセーフだよ。あたしの辞書では」


「天音ちゃんの辞書、だいぶページ抜けてない?」


「うるさい。やるの? やらないの?」


「やるよ。僕が天音ちゃんに『ノー』って言ったこと、ある?」


 ……ほんと、こいつの言い方はいちいちウザい。



◇◇◇



 金曜日。午後9時。赤坂「ル・クロ」。


 七瀬は別人だった。


 前髪を上げて、黒縁の眼鏡。ジャケットはダークネイビー。腕にはブルガリ。


 歌舞伎町のカリスマホストはどこにもいない。

 いるのは「ITスタートアップの若手経営者」。


 こいつの変装は化粧や小道具じゃない。

 空気ごと書き換える。


 声のトーン。

 歩幅。

 座り方。

 目線の配り方。


「別の人生を生きてきた誰か」にまるごとなれる。


 七瀬はカウンターの端に座り、高めのワインを頼んだ。


 あたしもちょっと変装して同じ場所にいる。

 七瀬ほどじゃないけど、化けるのは得意だから。


 午後9時半。

 小林が来た。


 カウンターの中ほどに着席。

 赤ワインを注文。


 七瀬は動かない。

 急がない。

 バーテンダーとワインの話を始めて、待ち構える。

 蜘蛛が巣を張るように。

 

「あなた、ワインにお詳しいのね」


 かかった。

 小林が話に入ってくる。


 七瀬はにこりと笑った。


「仕事で接待が多くて、自然に覚えました。——お姉さんもお好きですか?」


 お姉さん。

 計算された一語。


 小林の口元にかすかな笑みが浮いた。


 ここからは七瀬の独壇場だ。


 相手のペースに合わせ、相手が話したいことを話させる。


 聞き役に徹して30分。


 小林が自分の話を始めた。


「最近の若い子ってね、礼儀がなってないの。

 接客業なのに、ちゃんとした挨拶もできない子がいてね」


 七瀬は同調する。


「分かります。僕も社員の教育には苦労してまして」


「でしょう?

 だから私、行きつけのカフェで指導してあげてるの。

 厳しく言ってあげないと伸びないから」


 指導。

 店員の頭にコーヒーをぶちまけることを「指導」と呼ぶ顔が、そこにあった。


 七瀬は表情を変えない。


「素晴らしいですね。——旦那さまもそういう教育的な方ですか?」


 自然な流れで家庭の話に滑り込む。


 小林は少しだけ表情を曇らせ——でも話した。


「主人は不動産の仕事をしていて。忙しい人だから、なかなか」


 不動産。


 七瀬の脳にメモが刻まれた。


 午後10時半。

 小林がお手洗いに立った。


 スマートフォンをカウンターの上に置いたまま。



◇◇◇



 会話、そしてカウンターに置きっぱなしのスマートフォンから素性が割れた。


 小林。


 本名は、河野美智子。


 ここからプロフィールを丸裸にするのはあたしの得意分野だ。


 夫は河野隆一。

 河野不動産の代表取締役。

 あちこちに顔の効く、いわゆる「上級国民」。

 いや、この言い方は古いかな?

 要するに権力に守られたお偉いさんだ。

 港区を中心にビルやマンションを複数所有しており――


「デイリーカフェ」新宿南口店が入居するビルのオーナーでもある。


 つながった。


 一つ目の謎は解けた。


 なぜ店長は小林こと河野美智子を止めないのか。


 テナントの賃貸契約を握っているのが、この女の夫だから。


 逆らえば追い出される。


 店長は店を守るために、スタッフを犠牲にしていた。


 最悪。

 マイナス5億点。


 じゃあ、二つ目の謎。

 なぜ小林は、彩花ちゃんを狙い撃ちにしているのか。


 さらに調査をする。


 うわ、ヤバ。


 どうやら河野隆一は過去に、自社ビルのテナントで働く若い女性たち複数名と関係を持っていたらしい。

 

 要するに不倫だ。


 それを知った美智子は激怒して別れさせたが、心は鎮まらず、テナントで働く若い女性をターゲットに八つ当たりのようにカスハラをしていた。


 そもそも離婚しろよ、とも思うが財産周りでいろいろと複雑らしい。

 

 それはさておき――

 

 河野不動産のビルに入っているカフェやレストランについて調べると、「常連客からのハラスメント」で泣き寝入りして辞職した若い女性スタッフが5人もいた。


 トラウマが癒えず、精神科通いの子もいる。


 働くことそのものができなくなった子もいる。

 

 最悪すぎ。


 河野美智子は心の連続殺人鬼だ。


 存在意義、ゼロ。



◇◇◇



 手札は揃った。


 河野美智子の素性。

 6人の被害。

 店長の黙認。

 河野不動産という背景。


 あとはどう使うか。

 

 普通なら泣き寝入りだろうね。

 弁護士を立てようが、向こうの権力に潰される。

 

 けれど、今はもう昭和じゃない。

 令和ならではの方法で燃やし尽くそう。


 先に言っておくと、直接的にはあたしはなにもしていない。

 直接的には。


 

 翌週の月曜日。

 複数の匿名アカウントや暴露系インフルエンサーを通して、SNSに火の手が上がった。


「凄惨な常連客カスハラの実態——不動産オーナーの妻が若い女性店員を標的に」


 河野美智子の素性。

 複数店舗にまたがる被害の記録。

 店長の黙認。

 河野不動産との利害関係。


 あたしの調べた内容と()()()奇跡的に一致していた。

 そういえば昨日、あたしのパソコンがおかしな挙動をしていた。

 もしかすると腕利きの天才ハッカーがデータを盗んで流出させたのかもしれない。

 

 これだけなら、まあ、言っちゃ悪いが1日2日の祭りで終わるところだ。


 けれどもここで風向きが変わる。


 登録者数180万人の大人気男性Vtuber『Ren』。


 若年層を中心に熱狂的な支持を持つ配信者で、心理学の専門家を名乗っている。


 主なコンテンツは話題のニュースの解説、特に、関係者の心理分析だ。


 そいつが河野美智子のことを取り上げた。


「彼女、なかなかヤバいですねー。

 どうして旦那さんの不倫を辞めさせたあとも、不倫相手と年齢の近い若い女性をターゲットに嫌がらせを始めたかと言いますと、心理学的には――」


 生配信の同接はあっというまに数万人規模となり、アーカイブも再生数がミリオンを突破。


 Xでは「頭から被れないものを出すな」「お客さまは神様」「穏便に頼むよ」がトレンド入り。

 

 河野不動産には抗議が殺到。


 取引先が距離を置き始めた。


 河野隆一は妻を庇うどころじゃなくなった。


 店長は本社から呼び出され、管理責任を問われた。


 河野美智子を守っていた「権力のバリア」は崩壊した。


 あとは法律の仕事だね。


 あたしは()()()の腕利き弁護士の大河原さんを彩花ちゃんに紹介した。


 カスハラによる暴行。

 脅迫。

 名誉毀損。

 

 河野美智子には法の裁きが待っている。


 ああ、そうそう。

 

 これまで河野美智子にターゲットにされた5人にもコンタクトを取って、弁護士のことも教えてる。


 頑張って、神様(河野美智子)


 法律は貴女をお客様扱いしてくれないわよ。




◇◇◇






 僕こと七瀬遊真と浅間天音の関係は……なんだろうね。


 天音ちゃんを魔女とするなら、僕はさしずめ魔女の黒猫ってところ。

 使い魔みたいな?


 呼ばれて飛び出てにゃにゃにゃにゃーん。

 魔女様の仰せの通りに。

 変幻自在、男でも女でも化けて欲しいものを取ってまいりましょう。


 代金はいつもどおりに、ああ、今度一緒に遊びに行ってくれるならタダでいいよ。

 僕、これでも『グラスシャード』のトップだし?

 デート権とか売りに出したら1000万でも2000万でも払う人がいるし、かなりお得だよ?

 

 まあ、いつも断られてるけどね。


 アイスブレイクはここまで。

 本題に入ろうか。


 さっき天音ちゃんのことを「魔女」って言ったけど、わりと本気なんだよね。


 たとえば今回の仕事、赤坂のワインバーで河野美智子に接触する前のことだ。


 天音ちゃんはこう言った。


「あの女、若いイケメンに弱いよ。

 バーテンダーとワインの話でもしてれば食いついてくる。

 適当に自慢話に付き合いながら旦那の情報を引き出して。

 あと、途中でトイレに立つだろうけど、そのときスマホを置いていくよ。

 ああいうタイプはバーのカウンターを自分のテリトリーだと思ってるから、荷物を置くことに抵抗がない」


 全部当たった。


 まるで未来を見てきたかのようだった。


 こんなの魔女としか言えないでしょ?


 どういうタネなのか気になるけど、知りたくはないかな。


 相手のことを考えてワクワクしてる時間って、いちばん楽しいからね。


 



ここまでお読みくださりありがとうございます!


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