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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。

風鈴が呼び寄せる

掲載日:2025/12/04

薄暗い雰囲気の物語に挑戦してみました。あんまりホラーではない気がします。



なお、この作品は「なろうラジオ大賞7」に応募しています。

 ふうらりいん。



 夏の音がする。


 昼下がり、縁側に座る私は、風に揺れる風鈴を無表情に眺める。

 蝉の鳴き声がうるさいから、よく耳を澄まさないと聞こえないな、と思って、視覚的にも風鈴をしっかり捉えようとする。


 ふうらりいん。


 また鳴った。短冊の真っ白な和紙が北の方角へと流れる。

 もうすぐ雨が降るようだ。



 ふっ。と、蝋燭が消されるような音がして、にわかに肌寒くなって、辺りが薄暗くなる。思ったより早く積乱雲が来てしまったのかもしれない。



 それにしては、そういえば、蝉の音が聞こえない。



 ふうらりいん。


 ねえ、またなったね。わたしたちのだいすきなおとが。


 ねえ、またなったねえ。


 またひとり、いなくなるかもしれないねえ。


 またひとり、くわれてしまうかもしれないねえ。


 ねえ。


 ねえ。


 ねえ。


 私はじっと息を潜めた。知らない声だ。純粋な声色だけれど、どことなく禍々しい声色。


 ねえ、あのにんげん、いいなあ。


 いいなあ。


 声はまだ聞こえていた。私は聞こえていないふりをする。


 ねえ、あのにんげん、にくいなあ。


 ねえ、いつもおとをきいていて、にくいなあ。


 ねえ、いつもわたしたちのだいすきなおとをきいていて、にくいなあ。


 ねえ、おいしそうだねえ。


 ねえ、くってしまおうか。


 ねえ、そうかもしれないねえ。


 ねえ、はなしかけてみようか。


 ねえ。


 ねえ。


 ねえ。


 ねえ。


 先ほどよりも近くで声がするような気がして、私は思わず身を縮めた。耳を塞ぐ、のだけれど。ねえ。ねえ。ねえ。


 ねえ、   。



 私は何も聞いていないから、




 ふうらりいん。


 蝉の声がうるさい。うだるような、溶けてしまいそうな暑さ。


 私は戻ってきたのだ。



 ふうらりいん。


 また、肌寒くなって、私は思わず身震いする。見上げると空いっぱいに灰色の雲。今度こそ、雨が降ってきた。

 夕立だ。

 じゃばじゃばと、全てを洗い流すような雨音だけが聞こえる。


 縁側から立ち上がると、夕立にしては随分と乱暴で大粒な水滴が、私の頬を穿った。私は笑ってそれを全身に浴びる。まるで夏みたいなことだから。暑いから、きっと風邪もひかない。




 風鈴の音は、いつの間にか聞こえなくなっていた。




お読みいただきありがとうございました!


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